第四十三話
「なかなかに結構な品揃えですな」
昭木島の連れかどうかの質問には答えずに、
俺はそう言って店内を見回した。
本谷。
左胸に付けたネームプレートにはそう書いてあった。
店員の本谷は俺のその返答に一瞬どう言おうか迷ったようだが、
「……ええ、小さなお店ですが、確かな品物が揃っています」
と、営業トークで返してきた。
俺に詮索の意思がないのなら、自分からもしない、ということか。
ならば、しばらくは雑談で様子をみてみよう。
俺は店内を改めて見回してみた。
店はちょうど学校の教室くらいの広さだ。
カウンターに向かって右手の壁には、
油絵が数点掛けられている。
「油絵、ですか」
「はい、店主が……、前店主が美術商に顔が広く、
大変良いものが揃っております、
よろしければお近くでどうぞ」
額縁の下には値札が掲出してあるが、
よく見ると『0』がたくさん並んでいる、結構な値段だ。
骨董商で扱う美術品には偽物も多いと聞く、
故に値段だけでは判断はできないが、
もし、本物であるならば、かなりの高価なものなのだろう。
「なるほど、素晴らしい絵画ですね、
ところで……、前店主はどんな方でしたか?」
「そうですね……、優しいかたでした」
急に振られた前店主の質問に、
本谷は一瞬緩んだ顔になり、遠くを見るようにしてそう言う。
しかし言い終わると同時に「ハッ!」とした顔になると、
「……そうですね、美術品の扱いは人一倍優しいかたで、
真贋に迷うことがないよう、日々勉強を惜しまない方でした」
まるで、取って付けたかのような内容の話をする。
露骨ではなかったが慌てたようにも見えた。
ふむ、『優しいかた』ね、なるほど。
俺はあえてそれ以上前店主の話をせず、
今度はカウンターに向かって左側の壁を見る。
こちら側はいわゆる日本画や中国画のコーナーのようだ。
掛け軸状の絵画が壁に掛けられていた。
水墨画風のものや、
花鳥風月といった題材のものなどが見えた。
値札を見るに、こちらもそれなりの値段がするようだ。
「掛け軸状の絵画などは保存も難しいでしょう、
前店主はさぞかし『優しい』取り扱いをされたことでしょうな」
敢えて『優しい』を強調して言って、
ちらりと本谷の方を見る。
「……そうですね、軸状の絵画はより優しさを必要とします」
一瞬こちらをキッと睨むような雰囲気もみせたが、
それ以上のことはなかった。
だが、この本谷、前店主と『何か』ありそうだ。
今のところ、その『何か』が何であるかは、
まだはっきりとは分からないが。
さて、次はどう揺さぶってやろうかと考えながら、
今度は視線を店の中央に3つ並んだ平台のガラスケースに移した。
そこには煌びやかな工芸品などが並んでいる。
そして、その工芸品と一緒に、
俺は見覚えのある物が並んでいるのを見た。
「これは……、陶板画、ですね」




