9話 冒険しつつ、お仕事しつつ
冒険者アイシャの朝は、意外と遅い。
前日の深夜まで『月灯りの庭』でバイトをし、それから帰宅、就寝するからだ。
今日も私は夜中に帰ってきて、お風呂に入って寝た。
目が覚めたのは感覚昼前くらい。
それから私は冒険者ギルドに行き、クエストを吟味。
…まあ吟味できるほど受けられるクエストはないけど!
「ふむ…これにしましょうか」
今日は討伐クエスト、魔狼10体の討伐。
クエストは紙に書かれ掲示板に張り出されるので、それを剥がして受付カウンターへ持っていくと受注となる。
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「グルルルル…」
「ガウッ!」
「甘いですわ!」
「ギャンッ!」
「これで10体目ですわぁ!」
カルスト近郊の草原にて、私は魔狼2匹を屠った。
これで合わせて10体となり、クエストは完了。
討伐の証拠として提出するのは、魔物の1部、または魔石。
魔石とは、魔物が体内に持つ結晶体のことで、魔導具や生活用品の媒体として用いられる、魔国でのエネルギー媒体のようなもの。
但しそのエネルギー効率や保有エネルギー量はピンキリで、魔狼のような雑魚はエネルギーロスが激しいとされる。それでも100個集めれば私の家の証明を2時間照らせる。
100個で2時間照らせるのだ。
また、魔狼はその毛が様々な用途に用いられるため、素材として持ち込めばちょっとしたお小遣い程度には売れる。ただ売り値に対する労力が激しいためあまり持ち込まれない。私も持ってけないし。
以上のように、冒険者の主な収入は魔石などを売るか、クエストの報酬かが主流となる。
また、迷宮と呼ばれるダンジョンを攻略し、中で取れた魔石を売却することも収入としてあるが、それは後で説明しよう。
「クエスト達成です。おめでとうございます」
「ありがとうございますわ」
「こちらがクエストの報酬500レソです。魔石の買取はあちらの換金カウンターへお願いします」
「かしこまりましたわ」
換金カウンターへ移動。カウンターで魔狼の魔石10個を提出。
「魔狼の魔石10個ですね、1,000レソになります」
本日の収益、合わせて1,500レソ。
これならまだバイトする方が収入としては多い。駆け出し冒険者はそれだけ収入が少ないが、地道にこなして昇級すればできるクエストも増えて、収入もアップする。
まだまだ頑張るぞ。
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「おかえりなさいませ、ご主人様」
夜。それは飢えた獣が餌を求め徘徊し、ある者は次の日に備え寝床につき、そしてまたある者はあまりの疲れを癒すため、またある者は興味本位で夜の店を訪れる時間である。
今日の『月灯りの庭』は、普段よりやや客入りが多かった。
「15番テーブルご注文ですわ」
「はいよ〜」
「店員さーん、こっちー」
「今伺います〜」
3人でなんとか回せるレベルの繁盛は久々だ。
おかげで目が回りそうになりながら接客をしている。
「店員さんおっぱい大きいね。触っていい?」
「くたばりやがれですわ」
「今日も罵声が気持ちいいね!」
「ドリンクが空ですわね、ドギツイのお持ちしますわ」
ちゃんとした客にはちゃんとした接客を、そうでない客には相応の態度を。
入店時から守り続けているモットーだけど、これを目当てに来る客が最近増えてきて困っている。うちはそういうコンセプトカフェじゃないんだぞ。
え?じゃあ媚びればいいだろって?
やだよ、クソ客に媚びるなんて私のモットーに反しますから!
---(少女接客中…)---
「おかえりくださいませご主人様」
「ありがとうございました〜」
今日も無事に、無事に!営業時間が終わった。
「つかれたね〜」
「流石に今日は疲れましたわ…」
「2人ともお疲れ様。はい、まかない」
店長がキッチンからまかないを持って出てきた。
今日のまかないは豚肉と玉ねぎのパスタ。
異世界に生まれて早18年弱、未だに地球と同じ食材が充実していることに戸惑いを感じるが最近は「まあそんなこともあるか」くらいには馴染めるようになってきた。
「アイシャちゃん、そろそろ昇級できそうなんだって?」
「そうなんだよ〜、アイシャちゃん頑張ってるんだ〜」
「昇級できそう…なのでしょうか?わたくしは特に何も言われておりませんが…」
「この間、支部長が言ってたんだ〜」
支部長が言ってたのを聞いたって、私一切聞かされてませんが!?それ、支部長の「そろそろこいつ給料上げるか…めんどくさいな」的なぼやきだったんじゃないの?
断定できない情報、いくない。
「まあいいじゃない。アイシャちゃんが昇級できたら私としても鼻が高いよ」
「わたしも〜。早く昇級してダンジョンに行こうよ〜」
Eランク以上の冒険者は、ダンジョンに潜る権利が与えられる。ただしEランクの間はDランク以上の同伴が求められるため、実質的にはDランクから潜れるようなものだが。
「ダンジョンは地上よりも危ないけど〜、その分お金もいっぱい貰えるよぉ〜」
「バイトなんてしなくても食べていけるようになるね。私としては辞めて欲しくないけど」
「?わたくし、ここの仕事をやめるつもりは更々ないのですが…?」
「えっまじ!?」
マジよりのマジ。半月くらい前から思ってた、別にここの仕事しながらでもいいんじゃね?と。
バイトから正式雇用になったとて、今とそんな変わらないだろうし、バイトのままなら尚更。だったら別に今のままでいいじゃんという結論に至ったのだ。
ダンジョンに潜ったり長距離移動したりしてシフトに入れないことがありそうなのが申し訳ないけど、それは
「そんなこと心配しなくていいよ!入る日が少なかったら少なかったで、『本日アイシャ入店中』って書いたボード出すから」
と一蹴されてしまった。あとなんだその恥ずかしいボードは。
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