状況整理をしてみる
契約しているにもかかわらず長期不在にしていた宿に顔を出して店主に生存を喜ばれ一泊した後、しばらく旅に出ると言い残しとっていた部屋を解約して自宅へと帰還する。今後のことを検討するにも頭数が多い方がいいだろうしという簡単な理由により自宅へ帰ることを決めた。。街を出て自宅まで一気に転移する。テレポート、瞬間移動、空間跳躍など名称を決める際に恥ずかしくない表現という基準で選ばれたのが転移という名称だった。
久々の自宅は落ち着く。ティアラの淹れてくれたミルクと砂糖が大量に投下されたコーヒーを飲みつつソファーに座っているだけだが実に贅沢をしているような気がする。コーヒーの入っているマグカップを持ちつつ喫煙所と名称が固定されかけているベランダというかバルコニーへ移動して一服していると、正面の平野に人が集まっているのが見えた。見えたが俺は休暇中であり、なによりも一服している最中だ。平野の中に湖が出来ているような気がしたが正直どうでもいい。転落防止用の手すりの上にマグカップを置いて手すりにもたれかかりながらの一服。状況的に屋上で煙草を吸っているサラリーマンに近い。バルコニーと家を仕切る扉が開きセバスチャンが俺の帰省に対して挨拶をしてくる。
「お帰りなさいませ、一太郎殿。ティアラ殿との新婚旅行はどうでしたか?」
「お約束コースに乗りそびれて全然駄目さ。何が悪いって状況すべてが悪いって感じだ。あとでみんな集めて報告でもするわ。」
「では夕食後としましょう。みんなというとどの程度集めましょうか?」
「まだ昼飯前だけど了解。主要人物は全員参加、ほかは参加希望者が居るならさらに追加で。」
「了解しました。あと私の妻も引き籠もりから復帰しましたので参加してみるように言っておきます。」
「急を要する用事とかある?ないならのんびりしたいんだけど。」
「施設の新設、それに設備の拡張が必要になると思います。会議をする際にも場所がありませんので。そのほかにもリストを用意しておきます。こちらで作業してよいのでしたら部下に命じておきますが?」
「風呂入りたいから任せるわ。何か作るならこの山の麓当たりに作っておいて。」
「承りました。」
頭を下げてセバスチャンが戻っていく。煙草をもう一本吸ってからぬるくなったコーヒーを飲み干して私用を済ませることにした。昼食をティアラと二人で済ませ近くを散策してみる。宿を取っている街まで向かう際は徒歩であったが帰りは一気にリビングに跳んだので居なかったときの変化具合を見ておきたかった。平野に湖があるのは気にしないことにしたが、家の周りのことは気になる。俺は景観に拘る男だからな。さして違いも見出せずに森林浴をして十五時近くにおやつを食べに家に帰ったが、俺は景観に拘る男だ。
夕食を済ませてしばらくしたらセバスチャンが家に来た。報告会と今後について決めないといけないからな。前回通りリビングでやるのかと思ったが、ここだと全員入らないのでと言われ会場を作ったのでそこへ向かうとのことだった。家を出たら、山の麓に地上四階建ての大型マンションのような感じの建物が目に入る。
「任せてあるから文句はないけど、この建物って何?」
「この周辺に住むものは一太郎殿と私たち以外決まった住居を持ちませんので仮設住宅での生活でした。仮設住宅での生活も外の一般住宅よりも恵まれた環境でしたがいい機会でしたので必要な居住環境を作らせて頂きました。地上四階建てで一回を除いて全て居住エリアとなっております。それぞれの部屋には調理場と水回りを完備させていただきました。一回はエントランスにロビー、食堂を配置してあります。地下は十二階まで作りまして地下一階には会議用の大ホールを備え、地下二階より作業場や貯蔵庫を含めた必要と思われる設備を今後増築していく予定です。景観を崩さないように見た目は木造建築であるようにしております。建物の構造体としては木材では強度が足りませんでしたので木材は外壁に貼り付けただけとなっております。」
「了解。好きなようにしてくれ。」
変につつくと余計な疲れを抱えることになりそうなので流すことにした。ティアラは興味がないのか黙って付いてくる。案内された大ホールとプレートに明記されたドアを開くとコンサート会場のような大きさの会議室があった。収容人数は五千を下回ることはなさそうな無駄に広い会議室だった。主立った面々はドーナッツ型の円卓を囲うように着席していた。当然ショーンもその中に座っていた。その最前列以降に参加希望者かなりの数座っている。上座が二席空いておりクリップで束ねられている資料が置いてあった。勧められるままにそこに腰を下ろすとセバスチャンが会議を開始する。セバスチャンは座ることなく俺の横に立っていた。
