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牛と歩む開拓史  作者: ぴえ
プロローグ的なあれ
8/13

歴史に名を残す人物

 歴史に名を残す人物とはどのような人物か?

 多数の専門家が一番気にする部分。結果があるのであれば結果に伴うだけの相応の理由が必要になる。だが、どのような理由なら相応しいのかを明言できる者は少ない。あの日歴史に刻まれた人物の偉業を歴史に残さないという選択はその道の専門家にはあり得ない選択だった。屁理屈を言うだけの意味を見いだせなかったというのが一番大きかったのかもしれない。見たら理解してしまうほどの存在感。その後生まれた歴史を専門とする学者は何故あのときに生まれていなかったのかを後悔した。その人物はハイヤードのお家騒動のあとに開催された五カ国会議において歴史上に産み落とされた。


 会議の前日ハイヤードの国王は困っていた。

 国王に就任したから三十周年だというのに、馬鹿だと思っていたオリバーが本当に馬鹿なことをした。ある冒険者が連れていた女性に目をつけたのが問題の始まりだった。冒険者とは自由を約束されている人種と認識するべきものだ。例え王である私にすら束縛する権利がない。保証を引き替えに自由を獲得したものが冒険者と呼ばれる者達なのだから。冒険者に惚れたのであれば言葉でアプローチすべきだ。強さを信条とする冒険者ならば言葉でなくとも自らの強さでこちらに目を向かせることも出来るだろう。オリバーはその女性が一緒にいた冒険者に惚れている、と無駄な観察眼を働かせた。その結果が騒動の原因となった決闘騒ぎとなる。国王である私は将来国王の候補となる者に近衛騎士をその功績に見合うように護衛に付かせた。その近衛騎士にすらオリバーが起こした騒動は被害を出した。まったく国王である私に対して恨みがあるのではないかと思える。決闘の結果はオリバーの敗北、しかも決闘を仕掛けておきながら相手の慈悲で生き残った。親としては生きていることに対して良かったと素直に思える。ただ国王としては王族の誇りを抱いて決闘という戦場で散って欲しかった。


 長男のノキオは途方に暮れていた。

 オリバーがとうとう問題を起こした。起きてしまったことは仕方がない。明日の会談では国家の首脳陣が集まる。通常の会談では開催国以外は代理人が参加するのが通例だが今回は国家の当主が自ら参加すると連絡を受けていた。確実に我が国の領土と利権を削りにかかるだろう。モンスターの襲撃が始まった新暦以降五百年以上国家間戦争は起きていない。人と争っている場合ではなくなったというのが一番大きい要因だった。国家間戦争が行われていた当時、大国とされていた国がモンスターの軍勢に蹂躙され一夜にして滅んだ、それ以外にも分裂や吸収を繰り返しての現在の五大国家であり、他の小さい国家と手を取りながら何とか戦線を維持している。だからこそ領地の奪い合いとなる戦争は起こらないが、難癖をつけて利権を得ようとする面倒な現状になっている。

 現在の五カ国会議は嫌みの言い合いとなっており建設的な意見は少ない。相手を貶しても自分が優位になると勘違いしている連中が多い。なにより能力的に期待できるレベルの人材でエリート意識が高い者ほどこの傾向にあるのも問題だ。問題の二名の冒険者とは先ほど話をつけた。一太郎とティアラに我が国に付くように用意依頼したが「パスだな。」と考える前に拒否された。明日の会議には当事者として参加して貰えるように説得するだけでかなりの時間を浪費した。報酬によっては多少協力してやってもいいとの一言を貰えなければほぼ詰んでいた。ティアラが一太郎に取りなしてくれたようで助かった。城で用意していた茶菓子の八割方を消費した分の利益は出たと思いたい。明日に備えて父に会いに行く際にメイドに資金を渡し茶菓子を買いに行くように命じておいた。


