11「不当な逮捕」
俺とクレアさんは、こんな風に毎日を過ごしている。何かしらの採取をし、それを闇市で売り、必要ならば買い出しをする。その後、俺はクレアさんに勉強を教えて貰うのだ。
だが、その日だけはいつもと違った。例の女騎士と出会ってから、数日が経過したある日のことである。
——ドスン。大きな物音が、家の中に鳴り響く。
朝食を食べている最中に、突如として家の扉がけ破られたのだ。驚きのあまり、手に持っていたスープの皿を、その場に落としてしまう。
「クレア・ランドルフ‼ 貴様を逮捕する‼」
扉をけ破ったのは、例のアロエラとかいう女騎士だった。だが、今回は彼女一人ではない。他にも、大勢の騎士たちを引き連れていたのだ。
あっという間に、俺達は騎士たちに取り囲まれる。
「ちょ、ちょっと……これはどういうことなの⁉」
突然の出来事に、クレアさんが尋ねる。アロエラは、得意げに微笑むと何かを差し出してきた。
「これは、王国から正式に発行された、貴様への逮捕状だ。見てみろ」
この世界の文字にまだ疎い俺だが、おおまかな内容は読み取れた。要約すると、こうだ。
クレアさんは、先日起きたある事件の容疑者となっているらしい。その事件というのは、女生徒の連続殺人事件だという。
「貴様は、かつて大勢の人間を殺めた存在だ。この王都で殺人事件が起こったとなると、犯人は貴様しかいない」
噂では、耳にしていた。ここ最近、王立女学校のお嬢様たちが酷い目に遭っているのだと。しかし、クレアさんが犯人だと決めつけるのは、いくらなんでも早計だ。
「ちょっと待ってください」
「ん? 貴様は……前に、クレア・ランドルフと一緒にいた男か」
どうやら、俺の事を覚えていたらしい。まあ、一方的に傷つけた相手だから当然か。
「クレアさんがやった証拠はあるんですか? 俺はずっとクレアさんと一緒でしたけど、殺人なんてしてませんよ」
クレアさんがやっていないことは、まず間違いない。基本的に、俺はクレアさんと行動を共にしていたのだから。
「証拠など、必要ない。重要なのは、その女がかつて大勢の人間を殺めたという事実だけだ」
「はぁ?」
何言ってんだ、この女。もしかして、証拠もないのにクレアさんを逮捕しに来たのか。馬鹿じゃねえの。
「つまり、証拠は無いってことですよね。証拠もないのに、王国が逮捕状を出したんですか?」
「……」
俺の問いかけに対し、罰が悪いようにアロエラは押し黙った。
「その逮捕状、本当に正式なものなんですか? ちょっと、貸してくださいよ」
手に取ろうとした瞬間、アロエラは慌てて逮捕状を引き戻す。
「う、うるさい‼ とにかく、私達は貴様を逮捕する。抵抗しても無駄だぞ」
まともに話し合いをするつもりはないらしい。このまま逃げるのも手だが、敵の数があまりにも多すぎる。相手が一人ならまだどうにかなりそうだが、多勢に無勢だ。
「クレアさん……どうしますか?」
「……そうね。まともに戦っても勝てる相手じゃないし。ここは、大人しく従いましょう」
すると、クレアさんは両手を挙げ、降参の意を示す。
「お前たち、この女を縛り上げろ」
「はっ‼ 了解しました」
アロエラの部下と思しき騎士たちが、一斉にクレアさんのもとに駆け寄る。そして、身動きが取れないようにがっちりと縄で締め上げた。
「ふははは‼ ざまあみろ、クレア・ランドルフ‼ 思う存分、貴様を拷問してやる。自白するまで、容赦はせんぞ」
アロエラは、そんな倫理観ゼロの発言をしながら、高笑いする。このままクレアさんが連行されれば、発言通り拷問されるだろう。
王国は、クレアさんから片腕を……魔法を奪った。なのに、これ以上彼女を傷つけようというのか。
——そんなこと、許せるはずがない。
俺は、右の掌を大きく広げ、騎士たちのいる方へ向ける。そして——。
「衝撃魔法‼」
俺の詠唱に呼応するかのごとく、掌の中で目に見えない何かが渦巻く。そして、それを騎士たちに向けて放った。




