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第三話  能力の目覚め

 佐藤の神「サトリア」と夢で対話した夜の翌朝、俺は何事もなく荷運びの職場に通勤する。

 配達業は毎日勤務のブラック職であったが、職を得ること自体が大変な末位の人間からすれば、職につけることは十分ありがたかった。


 いつもの通り荷運びであちこちに荷物を運んでいた時、辺りから


 「誰か…誰か助け…グフッァ」


 と聞き馴染みのある声が聞こえた。配達を放り出し、急いで現場に向かっていると、そこには山本拓也が蒼にひどい暴行を行っている光景が目に写った。するとすぐ、


 「おっ、やっと来たぜ。待ってたよ〜佐藤クン」


 と笑みを浮かべながらこちらに歩み寄ってくる。


 「なぜだ...なぜ蒼にこんなことをした!」

 俺は目の前の光景に唖然になりながらも、反抗の姿勢をとった。


 「見てわからないんだ?ケジメだよケ・ジ・メ」

 「末位である君が昨日参位である俺に反抗してきたのがどうしても気に触っちゃってさぁ〜それで仕返しに君の親友イジメてたわけ」


 こいつ自分の私利私欲で.. 勝手なことしやがって

 

 すると蒼が今にも消えそうな声で

 

 「翔っ..逃げてくれ..」


 と声を発した。


 「オイオイ、こいつまだ喋れるのかよ。こりゃ喋れなくなるまで殴るっきゃねぇな」


 その瞬間今まで抑え込んでいた怒りが大爆発し、気づいた頃には山本の顔を殴っていた。


 「オイテメェゴラァ..今俺に何してくれやがった..」


 確かに顔を殴った感触はあった。だが、山本は平然としていた。山本に宿る八百万の神の力によるものだろう。


 「お前もこいつみたいにされたいんだな」

 「じゃあ望み通りそうしてやるよ」


 末位と参位には大きな壁がある。神からの力がほぼゼロに等しい末位と、戦闘に役に立つ神の力を持つ参位では大きな戦闘差があるからだ。

 自分は山本の硬化された腕によるアッパーカットを顎に直で受けてしまった。

 立ち上がることも難しくなった俺に向かって山本は


 「だから反抗すんなってあれほど言ったのにさぁ。末位なのにそんな態度取っちゃうから悪いんだよ〜?」


 何も言い返せずに、地面にひれ伏すことしかできなかった。その時、


 「翔、、頑張ってくれ、、」


 とかすかに蒼の声が聞こえた。 自分のせいで蒼もこんな事になったのに、応援してくれることが嬉しいのと同時に、胸が苦しくなった。


 「あっそうだ!君を先に片付ける前に先に君の親友から片付けちゃおっか。君の絶望した顔が見てみたかったんだよね〜俺って天才っ」


 どうにかして阻止したいと策を巡らせていた時、サトリアが自分になにかを隠していたことを思い出した。 すると突然、サトリアから


 「翔さん、、翔さん、、聞いて下さい。私のできるたった一つのことを今お伝えします。私は佐藤を司る神が故に、佐藤同士の神の力の譲渡が可能です。ですが、神の力を失った人は神の力は二度と使えなくなってしまいます。どうするかはあなたの判断に任せます。」


 俺は蒼の力を譲渡してもらおうとしたものの、自分のせいで蒼がいじめられている上に、神の力まで奪ってしまったら人で無しだと思い、諦めることしかできなかった。すると


 「翔!!きっとなにか策があるんだろ!!俺のことは良いからやってくれ!!」


 と蒼が最後の力を振り切ってまで大声を張ってくれた。

 するとそれを聞いた山本が


 「なになに?まだどうにかできると思ってるの?佐藤の分際で?まあ君の親友が痛い目に合うのを這いつくばりながら見てるといいさ!」


 山本が完全に油断している中、俺はサトリアに頼んで力の受け渡しをしてもらった。

 佐藤の力は微弱だった。だが二人の力が集まったその瞬間、初めて「佐藤」に神の力が宿るようになった。

 

 佐藤の「佐」とは補佐する・助けるという意味をもつ。

 扱えるようになった力とは単純明快なもので、他人や自分への身体能力の強化である。

 二人分のみの力しか無いが、強化する時間が短ければ短いほど、強化も倍増する。


 山本が今にも蒼を殴りかかろうとしていたその瞬間、自分はコンマ1秒の自己強化を施した。

 身体強化によって足の踏み込み、殴る速さや筋肉の質量も一時的に強化され、たった微弱な強化でもものすごい威力となる。背を向けている山本の後頭部に、パンチ一撃を食らわせた。

 だがすぐさまには倒すには至らなかった。


 「まだ抵抗を続けるのかクソ佐藤、、」


 そう言って山本が殴りかかってこようとするが、明らかに動きがよろめいているように見える。

 山本は平然かのように振る舞っているが、かなりの大ダメージを与えることができたのだ。


 その後最後の力を振り絞り、山本の首元を鷲掴みして地面に叩き落とした。

 山本は目を白色にして仰向けに倒れ、そこから動くことはなかった。勝利を手にしたのだ。


 すぐさま強化状態が切れ体が疲弊していたが、蒼を背中に連れて急いでその場をあとにした。


 末位のエリアでは病院の治療費がものすごく高価であるが、自分のせいで怪我してしまい、神の力まで失ってしまった幼馴染に治療も何もしないことは絶対したくなかったので、 全財産のほぼすべてを治療費に使い、様子を見てもらうようにした。


 明日には退院できるとの連絡があったので、一安心した。


 蒼が退院後、自分の事情を説明し、蒼の神の力が自分に受け継がれたことも話した。


 「俺にあった神の力なんて無いに等しいものだったから気にすんなよ。お前のお陰でなんか勇気がでたよ。あと高額な治療費お前が全部払ってくれたのか...?」


 「当たり前だろ。お前を怪我させたんだからそれぐらいのことはするよ」


 「そんなに俺のこと心配しなくてもいいのによ。ありがとな」


 蒼は自分のせいで怪我までしたのに俺を恨んだりすることは一切なく、お礼までしてくれた。

そんな蒼に俺は何度も感謝した。


 同時刻――神位庁

 「報告します。」

 

 静まり返った会議室に、一人の男の声が響く。


 「末位の人間が、参位を撃破しました。」


 「苗字は。」


 「……佐藤です。」


 その一言で、幹部たちの表情が凍りつく。しかし、最上段に座る一人の男、神童零だけが、小さく笑っていた。


 「そうか。とうとう始まったんだな。」





最後までご覧いただきありがとうございました。読者が段々と増えていることに、とても喜びを感じています。これからも応援していただけると嬉しいです。

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