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絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
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第五十六話

「そうなんですか」


その指さしに釣られるように店を見た。


先ほどは外面とショーウィンドウしか見なかったが、

よく見ればそのショーウィンドウ越しに店内の様子を窺うことができた。


俺の一連の様子は、店の中から観察されていたようだ。


「怖い事件よねえ、あなたも犯人追ってるんでしょう?頑張って捕まえてよね!」


「はぁ」


残念ながら、日本ではまだまだ探偵の地位は低い。

海外では私立探偵にも警察並みの捜査権や逮捕権が認められているところもあるが、

今のところ日本では到底実現しそうにない。


なので、頑張ってなどと言われたところで、

はぁと答えるのが精一杯だ。


しかし、こちらの反応など気にせず、おばさんは続ける。


「情報提供してあげたいんだけど、残念ながら昨日はお店休みでね、

 事件の時間帯は外出していたのよぉ」


そう言って、あ、そうか、昨日、お店の外で会ったからあなたは知ってるわよね、

と思い出したようにそう言うと、アハハと一人笑う。


なるほど、だから昨日は店外で俺と2度遭遇した、というわけか。


「でね、警察の人にも色々聞かれたんだけど、

 何も言ってあげられなくてね、残念だったわぁ」


こちらが何も聞かなくとも、べらべらと勝手に喋ってくれる。

言葉は標準語だが、関西の出身なのかもしれない。

……まぁそれは偏見かもしれないが。


「あ、そうそう、実はね、ここだけの話……」


突然おばさんは声のトーンを下げると、

俺の袖をぐいと引き寄せる。


「私聞いちゃったのよ、警察の人の内緒話」


「内緒話?」


おばさんはグフフと意味ありげに笑うと、俺の袖を離してクルリ振り向くと、

自身の店のショーウィンドウの前に移動する。


一般的なおばさんが言う「ここだけの話」に果たしてどれほどの価値があるのか、

それに「ここだけ」と称してはいるが、

いわば誰に対しても「ここだけ」と言って喋っている可能性はある。


しかし価値的には低いものだとしても、

『警察の』と聞いた以上、内容を知りたくなるし、

確認をしておかねばなるまい。


「もうそろそろ、商品の入れ替えをしなくちゃあねぇ、

 これも随分長いこと売れてないわぁ」


ショーウィンドウの前に移動したおばさんは、

俺には構わずに何やらそんなことを独りごちながら、

こちらをチラチラと見てくる。


俺との話を中断して突然何が始まったのかと思ったが、

その余りにも露骨なやり方に俺はすぐに理解した。


「わかりました……、

 ちょうどそういうのが欲しかったんです、買わせて頂きますよ」


俺がそう言うと、あらそう!と言ってパッと明るい表情になると、

何か催促したみたいで悪いわね、などと言いながらそそくさと店の中に入って行った。


俺は苦笑いと共に、その後に続いて店の中に入った。

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