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絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
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第五十四話

神山氏のテナントビルは5階建。


築年数は新しいものではないが、比較的綺麗な外装をしている。最近、外装の塗り直しをしたのかもしれない。


この界隈で一番賑やかな場所から少し離れてはいるが、一応は表通りに面した場所にあり、ビルの前の道の人通りはそれなりに多い。


間口はざっと見た感じ10メートルはある。一階は美容院、2階はその美容院が経営しているというエステ。そして3階と4階は何かの会社の事務所になっている。


そして最上階の5階が神山氏の事務所……、昨日の殺害現場、というわけだ。


それを物語るように、ビルの前には、厳めしい面構えをした警官が道ゆく人々に睨みを利かせている。


右隣のビルとの間に、奥へと向かう幅が2メートルほどの通路があり、そこに規制線が張られていた。警官はその規制線の前に、手を後ろに組み仁王立ちしている。


このビルの右側に入口があり、その先に上階へとあがる階段なりエレベーターなりがあるような感じだ。規制線越しに見た入口のすぐ横の壁には埋め込み型のポストも見えた。


ううん!


と、警官がわざとらしい咳払いをして、ギロリと俺を睨んでくる。


気付けば俺は、規制線から体を乗り出さんとばかりにして奥を覗き込んでいた。


「こりゃ、失礼……」


そう言って俺は一旦そこから離れた。


今度はビルの左側に向かって歩きながら、

一階の美容院の様子を外から見てみる。


通りに面した店の壁面は、ほぼガラス張りであり、その為、中の様子がよく見えた。


しかし、見える店内には電気こそ点いてはいるが、客の姿は無く無人の椅子があるのみ、それどころか店員の姿も見えなかった。


店員は通りから見えない奥にいるのかもしれないが、客がいないことに関しては、昨日の事件が影響しているのかもしれない。


上を見上げる。この美容院が経営しているというエステの窓が見えた。


2階の窓ガラスにはほぼ全面に渡って、店名やエステの内容、料金などが書かれた薄ピンク色のフィルムが貼られていた、それ故に中の様子は分からなかった。


さらに上を見上げる。3階と4階の窓が見えるが、さすがにこの角度からでは中の様子を窺うことはできない。さらにその上、5階ともなると言うまでもなかった。


上を見上げるのをやめる。無理な体勢で見上げていた首を労わるかの様に、無意識に首をさすっていた。


さすりながら、ふと、道路側に視線を移す。ちょうどこのビルの真向かいに当たる場所に、2階建ての店舗らしきものがあるのに気付いた。


なるほど、そうだな。


向こう側からなら上階の様子が分かるかもしれない、もしかしたらあの店舗の従業員は何かを見ている可能性がある。


そう思った俺は早速、ここからそう遠く無い場所にあった横断歩道から道路の向こう側に渡り、神山氏のビルの真向かいの店舗まで足早に移動した。

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