第五十八話
情報料は、時に高く付く。
だが、必ずしも支払った対価とは比例しないのも情報。
高いからといって良い情報とは限らず、
しかし安いからといって悪い情報とも限らない。
俺は財布を取り出し、中を覗きこんだ。
なけなしの一万円札を2枚引きずり出すと、羽多野に渡した。その金額に見合った情報であって欲しい、そう願いを込めて。
羽多野は、ありがとうね、何か悪いわね、などと言いながら、淡々と2万円を受け取る。
「さて……」
俺が促すようにそう言うと、
「ヤクザよ」
羽多野は唐突にそう言った。
「……ヤクザ?」
「そうよヤクザ。暴力団よ、怖いわぁ」
そう言うと羽多野は眉間に皺を寄せ、演技っぽくはあるが、怯えるように体を縮こまらせた。
「昨日の夕方ね、ルージュタワーに、警察やらテレビ局やら、たくさん来ててね、ついつい野次馬根性で見に行ったのよ、でね、私聞いちゃったの!」
羽多野は興奮気味にそう言うと、俺から受け取ったお札を握りしめる。
「鑑識?かしらね?ドラマとかであるじゃない、青に黄色いラインが入ったみたいなやつ、でね、その服を着た人達がちょうどタワーに入って行くところで、仲間内で何やら小声で話してたの……」
羽多野はそこまで言うと、声を低めてこう言った。
「全部は分からなかったけど、一部、はっきり聞こえたの、あの人たち『抗争だ』って言ってたのよ!」
「……!」
「そう、抗争。抗争って言ったら、もうヤクザの抗争しかないじゃない、あのビルのオーナー、見た目が派手で変わり者だと思ってたけど、やっぱりヤクザと繋がってたのよ!嫌ねぇ、報復とかあるのかしら、流れ弾とかきたら怖いわぁ、」
羽多野は一人興奮し、依然ベラベラと自身の感想を喋り続けていたが、それはもう、どうでもよかった。
鑑識が言っていたという『コウソウ』。
羽多野は『抗争』だと思ったようだが、
そう、それはもちろん『抗争』ではなく、
実際には『咬創』に違いない。
神山氏も咬創により落命している。
それは、また、新たな符合。
『呪いの絵だよ』
阿木島のセリフが、
俺の頭の中でリフレインした。




