4「魔術死刑」
「分かった? 魔術死刑っていうのは、こうやって魔法を使えなくするの。腕を切断してね」
淡々と話した後、彼女は再びローブを羽織った。魔術死刑とはよく言ったものだ。
魔術士としての死刑——略して「魔術死刑」ってわけか。
「私は、元魔術死刑囚なの。大勢の人を殺したわ」
「……」
「怖い? 当然よね、人殺しなんかが側に居たら」
動揺する俺の様子を見て、彼女は何かを察したようだ。しかし、俺は彼女が怖いから動揺しているのではない。
見ず知らずの俺を助けた彼女と、大勢の人を殺したという彼女。そこに矛盾を感じ、動揺しているのだ。
殺人鬼というのは、残酷かつ冷血なイメージだ。しかし、目の前の彼女からはそんなイメージを一切感じない。むしろ、温厚で心優しいという印象を抱く。
「殺人鬼なんかと関わったら、碌なことにならないわ。だから、これでさようなら」
言い残し、彼女はその場を去ろうとする。だが——。
「……⁉ ど、どうしたの?」
気が付いた時、俺の手は彼女のローブの裾を掴んでいた。引き止められると思っていなかったのか、今度は彼女の方が動揺している。
「待ってください。あの……何か、お手伝いをさせてください」
「え……」
「料理でも、洗濯でも、何でもやります。ですから、あなたの側にいさせてください」
この女性は、どう考えてもお人好しだ。見ず知らずの俺を助けたり、迷惑がかかるから近づかない方がいいとわざわざ助言したり……。
だから、俺は彼女のその人の好さに甘えることにする。この世界どころか、この町の地理すら分からず、文字も読めず、おまけに無一文。このままだと、行き倒れ確定だ。
彼女ならば、俺を見捨てたりはしないだろう。そんな打算から、このような発言に至った。
しかし、一番の理由としては——この人が寂しそうだったからだ。
元死刑囚となれば、迫害されるのは目に見えている。彼女とまともに接する人なんて、きっといないのだろう。先ほどの、女生徒らの怯えた様子を見れば明らかだ。
孤独というのは辛いものだ。俺も、そうだったから——よく分かる。せめて、俺だけでもこの人の側にいよう。それが、俺流の恩返しだ。
「……私、元死刑囚なのよ。本当にいいの?」
「『元』死刑囚ですよね? もう罪は償ったんです。あなたを恐れる理由なんて、ありませんよ」
「————」
俺の言葉を聞き、唖然とした様子を見せる彼女。だが、その表情はどこか嬉しそうであった。
「じゃあ、うちにおいで。これからよろしくね、えーっと……あなたの名前は」
「あ、並木といいます。並木泰平です」
これが、俺と彼女——元魔術死刑囚「クレア・ランドルフ」との出会いだった。