「では、今後についての会議を開始します。まずは一太郎殿とは初めて顔を合わせる方がいらっしゃいますので自己紹介から始めましょうか。一太郎殿は手元の資料と照らし合わせてご確認ください。まずは、この神域の統治者であります一太郎殿です。その横には奥方のティアラ殿。さらにショーン殿と奥方のノエル殿です。この四名は最後に合流した世界の出身となります。」
紹介されたので軽く手を上げて返答することにした。改めて円卓を囲んでいる出席者を見渡すと出席者の大半が女性だな。この地域の男女の比率はこんなに激しく傾いていたのか。俺以降も手を上げて返答していく。
セバスチャンの紹介は続いていき、手元の資料を眺めつつ顔と名前を一致させる作業に没頭する。俺の役職は神か。こういう資料に書かれる役職だとずいぶん安っぽくなる。ティアラの役職欄に書いてある神補佐の方が偉そうに見えるのは文字数の違いだろうか。ショーンとノエルは牛人、牛人補佐で頭の悪そうな役職だと思ったのは内緒にしておこう。ノエルについて補足するとノエルの身長は百四十センチ程度ある。こっちに合流したときに俺たち四人は身体の大きさと見かけの年齢を変更できるようになっていた。大変便利な機能だった。
参加者の事項紹介はノエルのあと巫女のOGが続いていった。就任時期を古い順からソートして紹介されていくが数が多い。巫女の役職は多岐にわたっており、メイドのような印象を受ける。というかメイドと書いてあった。この世界の巫女は長期にわたってその任に就くことがない。短い場合でも十年、長くても十一年となっている。巫女という役職が辛いという訳ではなく巫女は神域へ定期的に訪ねてくるようにしてあるのでここの実情を知っている。外界にここのことを漏らせば即死するという制限があるものの、実情を知っているからこそこちらに移住を希望している物が大半になる。結婚した場合、旦那を連れてくることが出来ないため独身のみとしたが移住希望者は尽きない。
紹介はどんどん進んでいき資料もどんどん捲られていく。そうやってしばらくした後あるところで資料を捲る手が止まる。資料に書かれた人物が男だったからではない。名前が長かった。役職は勇者と記載されていた。さすがのセバスチャンもこの勇者の人物名は資料に頼っている。資料の用紙はA4程度。おそらくフォントサイズは十くらいだろう。名前の書かれているページは三ページくらいの長さだった。名前を読み上げたセバスチャンは名前の長さについての補足に入っていた。どうやらこの勇者は過去の勇者や英雄の名前をいろいろまとめて付けられているとのこと。馴染みのない名前からアーサーやウィリアムなど知っている過去の英雄、偉人の名前が含まれている。勇者パーティー全員が同様の名前が付けられている。この名前が付けられたのは勇者就任後らしい。勇者、神官、魔法使い、盗賊、格闘家、剣術使い、賢者など全員名前が長い名前が付けられている。ならば、就任前の名前を名乗ればいいのだが、長い名前を覚える際に脳の容量を可能な限り割かれたらしく覚えていなかった。実に勇者らしく頭が悪い、名付け親も頭が悪い。後で適当にあだ名をつけよう。
「最後になりますが私セバスチャンと申します。それと妻の魔王です。一太郎殿、妻には一般的な名前がないのですが何かありませんかな?」
「今までなんて呼んでたの?結婚してからかなり立つでしょ。」
「私は一太郎殿からセバスチャンと名前を頂いておりますので、妻はそう呼びます。妻は魔王ですから魔王と呼んでいましたが魔王は役職だと妻に言われてしまっては名前を付けないわけにもいなかくなってしまいまして。」
「魔王の名前ねぇ。」
魔王➝クラシック➝シューベルト?シューベ、シュール、シュート。全滅だよ。
魔王➝クラシック➝ゲーテ?ゲーテで良いんじゃないか?サタンとか安直すぎるし男っぽい。
「じゃあ、ゲーテでどうさ。」
「ゲーテですか、良い響きですな。妻も同意見のようですし。」
「じゃあこれからはゲーテで。よろしく。紹介も終わったことだし今回はゲストを用意してあるんだわ。」
円卓の真ん中に机を用意して貰ってその上にスピーカーをセットしてスイッチオン。
「あー、あー、聞こえるか?軍曹。」
