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第十二話 オカンとベヒーモス2

 キマイラよりも更に大きな巨体、

目が合った者を震え上がらせるような

恐ろしい目をしたベヒーモスと

タケシ、オカンの二人は向き合う。

両者の無言を崩したのはタケシであった。


タケシ

「行くでオカン、とりあえず

あいつをビビらして泣かせれるか

やってみよ。ほんなら

ベヒーモスの涙もらえるかも知れへんで」

オカン

「ほな若いんやからやってみい」


 タケシはベヒーモスを威嚇してみる。


タケシ

「ベヒーモス!しばくぞボケ!

殺すぞコラ!やんのかコラ!」

ベヒーモス

「……愚かなり。気勢を貼るだけの

小僧め、我の気が変わらぬ内に、

さっさと立ち去るがよい。

さもなくば貴様らの命は無いぞ」

オカン

「・・・・・」

タケシ

「アカン絶対無理やめっちゃ怖いって!

ほんなら痛めつけてみるしかないな!」

オカン

「・・・・・・・・」


 タケシはベヒーモスに向かって突進し

ベヒーモスの前脚目がけ剣を突きつける!


タケシ

「死ねえ!」


スバ! 


 タケシが剣を突きつけた瞬間、

ベヒーモスは後ろに飛び退き

容易く剣をかわした。


ベヒーモス

「……小僧、これが最後の警告だぞ。

今すぐ立ち去れ。貴様と我、

どちらが勝つか、明らかであろう。

我を怒らせれば、容赦はせんぞ」

タケシ

「うっさいんじゃボケ!ごちゃごちゃ

言わんとかかって来…」

オカン

「ちょお待ちーーーー!!!」


 オカンの大声が辺りに響き渡る。

オカンはタケシとベヒーモスの間に

割って入った。


オカン

「タケシ!アンタこの子に謝りい!」

タケシ

「はあ?オカン何言うてんねん!?

何で俺が謝らなアカンねん?」

オカン

「分らんかアンタ!?この子何にも

悪い事してへんやないの!」

タケシ

「いやでもこいつモンスターやぞ!

討伐依頼かかってんねんぞ!」

オカン

「いや、この子は悪い子や無い!

お母さんには分かる!

お母さん長い間生きて来たからな、

目え見たら悪い奴かどうか

わかるねん。

それに、今までのモンスター皆

直ぐに手え出して来たやろ、

でもこの子、

避けて何もして来えへんやないの。

アンタが悪いんや!

早ようこの子に謝りい!」

タケシ

「いやでも…」

オカン

「早よ謝り言うてるやないのー!!!

何べん言わせんのアンタはー!!!」


 タケシはオカンの気迫に押し切られた。


タケシ

「……ベヒーモス、ゴメンなあ……」

ベヒーモス

「……気が済んだか?……」

オカン

「ゴメンねベヒーモス、ウチの息子が

悪い事して、堪忍やで」

ベヒーモス

「……用が済んだら立ち去るが良い」


 オカンは何かに気付いたのか、

ベヒーモスに話し続ける。


オカン

「ベヒーモス、アンタに町から

賞金掛かってんねんけどな、

アンタ町の人らに何かしたん?」

ベヒーモス

「……我からは奴らに何もしてはおらぬ。

奴らが我に危害を加える故、

返り討ちにしたまで。

我はただ身に降る火の粉を掃ったまでよ」

オカン

「ほな先に手え出したんは町の人らかいな」

ベヒーモス

「……その通り。奴らは我の涙を高値で

取引する為に、我に危害を加えに来るのだ。

それも、涙を流させる為に、出来るだけ

苦痛を伴う武器を使ってな」

タケシ

「え?ほんなら町の人らがベヒーモスに

賞金掛けてんのは、被害にあうから

じゃなくて、ベヒーモスの涙を

手に入れる為やったって事なん?」

オカン

「そうみたいやな。タケシ、この子に

手え出したらアカン。帰ろ」

タケシ

「え?賞金どうするん?」

オカン

「この子わる無いやないの!

この子に賞金掛かってる事が

おかしいんやないの!

せやからこの子倒して賞金貰おうと

する事自体が間違いなんやで!

早よ帰るで」

ベヒーモス

「・・・・・」


 タケシとオカンはベヒーモス討伐を

中止し、帰る事にした。

申し訳ないと思ったのか、オカンは

ベヒーモスに声をかける。


オカン

「ゴメンなベヒちゃん、今まで

何もしてへんのに人間に襲われて

怖かったやろ。町に帰ったら

ベヒちゃん討伐したらアカンって

キツく言うとくからな、ゴメンな」

タケシ

「いや、知らんかってん

ホンマゴメンなベヒーモス」

ベヒーモス

「……解ってくれるのか……我の事を」

オカン

「どないしたん」

ベヒーモス

「……我はずっと、独りであった……

孤独だった……

恐れられ、寄って来る人々は

我を泣かそうと我に襲い掛かり……

我の悲しみ…我の苦しみ…誰一人…

理解しようとする者など居なかった。

お前達が初めてだ……

我の気持ちを、解ってくれた……

それだけで、我の苦しみは報われる……」


 ベヒーモスの目に涙が浮かぶ。

タケシは水筒を取出し中の水を捨て

水筒を空にした。


 ベヒーモスの涙が一雫、

まぶたからこぼれ落ちた。


ポチャン


 タケシはそれを水筒で受け取った。


ベヒーモス

「……よかろう、お前達への感謝も兼ねて

それは持って帰るが良い」

オカン

「ゴメンなベヒちゃん、ほな帰るね

町の人らにちゃんと言うとくからね、

ちゃんとごはん食べえや、ほなねー」

タケシ

「ホンマゴメンなベヒーモス、

じゃあバイバーイ」


 タケシとオカンはその場を立ち去り

ママチャリで町へと戻る。


 ベヒーモスの涙を手に入れて。


つづく

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