第十五話
ここからだと、そう遠くはない。
傘は要らないだろう。
途中コンビニの前を通りかかったが、
俺は足を止めることなく先を急いだ。
濡れたコートを引き摺るようにして雨の中を駆け続ける。
飲んだ後に走ったせいか、少し酔いが回ってきたようだ。
ともすれば足がもつれそうになる。
しかし、俺は駆け足を止めなかった。
雨の方は幸い霧雨へと変わる。
だがちょうどその頃には、
俺はそのアーケード街へと到着した。
『みなみ平盛アーケード街』
一先ずコートを脱ぐ。
それはずっしりと重く、
絞れば水が滴り落ちそうなほどになっていた。
俺はそれを手にアーケード街を進み始める。
道は南北へと一直線に約100メートル近く延び、
そしてその両脇には店が軒を連ねる。
言ってみればそれは典型的なアーケード街。
だが、少しひなびた感じがするのは、
最近駅により近い通りに、
同様のアーケード街が出来たからというのがあるのだろうか。
今はもちろん時刻のせいだが、
店々のシャッターは全て下りてしまっている。
だがそれが昼間来ても同じ状態、
いわゆる廃業した店が軒を連ねるという、
『シャッター街』なのではないかという連想を容易に抱かせた。
店々の看板を見ても、
「~洋品店」「よろず~」「~食堂」など、
どちらかと言えば古めかしい表現のものばかりで、
横文字のものなど、ざっと見てもすぐには見当たらなかった。
所々色がハゲ、ヒビの入ったタイルを踏みしめながら、
俺はふと上を見上げる。
見上げたそのアーチ状の天井は半透明であり、
夜の空を透過するも、暗くそして重たい。
それは天候のせいだけではなく、行き去った年月の重みか。
この通りには最早活気などなく、
栄華を極めた頃の残滓のみを頼りに生き続けている、
俺にはそう思えてならなかった。
だが俺はそこで、不意に一つ疑問を感じる。
こんな時代の波に抗うような、
そんな昔気質を続けるこのアーケード街に、
果たして絵の露店などといった洒落たものが、本当にあったのだろうか。
確かにここは、
飲み屋街から駅へと抜ける近道にはなっている。
ゆえに、夜のこの時間でも人通りはまばらにある。
だがもし、そんな露店を出すならば、
より人も多くそして集まりそうな、
駅に近いアーケード街の方が良いのではないか。
しかし、そう思いながら歩く俺の予想とは裏腹に、それは居た。
絵の露店ではなかったが、
いわゆるストリートミュージシャンとでも言うのだろうか。
アコースティックギターを抱え込むようにして、
彼は地べたに座り込んでいた。




