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絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
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第五十三話

― 9 ―


喫茶店を出て阿木島と別れた後、

俺はある場所へと向かった。


その目的地は、バスや地下鉄で移動をするほどでもなく、

徒歩圏内だったこともあり、迷わず歩いていくことにした。


歩きながら喫茶店でのことを少し整理する。


結局、俺は阿木島には沢辺氏から絵を預かっていることは、

言わなかった。


確証は無いが、その沢辺氏の絵が、

神山氏の元から盗まれた絵に違いないように思えたからだ。


三本氏お気に入りの絵を頼み込んで譲り受けた神山氏、絵への執着心。

金額は聞いていないが、おそらく聞いたらびっくりするような金額に違いない。

それだけ、その絵に一目惚れしたか、絵に魅入られたのか。


そして三本氏の絵への執念。


もちろ骨董品や美術品は高額商品なので、

売った後は知りませんではなく、保存管理、展示の仕方などに関してのアドバイスや、

修繕修復の案内などアフターサービス的なことをするというのはあるのだろう、

電化製品でいうところの保証書によるサービス的なところだ。


だが、盗まれたら探偵を雇って探させる、というのは、

常識的に考えてアフターサービスの範疇を越えている、としか思えない。


神山氏の執着、三本氏の執念、そしてそこに、

沢辺氏の絵を愛でるギラギラとした目が加わる。


急に悪寒が走る。


ブルリと体を震わせた。

鼻をすすりながら、風邪気味だったことを思い出す。

悪寒を風邪のせいにした。


ちなみに、阿木島は絵を探す為の資料として絵の写真を持っているらしい、

先ほどはちょうど持っておらず、見せてはもらえなかった。


別れ際に、巻き込んだからには写真ぐらい見せろとは言っておいた、

なので、間もなく沢辺氏の絵と同じものかどうか判明するだろう。


では、間違いなく同じ絵だとして、

絵は、どの様にして沢辺氏の手に渡ったかだ。


絵は盗まれた後、絵の露天商の手に、そして沢辺氏の元へ。


ということは、絵の露天商は盗品と知りながら販売していたということだろうか、

いや、知らなかったかもしれない。


では、露天商に絵を卸した人物とは何者なのか、その人物こそが盗んだ犯人なのか。


そもそも、露天商とされるその人物こそが絵を盗んだ犯人なのではないのか、

その様に後ろめたい事があったので、姿を見せなくなった、とも考えられるが。


全ては想像でしかなく、現段階では分からないことが多すぎる。


あと、そうだ、

一つ忘れていたことがある。


俺が沢辺氏から預かっているのは、

明らかに絵の半分だけ、ということだ。


ならば、まだ見つかっていないもう半分があるということになるが、

それは今、どこにあるのか。


などと、色々と考えを巡らしながら歩いている内に、

目的の場所へと到着した。


目的地、そこは神山氏のテナントビルだった。

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