『はいはい、感度良好だ。あと最近気分的に昇進して中尉になった。呼び名は中尉にしてくれ。まぁ、なんにしても久しぶりだな一太郎。早速だけどダンジョン足りないわ。それに装備関係のカテゴリー増やしてくれないか。あとイベント用のボス大きすぎるし、一回で戦える面子の数が少なすぎてすぐ全滅するって苦情が来てるんだわ。面子もこっちで最高ランクの冒険者だからさ。これで攻略できないとなると放置されるかもしれないんだわ。あれってメインストーリーに関係する敵だろ?倒せないとなるとこれ以上街の数も増えなし、結構困るんだわ。』
「とりあえず、善処するからその件は後で。今時間あるよな?」
『あるけどどうした?孤独死しそうなくらい暇にでもなったか?』
「孤独死なんぞするか、妻帯者舐めんな。」
『結婚したの?』
「ああ。前にも言っただろ?」
『ネタだと思ってた。おーい、集合!一太郎結婚してるらしいぞ。』
「あーそのネタは放置する方向で。とりあえず、今後のことで相談あるからそっちも人数集めておいてくれ。すぐだろ?」
『各方面から集めておくわ。どうせ適当にやって詰んだとかだろ?』
「分かってるなら協力しろよ。」
会場が沈黙しているが気にしたら進まない。強引に薦めよう。
「とりあえず俺が勘違いで全滅させた俺の世界の代表だ。現実世界には居ないが、こうやれば話すことが出来るからな。今回は参加して貰うことにするよ。」
「一太郎殿のすることですので驚きませんが、便利ですな。」
『こっちの準備は問題ないぞ。視覚情報が無いからきちんと説明してくれよ。』
「とりあえず全員に俺が今までに体験したことを説明するわ。分からないことがあったら後でまとめて聞いてくれ。」
どこから説明して良いのか分からなかったが、最初からが良いだろう。端折っても良いことないし、一回冒険者になってまであれだったから。地球に居た頃のことから説明して、世界の改変、冒険者になりオリバーショックを起こしてしまったところまでを過不足無く説明した。途中で『勘違いで殺すなよ。』『ロボが欲しい。』『マジで嫁かよ。』『異種族増やして。』『人生の墓場にオンゴールw』『神様乙。』『自作自演で詰むとかw』『もぐとか無いわぁ~』『爆ぜろ。』『死ね。』『恐妻だな。』『これだからオタクじゃない奴は。』などスピーカーから聞こえてきたが会場にいた面々は九割方、目を見開いたままで言葉を失っていた。
『一太郎、確認だけどそっちはこっちをベースにしてシステム構築してあるんだよな?剣と魔法の世界でいいんだよな?』
「そうなるな。」
『ステータス画面あるべ、こっち基準だと筋力とかさ。おまえのステータスってどうなってるか教えてくれよ。』
「まあ別にかまわないよ。」
ステータスを上から教えていった。
名前:日ノ本一太郎
レベル:1
種族:神
体力:いっぱい
魔力:もりもり
神力:がっつり
筋力:かなり
敏捷力:めっちゃ
耐久力:すげー
知力:はんぱねー
判断力:ごるぁ
魅力:がつんと
運:どっぷり
『いろいろあるけど、なんで数値じゃないの?』
「俺に言われてもな。レベルはきちんと数値だし。ゲームとかってやったことないからさ。っていうか数値だと敵との戦力差がはっきりするから戦う以前に勝敗が決まることとかあるからじゃないの?面白味に欠けるしさ。」
『いやいやいや、それがあるから安全に戦えたりするだろ。こっちだと死なないとわかってても、安全圏か、許容範囲ぎりぎりでレベル上げとかするんだよ。こっちは初心者だと低レベルの敵のリスポーン待ちすらあるくらいなんだから。』
「そう言われても困るんだが、ティアラなんかわかる?」
「そうですね。」
『女神?一太郎、録音機材を実装しろ。今すぐに。』
「いきなりだな、なんでだよ?」
『メッチャいい声じゃないか。おまえは今すぐ死ぬべきだぞ。さあ実装しろ。それに視覚情報もこっちに寄越せよ。』
「そんなこと言われてもな。とりあえず録音機材は不許可な。俺の嫁だぞ。」
「一太郎、その話は置いておいてください。まずこの世界のステータスですが、元からあったステータスも改変後となる現在のステータスも同様に表記は数値です。私のステータスも数値で表示されていない項目もありますが、数値で表示されている項目もあります。このことから数値で表示されていない項目は上限を突破していると考えられます。」
『やっぱりいい声だわ。で本題だけど上限って何桁?』
「レベルは四桁、能力値の上限は不明です。私のステータスで数値で表示されているものでは五桁ですね。それ以下の項目はありませんしそれ以上もありません。」
