表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
42/62

第四十二話

「いやぁ、どうも、奥様、その後、お加減は……」


恭しくもどこか馴れ馴れしい感じでそう言うと、

阿木島は無遠慮にズカズカと店の中を歩き、

カウンターの向こう側へ行こうとする。


どうやら阿木島は、その奥様、三本夫人に、

何か依頼されていたらしい。


犯人探しか? それとも別の何かか……。


何にせよ傍で話を聞いてやろうと、

未だ入り口付近にいた俺はカウンターの近くに行こうとした。


歩き出した俺の前に、スッと女性が、

先ほどカウンターにいた若い女性が、

俺の進路を阻むかのように立ち塞がった。


いつの間にかカウンターから出て、店の中に来ていたらしい。


「失礼ですが、阿木島さんのお連れの方ですか?」 


「いや、まぁ、連れというかなんと言うか……」


その女性、遠目で見て且つ声だけ聞いていた時は、

若そうに感じてはいたが、近くでみると若者という歳ではないらしい。


30代半ばくらいか、俺より少し若いくらいらしい。


ちらりとその女性の頭越しに見た奥では、

すでに阿木島は奥の事務机の所で三本夫人と話を始めていた。


まぁいい、阿木島には後でしっかりと内容を話してもらおう。

例え話すことを拒否しても、やつには色々と貸しがある、

嫌でも話させてやるさ。


それよりも、俺は少しこの女性が気になった。


何故なら先程の俺の進路への割って入り方に何か違和感を感じたからだ。


もちろんそれは、この店の店員として、

その店主である三本夫人の話を部外者には聞かせたくないし、

関わらないで欲しい、という、ただその思いだけでの行動かもしれない。


しかし、俺には何かその彼女の行動が、

店員としての店への忠誠心、店主への忠誠心というものではなく、

彼女自身の意思により俺を排除しようとしている、そういう風に感じたのだ。


それを示すかの様に、先程から彼女は俺を睨んでいるようだ。

俺がその彼女の頭越しに奥の阿木島の様子を眺めていた時も、

そして今もずっと俺の顔を見つめている、のではなく睨んでいる。


睨んでいる『ようだ』、と言ったのは、

俺は今、彼女と目を合わせていないから。


探偵を長く続けていると色々なことができるようになる。

目線を逸らしているようで、

実はその視界の端できっちりとターゲットを確認している。


今も奥を見るふりをしながらきっちりと彼女の表情を、

視界の端に捉えていたのだ。


もちろん彼女へはバレてはいないはずだ、

俺が店の奥から彼女の顔へ視線を戻すと、

睨んでいた目元がふっと和らぐ、

そして店員らしく営業スマイルすらしている、

先ほどからずっとスマイルしていましたよと言わんばかりに。


何かあるな。


そして、俺は彼女にとって招かれざる客なのは間違いなさそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