7「闇市のオッサン」
いつ来ても、ここは陰鬱な場所だ。昼間にも関わらずなぜか薄暗く、行き交う人々もどこか表情が暗い。
初めてここに来た時は、まるでお化け屋敷のような現状に驚いたものだが、何度も来たのでもう慣れた。
闇市の入り口からさらに数分ほど歩いた後、露店が立ち並ぶ場所へとたどり着いた。ここが、闇市の中で最も栄えているところである。
怪しげな薬品や、禍々しい武器を扱っている店が多くあり、さすが闇市だと悪い意味で感心させられる。
「よお、青髪の姉ちゃんじゃねえか。また来たのか」
スキンヘッドで、いかにも悪人といった面のオッサンが声をかけてきた。この悪人面が、俺達の取引相手である。
「ええ、最近薬草の採取が順調でね。すぐに袋一杯になっちゃう」
「ガハハ、その坊主のおかげってわけか」
「そういうことよ。私の、自慢の子なの」
そう言いながら、クレアさんは俺の頭を撫でてくれた。褒められるのは嬉しいが、子供扱いされてるようで、あまり良い気分ではない。
「じゃあ、これを買い取ってちょうだい。中々の上物のはずよ」
「そんな心配はしてねえよ。姉ちゃんの品は、いつでも一級品だからな」
オッサンは、袋の中身を少しだけ確認して、秤のようなものへそれを乗せる。そして、紙に何やら計算を書き始める。
「この量だと……買取価格はこんなもんだな」
紙に書いた計算を、オッサンは見せてきた。クレアさんは、満足げに頷く。
「うん、思ってたよりも儲かったわ。いつもありがとうね」
「いいってことよ。こちとら、姉ちゃんの品にはいつも助けられてんだ」
そして、オッサンは数枚の銀貨を手渡してきた。
「ほら、坊主も。これやるよ」
すると今度は、俺に対しオッサンは何かを手渡してきた。ブルーベリーのような色をした、丸型の果物だ。この世界に来てしばらく経つが、見覚えのない果物である。
「ちょ……何渡してるの⁉」
すると、クレアさんはそれをすぐに取り上げ、オッサンに投げ返す。見ると、クレアさんの表情が真っ赤になっていた。
「ガハハ、頑張れよ坊主。その姉ちゃん、押しに弱ぇからな」
「余計なこと言わないでちょうだい‼ まったくもう……」
真っ赤な表情のまま、クレアさんは急ぎ足でその場を立ち去る。
「ま、待って下さいよクレアさん……っ‼」
どんどん先へ行ってしまうクレアさんの背中を、俺は必死に追いかけるのだった。




