23話 Cランクになりました
ある日、いつものように冒険者ギルドに行って適当にクエストを見繕っていると。
「お、アイシャ」
「あら、支部長」
支部長が話しかけてきた。なんだか珍しいなと思いつつ応える。
「アンタ、今暇かい?暇ならちょいと手伝ってほしいことがあるんだが」
また書類整理かな?
「ええ、いいですわ。もう今日はめぼしいクエストは残っていなさそうでしたから」
「そうかい。ならついてきとくれ」
はいはいと心の中で応じつつ支部長について行く。案内されたのは案の定支部長の執務室だった。
「さて。単刀直入に聞くんだが。アンタ、昇級試験を受けないかい?」
「………はい?」
昇級試験?誰の?私?まっさかー(笑)
「なんだ、思ったより呆けるじゃないか。アタシはもっと『受けますわ!』って食いついてくると思ったんだが」
「…それ、本当にわたくしが言ったらどうしてましたの?」
「ん?大爆笑だな」
「でしょうね」
「それで、どうする?合格すればアンタは晴れてCランク冒険者だ。ウチの支部でもまだ片手に収まる人数しか輩出してないぞ?」
「そうですわね…」
正直受けないという手はない。昇級すればその分クエストの報酬も増えるからクエストに割かなければならない時間も減らせる。しかしその分クエストは危険なものになってくるし周囲の期待や評価も厳しくなってくる。
それに──
「ルナ先輩より先に上に行くのは…」
「なに言ってんだい、ルナはランク詐欺なんだから気にするんじゃあないよ」
「それはそうですが…」
「ったく…どうしてルナもアンタも変な所で強情なんだろうねぇ…。大事なのは自分に素直になることよ。アイシャ、アンタ自分はどう思ってるんだい?昇級したいのか、したくないのか」
私は昇級したいとは思ってるよ?けどいきなり言われても…ね?
「何言ってんだい、上に行きたい気持ちがあれば十分さ」
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「それではこれより、Dランク冒険者アイシャの昇級試験を開始する」
結局支部長に説得されてしまった私は昇級試験を受けることにした。実際Cランクになるデメリットは危険度が増す程度なのだ。ルナ先輩に申し訳ないという傲慢な考えは捨てることにした。
とはいえ、本気を出せということでバニースーツを着用させられているんだけど、観客いなくて良かった〜!
これで何人も観客がいたら恥ずかしくて全力なんて出せるかっての!
「試験官は同じくDランク冒険者、『飛脚』のルナが担当する」
「ちょっと待ってくださいます?」
なんでルナ先輩が試験官してんの!?
「他でもないアイシャのためと二つ返事で承諾してくれたぞ?」
「アイシャちゃん、本気できてね?♡」
「と、いうことで…始め!」
「ちょ、まっ」
「またな〜い♪」
ガギィン!!
あっぶな…。
一瞬ルナ先輩の姿が消えたので思わず鞘でガードしたら、直後に強烈な蹴りが飛んできていた。
「さすがアイシャちゃん、防ぐかぁ」
「普段から先輩の動きは見てますから…」
「そっか〜。じゃ〜、これはどうかな〜?」
距離をとったルナ先輩が斬撃を3発放ってきた。
1発目は右に跳んで回避!
2発目は横薙ぎ、咄嗟に伏せて回避!
3発目は斜め…体を捻る!
この間僅か2秒!ルナ先輩本気ですわ。こっちも本気出さないと多分死ぬやつだこれ!
「ふっ!」
ガキィン!
反撃しようと刀を抜いた途端、蹴りが飛んできていた。運良く刀の面で迎撃…いや違う、ルナ先輩が狙って蹴ってきてたんだ。
「う〜ん…。よし!合格!」
「はい…はい?」
「正直わたしのラッシュを防ぎきった時点で合格だね〜」
「え?」
「よし、それじゃアイシャ、これ持って受付で手続きしてきな」
「あの…え?」
「ほら、行った行った!」
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「おめでとうございますアイシャさん、Cランクに昇級です。早いですねぇ」
「ありがとうございますわ…」
「Cランクになると首都行きの馬車が無料でご利用頂けますよ」
「そうなんですのね…」
「ふふ、随分とお疲れですね。今日はこのまま手続きだけにして、説明は後日に致しますか?」
「そうして頂けるとありがたいですわ…」
結局この日はトパーズさんのお言葉に甘えて、そのまま帰って寝た私だった。ついでにアカリさんには休みをもらった。
次の日。支部長に呼ばれてギルドに行くと。
「おう、アイシャ。アンタ、首都に行ってみないかい?」
「首都ですの?」
「そう、首都。Cランク以上の冒険者は馬車が無料になるって話は聞いたね?このカルストからも首都直行便の馬車が出てるんだ」
それを利用して首都に行ってみてはどうかという提案だった。
「ですがお店を空ける訳にもいきませんわ」
「それはもう話をつけてある」
え、はや。これが異世界式根回し…!
「アカリさん曰く、『元々騙したみたいな形で働かせちゃった負い目もあるし、たまには自分勝手にぱーっと遊びにいってほしいな。大丈夫、お客さんは減るかもだけど、帰ってきたときに大々的に宣伝するから!』だそうだ。愛されてるじゃあないか」
「アカリさん…」
アカリさんいい女すぎる。普段から頼りになりすぎる店長の姿を思い浮かべながら私はしみじみそう思った。
「そこまで言われては断る方が失礼ですわね。かしこまりましたわ、首都に行ってみたいと思います」
「そうか、そりゃ良かった!ならついでにこの書類を首都の冒険者ギルド本部に持ってってくれないかい?」
支部長…もしかして最初からその目的で…?
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