表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絵が笑うと人が、死ぬ。  作者: 桜町雪人
32/62

第三十二話

― 6 ―


正午を告げるチャイムの音が、

まどろみの中で微かに聞こえてくる。


もう、正午か……。


どこか近隣のビルから流れ来る、

俺にとってはお馴染みのそのメロディーを聞きながら、

腫れぼったいその目を何とか見開き、上半身を起こした。


3時間余り寝ていたということになるが、

熟睡は出来ていない。


しかし、完全に熱は下がってはいないようだったが、

もう起きて動き回っても平気なほどにはなっている。


俺はベッドから抜け出すと、

まずは目覚めのコーヒーを求め給湯室へと向かった。


だが、いつもなら朝に用意するコーヒーメーカーも、

今日は空のままである。


いや、厳密には昨日の作り置きが僅かばかり残っている。

電源は切ってあったので常温で放置された状態だった。


しかし俺は、この際それでも構わないと思い、

それを使用済みのカップへと流し込むと、

続いて体内へと流し込んだ。


コーヒーが常温でどのくらい持つものなのかは知らないが、

もし傷んでいたとして、それで腹をこわしても別に良いと思った。


そうすれば体内に滞っている何かを、

下剤よろしく吐き出してしまえるのではないか――。


……ところで、『何か』とは何だ?


俺はそこまで考えると、やがて「ククッ」と、

まるで喉に菓子でもつかえたような笑い方をした。


全く思考が支離滅裂している。


未だ夢の中にいるようだった思考は、

その笑いがきっかけでようやくまともに活動し始めたようだ。


俺は棚から食パンの入った包みを取り出すと、

その内の1枚とカップに残っていたコーヒーとで軽い朝食とし、

続いて棚から歯ブラシを取り出す。

ちなみにココは流し台兼洗面台でもある。


俺は歯を磨き、そして洗顔を済ませると、

寝汗を吸い込みじっとりしたシャツを新しいものへと着替えた。


まだ幾分、頭の奥に鈍痛のようなものが残っていたが、

今はもう、今朝感じたほどの酷いものではなくなっていた。


「さて……」


俺は表情を引き締めた。


今日は少し変則的になってしまったが、

今より仕事の始業時刻である。


俺はゆっくり歩き出すと、

事務室から衝立を越えて面会室へと向かった。


まず最初の仕事がそこにはあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