第四十六話
「何です、阿木島さん、三本ギャラリーに何の用ですか?」
明らかにトゲのある高圧的な態度だ。
「いやぁ、ちょっと探し物、そう、探し物の依頼ですよ」
一柳の高圧的な態度に対して、それでも阿木島は相合を崩したまま恭しく言う。
「探し物ねぇ、ふん……どうか私の邪魔だけはしないで欲しいですね、それに……」
そう言って阿木島の後ろにいる俺を睨みつけて、
「確か、あなたも探偵ですよね、二人揃って探し物とは、よほど見つからないものか、あるいは、二人とも無能なのか……おっと失礼、言いすぎました」
そう言って嫌みたらしくニヤリと笑う。
髪はオールバック、斜視気味な目は細く、顔も面長な一柳の笑い顔は、何か爬虫類的な嫌味を伴った笑い方だった。
俺は以前、ある事件で一柳と、少しだが関わりを持ったことがある。
とにかく最初から嫌なやつだった。
警察というだけで、この世の権力を全て握ったとでも思っているのだろうか。
言うこと為すこと全てが高圧的。
初対面であっても無遠慮に、
しかも犯罪者を見るような態度で迫ってくる。
「さて、あなた達と話していても時間の無駄です。こちらは忙しい、これで失礼しますよ」
そう言って一柳は俺達の横を通り過ぎて行った。通り過ぎながら、
「探偵はおとなしく、浮気調査やペットの捜索だけしてればいいんです、でしゃばらないで欲しいですね」
などと吐いて捨てるように言う。
「なに……」
一柳のあまりな言い方に色めきたつ俺の肩を、
しかし阿木島がぐっと掴み静止する。
その阿木島の顔には先程までの恭しさなど微塵もなく、ただ一柳の背中を恨みさえ込めた眼差しで見つめていた。
一柳はやがて三本ギャラリーへと入って行った。
それを見届けて。
「嫌なやつだ」
阿木島が言う。
「珍しくお前の意見に同感だ」
俺は言った。
「珍しくとは何だ」
阿木島がそう言った。
「ま、そういうことだ」
俺はそう言うと、
三本ギャラリーに背を向け、歩き始めた。




