表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
47/62

第四十七話

― 8 ―


「さて、どこから話してもらおうか」


一口コーヒーを啜り、

カップを置くと俺は尋問するような口調でそう言った。


「まあ、待てよ」


俺のコーヒーよりも遅れて運ばれてきたミックスジュースを前に、

阿木島はストローを袋から取り出しながら、そう言う。


「お楽しみはこれからだぜ」


ストローをミックスジュースに突き立てると、

ズズっとそれを一気に飲み干した。


飲み方は人それぞれだとしても、

毎度その飲み方はどうかと思う。


あの後、近場の喫茶店に入った。

カウンター席が6席、

窓際にソファのテーブル席が3つの昔ながらの喫茶店。


今この店内にいる客は俺たち二人だけだった。


最近、近場に全国展開している喫茶店ができ、

客はそちらに流れたらしい。


新しい店にも行ってみた、

あれはあれでもちろん良い、

でも古くからのこの店が好きだ。


目の前の年季の入ったこの木製のテーブル。

おそらくこのテーブルの上で、

数多の商談が交わされ、

男女の愛の言葉も囁かれ、

時には別れの舞台ともなったであろう。


人々の喜怒哀楽、

全てを見てきたであろうこのテーブル席に座ると、

全て見透かされたような気分になり、

自白するかのように、話をしたくなる。


果たして目の前の阿木島も、

自白するかのように全てを話してくれるのだろうか。


その阿木島はというと、

未だ底に残った氷をストローでコロコロと転がしながら、

グラスと氷の隙間に残ったミックスジュースを探るようにし、

ズルズルと行儀悪く啜っている。


「おい、いい大人が行儀悪いぞ」


見かねた俺がそう言うと、

阿木島はストローを咥えたまま、

目だけを動かし一瞬こちらをチラリと見た。


「別に他に客もいるわけじゃなし、気にするな」


ストローを加えたままそう言うと、

お構いなしにズルズルと音を立て続ける。


ふぅ、俺はため息をついた。


首を振り店内を見渡す。

確かに客はいないし、店のマスターの姿も見えない。


マスターは仕込みの準備か何かで、

ここからは見えない店の奥の厨房の方に、

引っ込んでしまっているようだった。


だからと言って行儀悪くしてもいいという言い訳にはならないが、

今ならば、誰かに聞かれてはいけないような秘密の話などが、

できそうな雰囲気ではある。


やがて阿木島は、ようやく啜るのをやめ、

ぺっとストローを吐き出すと、その後ソファにふんぞり返った。


顎の無精髭に手をやりながら、


「そうだな……」


などと呟いたかと思うと、

やおらテーブルに体を乗り出し、俺に顔を近づけてくる。


そして周りを憚るように、

と言っても周りで聞いている者は誰もいないが、しかし小声で、


「どうやらよ、本谷が犯人らしいぜ」


などと、言う。


「犯人?!」


突然の阿木島の告白に驚き、

思わず出た自分の声にも驚いた。


と同時に脳裏には、

本谷が俺を鋭く睨んでいた、あの姿が浮かびあがった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