8「買い出し」
「クレアさん。さっきの果物、何だったんですか」
どうにか追いついた俺は、彼女に尋ねる。だが、頑として彼女は話そうとしない。
「子供が知るようなことじゃないの。さあ、いいから行くわよ」
またもや、子供扱いされたことに不満を抱く。というか、まじで何だったんだろう、あの果物。
薬草を売却する、という目的は終えた。なので、今度は買い出しの番である。当然ながら、普通の市場ではまともに買い物もできないので、買う時も闇市である。
「えーっと、買わなきゃいけないのは何だったっけ。タイヘイ君、買い出しのメモを持ってきてる?」
「あ、はい。持ってますよ」
メモを手渡す。練習の意味も込めて、メモは俺が書いた。習ったばかりなので、拙い文字だが一応は読めるはずだ。
「お芋と、人参と、ペンのインクと……」
闇市は、治安は確かに悪い。言ってしまえば、犯罪者の市場だから当然だ。しかし、普通の市場よりも品ぞろえは良く、かつ値段も安く品質もいい。
一度だけ、こっそりと普通の市場に行ったことがある。だが、値段が高くて買えたもんじゃない。ぼったくりもいいとこだ。
メモを見ながら、闇市で買い出しをした。普通の市場で買うよりも、半額以下の値段で買えたので、クレアさんもご満悦である。
「クレアさん、なんで闇市ってこんなに値段が安いんですか?」
ふと、気になった疑問をぶつけてみた。
「闇市はね、今でこそ犯罪者御用達の市場みたいな感じになってるけど、本当は庶民向けの市場だったのね。闇市の方が安いし、表の市場よりこっちの方が賑わってたみたい」
でも、とクレアさんは話を続ける。
「表の市場の衰退ぶりを見た王国側が、闇市にたくさんの規制をかけたの。それで、庶民も表の市場の方に流れちゃって……」
「へぇ、そうだったんですね」
王国側としては、イメージ的な問題で多分、闇市を繁栄させたくなかったんだろう。だからといって、無理やり規制をかけて衰退させるのは、どうかと思うが。
魔術死刑の一件もあり、俺は王国のやり方に懐疑的だ。魔法がインフラ的な存在であるこの世界で、魔法を使えなくするのは致命的。しかも、腕を切断するとかいう野蛮な方法で。やりすぎである。
そもそも、俺はクレアさんが本当に犯罪者なのかすら——と思いかけた時、目の前にある人物が現れた。その人物は、クレアさんに気が付くと足を止めた。
「貴様、何故こんな場所にいる」
鎧を身にまとい、腰には剣を携えた長身の女だ。金髪ポニーテールで、いかにも女騎士といった風貌である。




