第四十七話
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「さて、どこから話してもらおうか」
一口コーヒーを啜り、
カップを置くと俺は尋問するような口調でそう言った。
「まあ、待てよ」
俺のコーヒーよりも遅れて運ばれてきたミックスジュースを前に、
阿木島はストローを袋から取り出しながら、そう言う。
「お楽しみはこれからだぜ」
ストローをミックスジュースに突き立てると、
ズズっとそれを一気に飲み干した。
飲み方は人それぞれだとしても、
毎度その飲み方はどうかと思う。
あの後、近場の喫茶店に入った。
カウンター席が6席、
窓際にソファのテーブル席が3つの昔ながらの喫茶店。
今この店内にいる客は俺たち二人だけだった。
最近、近場に全国展開している喫茶店ができ、
客はそちらに流れたらしい。
新しい店にも行ってみた、
あれはあれでもちろん良い、
でも古くからのこの店が好きだ。
目の前の年季の入ったこの木製のテーブル。
おそらくこのテーブルの上で、
数多の商談が交わされ、
男女の愛の言葉も囁かれ、
時には別れの舞台ともなったであろう。
人々の喜怒哀楽、
全てを見てきたであろうこのテーブル席に座ると、
全て見透かされたような気分になり、
自白するかのように、話をしたくなる。
果たして目の前の阿木島も、
自白するかのように全てを話してくれるのだろうか。
その阿木島はというと、
未だ底に残った氷をストローでコロコロと転がしながら、
グラスと氷の隙間に残ったミックスジュースを探るようにし、
ズルズルと行儀悪く啜っている。
「おい、いい大人が行儀悪いぞ」
見かねた俺がそう言うと、
阿木島はストローを咥えたまま、
目だけを動かし一瞬こちらをチラリと見た。
「別に他に客もいるわけじゃなし、気にするな」
ストローを加えたままそう言うと、
お構いなしにズルズルと音を立て続ける。
ふぅ、俺はため息をついた。
首を振り店内を見渡す。
確かに客はいないし、店のマスターの姿も見えない。
マスターは仕込みの準備か何かで、
ここからは見えない店の奥の厨房の方に、
引っ込んでしまっているようだった。
だからと言って行儀悪くしてもいいという言い訳にはならないが、
今ならば、誰かに聞かれてはいけないような秘密の話などが、
できそうな雰囲気ではある。
やがて阿木島は、ようやく啜るのをやめ、
ぺっとストローを吐き出すと、その後ソファにふんぞり返った。
顎の無精髭に手をやりながら、
「そうだな……」
などと呟いたかと思うと、
やおらテーブルに体を乗り出し、俺に顔を近づけてくる。
そして周りを憚るように、
と言っても周りで聞いている者は誰もいないが、しかし小声で、
「どうやらよ、本谷が犯人らしいぜ」
などと、言う。
「犯人?!」
突然の阿木島の告白に驚き、
思わず出た自分の声にも驚いた。
と同時に脳裏には、
本谷が俺を鋭く睨んでいた、あの姿が浮かびあがった。




