18話 バニーガールは今日もギルドの人気者+騒ぎの予感?
あれから2週間ほど、私は冒険しつつ『月灯りの庭』でのお仕事もしつつ過ごしていた。今はギルドのカフェテリアで休憩ちう。
「あ!アイシャさ〜ん!」
「あら、ジェシカさん」
私を見つけてとてててっと駆け寄ってきたのは、この間危ないところを助けたジェシカさん。
「お久しぶりです!」
「ええ、お久しぶりですわ。今日はお1人ですの?」
「はい!あのカスとは別れました!」
「か、カス呼ばわりですのね…良かったのですの?」
「ええ、あいつは同じ日に冒険者登録して講習を受けただけですので。特に思い入れはありませんでしたから」
あ、そうだったんだ。てっきり幼なじみとかそんなんかと。
「あんな奴と幼なじみなんて死んでもお断りですね…」
お、おう…。
「今の調子はどうですの?」
「聞いて下さい!それが、後衛を募集してるパーティがあって、そこに入らせてもらえることになったんです!」
お、それはよかった。けど気をつけてね?下手なパーティに入ると、ハーレム目的のクソ野郎とか、ブラック企業並みの働きを強要されたりするからね?
「大丈夫です!そのパーティ、女性だけで構成されてて、そのうち1人はCランクなんですけど、上を目指すというよりは後進の育成に専念しているとのことなので!」
ふ〜ん?そうなんだ、けどお姉さん心配だな〜?
「なにかあったら支部長なり受付嬢の方に報告するので大丈夫です」
そかそか、じゃあもう私がとやかく言う権利はないかなぁ。
ジェシカさんは私と話して満足したのか、軽い足取りで去っていった。
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別の日。
「今日もギルドは賑やかですわねぇ」
「あ、アイシャさんじゃないっすか」
「あら?…ああ、この間悩みを聞いた」
しれっと向かいの席に座った青年。彼は名前は聞いていなかったが、この前カフェテリアで落ち込んでるのを見て声をかけ、お悩み相談を受けた。ついでにその日の夜、店に来た。
「はい、アルフレッドと申します。先日は悩みを聞いて頂いた挙句、その、お酌まで付き合って頂いて…」
アルフレッドさん。彼はかなり礼儀正しく、荒くれ者の多い冒険者ギルドの中でもかなり真面目な人。
私の経験からの推測でしかないけど、彼は貴族に籍を置いていそうな気がする。
「はは、そんなものではありませんよ。ただ、少しだけ家令の経験がありまして。その時に培っただけですよ」
へえ〜。そういうことにしておこう。人間も魔人も、言いたくないことのひとつやふたつはあるものだ。
「そうそう、あの後ついに決心がつきまして。パーティを脱退することにしたんです」
彼の悩みは、パーティの中で最も負担が大きい役割を担っていたにも関わらず、メンバーから感謝されることもなければ報酬の取り分も1番少なかったということだった。
そんなブラックパーティなんぞすぐ辞めちまえと思ったけど、実はそのパーティ、同郷の顔馴染みで組んでいたらしく勇気が出なかったそう。
だから私は使い潰されることの非人道性とそのまま使い潰されて過労死するという最悪のケースを懇々と説明し、店に誘って店長とルナ先輩とで諭したのだ。
「幼なじみの女の子には引き止められたんですが、彼女も僕の取り分や負担には何も言っていなかったので突き放すことにしました」
わぁお、テンプレ的展開。負けヒロイン現る?
「これからしばらくはソロでちまちまやっていこうかと思います。パーティ脱退したてで入れてくれるパーティなんて、ロクなところがないでしょうから」
それが分かってるなら、もう大丈夫かな。
アルフレッドさんに良い出会いがありますように。
私はこれ以上関与するつもりはない。私がするのは、きっかけを与えるまで。それより後のことは、本人が決めるべきだ。
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また別の日。
「お、アイシャじゃないか」
「あら、支部長」
「ちょうどいいところに。ちょいと付き合ってくれないか」
特に用事もなかったので付き合うことに。
「それで、わたくしは何をすればよろしいのでしょうか?」
「なに、そんなに構えなくてもいいさ。ちょいとアタシの書類仕事を手伝ってほしくてな。こいつはこの間の『蒼天の園』のイレギュラー…アンタが睨まれちまったやつだな、それの考察を纏めた書類なんだが」
「拝見してもよろしくて?」
「おう、構わないよ」
その書類には、
・イレギュラーの原因
・影響
・再発防止の可能性
について主に記されていた。
・イレギュラーの原因はボスとなる魔物が長らく討伐されなかったことによるものと考えられる。但し、第5層の入り組んだ箇所に魔法陣の痕跡があり、知的生命体の関与の可能性もある。
・イレギュラーの影響について、発見者であるDランク冒険者『飛脚』のルナ及び現Dランク冒険者アイシャ(当時Eランク)によってダンジョン内での討伐がなされた為地上への影響は確認されていない。尚討伐の際、アイシャがゲイザーの視線を受け呪いを受けたが、呪いの内容・程度については本人のプライバシー保護のため別紙に記載とする。
・本件について、発生原因の断定が難しいため断言は不可能だが、ボスとなる魔物の定期的な討伐、つまりダンジョンの制覇を定期的に行うことで再発を回避できる可能性がある。
「これ、わたくしが見てよろしかったのでしょうか?」
「構わんさ。アンタは当人だからね。それに近々昇級試験もさせようと思ってるからね」
「はい…はい!?」
なんか今看過できない情報が飛んできたような?
「それで、だ。アンタから見て、この考察はどう思う?」
「そうですわね…わたくしがイレギュラーを確信したのは、第4層でしたわ。第4層の魔物の量が明らかに多く、また自分でいうことでもありませんがわたくしの体を見ても欲情せず一目散に移動しておりましたわ」
「そうか、アンタみたいなエロい体を見てもゴブリンが反応しなかった…確かに異常だな。それに第4層というのが気になる」
「それはおかしいんですの?」
「ああ。アンタ、ゲイザーを討伐したのは第何層だい?」
「第4層でしたわ。魔物を討伐しながら奥に進んでいると、その奥から現れたんですの」
「そうか…。いや、実はなんだが、ボスの魔物が長いこと討伐されなくて起きるイレギュラーは、ボス部屋から動かないんだ」
「な…そ、それは」
「ああ。アタシはてっきり2人がボス部屋でゲイザーを討伐したんだと思い込んでたんだが…こうなるとちょいと厄介なことになるな。…ここからはアタシの仕事の話になっちまうね。付き合わせて悪かったね、また店の方に邪魔するかもしれない」
「いえ、気にしませんわ。またお越し下さいませ、お話聞きますわよ。ルナ先輩も」
「ああ、ありがたいよ。それじゃあね」
こうして支部長との用事は、看過できない情報ときな臭い事実を残して終わったのだった──。
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