ほかの奴にも確認してみるがショーンも基本的になげやりな文字列。魔神であるセバスチャンは四桁、勇者は三桁だと顔を赤くしながら教えてくれた。
『この中でたぶん標準の人間で、そこそこの強者ってやつは勇者ってやつなんだろうな。それで三桁なんだからさ。こっちの世界でも四桁が上限値だったはずだ。で桁が一つ違うとどうなるかっていうと、どんな攻撃も通らないってことになるか、最高クラスの技でダメージ1ってとこだ。基本能力値で、推定で最低でも六桁だともうチートとも言えんわ。桁数と体力だけで例えると勇者が一で、お前が百だろ。ダメージが1で固定だとしてもお前を殺すまで百回攻撃しないと駄目で一撃で死亡確定ってことだぞ。俊敏力も絡めると攻撃を当てることも出来んだろ。スキルとかもこっち基準か?』
「そっち基準だ。」
『もう簡単な対処では駄目だな。根本からいろいろ手を入れないと駄目なレベルだ。で、勇者レベルいくつ?あと、ちょっと相談するから明日の朝でいいか?』
「五十二です。」
「そっちに頼ることになりそうだから明日がいいなら明日だな。」
『じゃあまた明日な。こっちも実装希望のリスト用意しておくわ。実装可能だと思ったらやってくれると助かる。今回の情報料だと思ってさ。』
「ほかの面々もそれでいいか?」
寝ているショーン以外皆、頷いてくれた。
「では本日は解散します。」
セバスチャンの合図で解散することになった。セバスチャンは新しく名前が付いた妻とともに家に帰るようだ。ゲーテが元々作曲家の男性の名前から一部拝借したものだということは言わない方が良いだろう。それに歴史を漁っていけばゲーテという女性が居てもおかしくないだろうと、若干開き直って一太郎も家に帰っていった。
翌日は朝食の後再び大ホールへと集まる。一太郎も例外ではなく見るだけで違和感がある四階建ての建物へ入っていった。巫女OGの適応能力は凄まじく、この建物に居を構えてまだ一日も経っていないのになじんでいた。どういう教育を受けたらこうなるのかきちんと話を聞いておいた方が良いだろうと、子育てパパのようなことを考えていた一太郎であった。
「昨日居た全員が居るか分からないけど、主要な面子は揃っているから昨日の続きといこうか。」
そんな気の抜けた開始の合図をもって今日の話し合いが始まる。まぁこっちに打開策がないので話し合いというよりも元地球人の話を聞くことになるんだが。
『こっちでもいろいろ話し合ったら面白いことを言うやつがいてね。そいつの話を聞いてみることを薦めるよ。』
『ご紹介にあずかりました、ジョン=フラメンスです。私のことはジョンと呼んで頂きたい。地球では物理学を専攻しておりました。現在は真法学を専攻しています。こちらの世界で物理を研究する意味はないですから。』
「俺のことは一太郎でいいよ。」
『では一太郎それと勇者のお二人にいくつか確認したいことがありますので答えて貰えますか?』
「よほどプライベートな事じゃなければ何でも聞いてくれていいよ。」
「俺もかまわない。後俺の名前は、」
「お前の名前は今日からアーサーね。アーサー。わかった?全員、今日からこの勇者のことをアーサーと呼ぶように。」
「「「わかりました。」」」」
そんな受け答えの後、ジョンは本当にいろいろ聞いてきた。ゴブリン討伐のこと、こちらの世界の改変のこと、魔法の系統、文明レベル、社会文明の発展状況など、本当にいろいろ聞いてきた。何でも聞けと言ったことを後悔したのはこの問答が始まってから五分後のことだった。アーサーも細かく聞かれてかなり疲れているように見える。元学者なだけにいろいろ細かいことを確認してくる。確認だけで昼食の時間になり、中断するのも効率が悪いということで巫女OGに簡単に摘まめるものを頼んでそれを昼食とした。昼食が終わる頃にジョンの質問が一時中断した。考える時間が必要とのことなので中尉とそっちでの出来事など聞いてみる。中尉については俺が知る限り三等兵から元帥まで階級がころころ変わっている。あの研究室にいた面々は冒険者に必要不可欠な施設や組織のいろいろな役職に就いているらしい。中尉は国王になっているようだが呼び名は中尉のままなのはどうなんだろうか。連中は一通り楽しんだのでサポートに回ってくれているようだ。ゲームを楽しむよりも人とのふれあいの方が楽しいという中尉達の姿勢はこの手のゲームの醍醐味らしい。中尉が俺と研究しているときから好きなキャラクターを自分の嫁として実装して欲しいと懇願してきた時くらいにジョンから話を切り出された。
『まず最初に前提条件として他者と共有できるステータスの偽装が必要です。偽装ステータスの値は平均的な値がいいでしょう。種族もレベルも一般的なもの、平均的なものとして偽装します。そして今まで神という種族を隠してきたと思いますが、ステータスで確認できないものを信じる可能性は低いと思います。というよりも個々人や、モンスターにすらステータスがある以上、通常ごまかせないでしょうから正直に話しても信じて貰えないでと考えます。偽装ステータスがある以上自分たちの強さをそれに併せて日常生活を送り、必要であればそれを振るうと割り切ってしまうことの方が今後の活動において様々な可能性や選択肢の分岐発生率が高いと思います。それと現状の国や神域の配置では神域の周辺国の外縁部でモンスターとの戦闘があるということになりますが、戦闘範囲が広すぎて犠牲者が多数出るのは仕様となるでしょう。国内にモンスターが発生したとしてもそれ程の数まで増えないでしょう?国土が広がらない以上、人口密度が高くなることも国内に発生したモンスターの脅威度が上がらない原因になっています。国家の配置を変えてしまわない限りは解決策はありません。あとそちらにはないでしょうが、こちらでしたらモンスターを倒した際にドロップアイテムがいくつかあります。モンスター自身を構築するための核となる物と牙や爪、皮などが代表でしょうか。そちらでしたら自分たちでその部位を採取してそのまま使うという文明的に原始人と変わりない運用も問題です。錬金関係に分類されることになりますが、そのような専門家が加工すれば便利に使えるという仕様に変更した方がモンスターに対する好戦度も高まることでしょう。便利であればこそ使いたいと考えますから。』
「隠さない方が問題にならないか。案外そういうものなのかもしれないな、実際に街に出ていたときは周りの目を気にしていたこともあったし。」
『それと一太郎を含む地球からの面々はこの世界では異物でしょう。文化面でも知識面でも馴染んでいるとは思えません。外見を変更できるのでしたらそちらにも学校があるのでしょう?そこに入ってみるのも良いかと思います。学生としてでも教員としてでもどちらでも楽しめるかと思います。そういう方向性で楽しみたいとの要望でしたので。私は地球時代では愚かと思っていましたが、実際にこのようなファンタジーな世界に生きていると理解が深まるという実感があります。中尉陛下よりはファンタジーに対する造詣は深くないので、これ以上の提案は現在ではありませんね。あとの細かいことは陛下のお仕事ですね。』
「国王ってやること多いんじゃないの?」
『我が国の陛下は能力的には切れすぎるのであまり国策や政策に関わって欲しくないのが正直なところです。ひと月の間で一日程度仕事をしていただければこちらは問題ありません。陛下については個人の能力は趣味や趣向に左右されないという極端すぎるサンプルですね。』
『陛下っていうなよ。階級が二つとか微妙だろ。』
この会場にいる人間全てにとってスピーカら聞こえてくる声の主の呼び名について本当にどうでもいいことなのだが中尉にとっては譲れないポイントらしく中尉とジョンの意味の無い口論が続く。ティアラはなにやら考え込んでいるようだし、ショーンは持ち込んだ木材を削って何か作っている。ショーンはこちらの世界に来てから物作りに目覚めたらしいが、こちらの世界は文明レベルは以前の地球とあまり変わらないため何を作っているとしてもこちらの文明に影響を与えることがない。通常やってきた面々が文明レベルを無視して世界レベルで無視できない影響を与えてしまうというルートに乗れない。魔力を物質化変換してこの建物を建ててしまったセバスチャンくらいが先ほどのルートに乗れて問題になるくらいだ。さすがは魔王を妻に持つ魔神というところだろうか。
ぐだぐだな状態を何とかすべくスピーカーの向こうの連中に「また明日の朝に。」と告げてスピーカーの電源を落とし、他に議題になるものはないか確認する。巫女OGのが挙手して自分たちにも名前を付けて欲しいと要求してきたこと以外は話し合う事は無いようだった。巫女は神に操を捧げるといった地球にあった有名な宗教の影響を受けているらしく、神域に来る前の自分との決別という意味で新しい名前を要求してきた。代表者二名に、マリー、ニーナと名前を付け他の巫女OGの名前を任せることにした。




