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絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
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第四十話

― 7 ―


俺は街を歩いていた。


果たして、絵と事件、この一致はただの偶然なのか。


事務所であれこれと考えを巡らしたところで、

到底解決できる問題であるとは思えなかった。


それに何かを考えるには、

歩いて行う方が効率が良いらしい。


平日の昼下がり、今日は昨日の雨もすっかりあがり、

歩くには申し分ない感じである。


だが、あてもなくウロウロと歩くのは、

いささか効率が良いとは言えない。


足は自然と例の事件現場にもなった三本ギャラリーへと向かっていた。

行ったところでどうにかなるとは思わなかったが、

まずは何か目的を得なければ気持ちが治まらない、そんな気分だった。


その道すがら、


「おい保本!」


ふいに声を掛けられた、阿木島だった。


「どうした? まるで別人みたいな顔をして」


「……別人?」


「そうさ、別人。声を一瞬かけそこねたぜ」


へへっと笑う阿木島。


確かに、眉間にしわを寄せ、思い悩みながら歩いていたが、

そのような表情で歩いていたことが別人にみえたのだろうか。


阿木島はさらに続ける、


「それに薄ら笑いをうかべて、思い出し笑いか、気持ち悪い」


「薄ら笑い?」


まさか。


今の俺の心の中は決して楽しいという感情などありようはずがない、

それに苦笑いをした覚えもない。


「俺は笑ってなど……」


反論をしようと口を開いたが、それに合わせるように阿木島も口を開いた。


「お前どこへ行くんだ、俺は今から三…、じゃなかった、

 そうそう、ちょっと所用でな、こっち方面に用があるんだ」


三?


まさかこいつ。


「三本ギャラリーに行くんだな」


俺は鎌をかけてみた。


「三本? いやいや。ちょっと所用さ」


阿木島は表情こそ変えなかったが、

俺の目を見た後、一瞬右上を見て、そしてまた俺の目を見た。


嘘だな。


俺は阿木島に教えていない、こいつの癖を知っている。


質問に答える時、一瞬右上を見る。

それはこいつが嘘をつく時の癖。


俺はさらに鎌をかけてみる。


「犯人に思い当たる人物がいるんだ、

 それについて今から三本ギャラリーに行こうと思ってな」


これはもちろん俺の嘘だ。

犯人など知るはずがない。


「えっ? そうなのか? 俺も今から三本ギャラリーに行くんだ」


あっさりと引っかかった。


「やはり」


「あっ!」


俺は三本ギャラリーに向けて歩き出した。


「お、おい、ちょっと待てよ……!」


遅れて後ろから付いてくる阿木島が、

何やら俺に対して文句を言ってきたが、

俺はそれには構わずに歩を早めた。

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