 次男のルターは城の医務室で治療を受けていた。

 父と兄が困っているようだったがおそらく俺の出番はない。政治についてはまったくわからん。数日前にオリバーが医務室に運ばれて行ったので面白そうだったので付いていった。オリバーを診察していた医師によると冒険者と決闘して負けたらしい。オリバーに向かって「生きて帰ってくるとは何事だ!今すぐ死ね!」と説教をしてやった。兄は弟に説教するものだ。そして兄は敵を討つものだ。ちょうど良いことに一太郎という冒険者は城に招かれているらしい。神に導かれているとしか思えない。一太郎は貴賓室で飯を食っていた。横に女がいたがまずは敵を討たなければ。しかし飯の邪魔をするのは人として間違っている。食べ終わるのを待ち、手合わせを依頼したら反射としか思えない早さで拒否された。兄の倫理を説明していたら途中で気が変わったらしく手合わせをする気になったようだ。素手のみでの手合わせとなり始まりの合図とともに一太郎は何か叫びながら俺を殴り、俺は気絶したらしい。横ではオリバーが寝ていた。オリバーは時折ビクンビクンしているので殴ってみたらビクンビクンが悪化した。


 他の国家の首脳陣は結託していた。

 ハイヤードの言い訳を幾多も想定して対処を考えており、今回の会談で奪う利益も各国で均等に割り振ってある。君主レベルだけではなく各国家の頭脳といえる臣下、主戦力となる兵を連れてきている。この会談で我々の負けはなく移動の際の費用ですらハイヤードに押しつけるつもりでいる。奪えるものは全て奪い、面倒事を背負い込んで貰う。



 ハイヤード国の王城、謁見の間において五大国家の全ての君主が出席する異例の会談が始まる。王座の前に置かれた五角形の机を挟み席に着いている。この並びは聖域を中心に各国の領地の位置を示している。玉座を背にハイヤード陣営、時計回りに、ハイランド、ハイフォード、ハイワード、ハイドリーとなる。この国々は全て公国で有り、また、一定の人口を超えると国家の頭に<ハイ>をつける風習がある。この風習は紛らわしいのであまり好かれていないが風習なので仕方がない。各君主の傍には側近や参謀、護衛が控えておりハイヤードの面々は緊張していた。まさか護衛役まで連れてくるとは思っていなかった。こちらは一太郎とティアラが手ぶらで参加しているだけで戦力といえるほどの兵はいない。しかもハイヤード王の年齢は四十歳、他の君主は全員男で二百歳を超えている。王としての経験も圧倒的な差があるのだ。こちらの用意した条件で納得して貰える可能性は限りなくゼロに近い。


 儀式的に行われる挨拶や前回の会談からの現状報告が済むと、ハイランド、ハイドリーから国土の移譲を提案された。その提案にハイフォードとハイワードが異議を唱えるが、国土の移譲には一切触れずに我が国からの輸出品の値下げと輸入品の値上げ交渉であった。モンスターとの戦闘によって手が足りない。ハイヤードの方からモンスターが入ってくる。ハイヤードの担当地域よりこちらの方がモンスターの強度が高い。その他にも理由はいろいろあった。領土と貨幣を寄越せと言われているとハイヤードの面々は理解している。しかし、領地にはそこで暮す領民も含まれる。国土が減ると国民も減る。それを許容できるわけがない。要求された領土はハイヤードの五分の二に該当する。人口がその割合で減ると戦力を維持できない。国庫の収支が合わなくなる。返答しながらもこの会談での立ち位置が悪くなっていく。


 ハイヤード国王は話を一度中断させるために今回の騒動のきっかけとなった冒険者を紹介する。紹介された一太郎は茶菓子をティアラと一緒に食い続けており、君主達は一太郎には注視せず、ティアラを一瞥してハイヤード国王に目を向けた。あまり興味が無いようだが護衛は一太郎をきちんと観察し鼻で笑う。護衛も無礼ではあるが一太郎の方が無礼であった。ハイフォードとハイドリーからティアラの引き抜きがあったがティアラ自身が容赦なく拒絶した。ちなみに一太郎とティアラの茶菓子がなくなったのはその頃だった。一太郎の参加条件は茶菓子がある間は会談に参加するということだった。王家御用達の茶菓子は珍しく美味しいものもあったので茶菓子を参加条件として要求していた。


 一太郎は困っていた。

 茶菓子がなくなったので帰りたいが途中退席が出来ないということを事前に説明されていた。ここに居る理由が胃袋の中に消えた。しかも終わる気配がない。


『帰りたいな。』

『そうです。お菓子もなくなりましたし。』

『っていうか男の比率が高くてむさ苦しいし、他の国の王様が油ギッシュであまり視界に入れたくないな。っていうかメイドさん以外全部男だし。』


 護衛の中に女性が居てもおかしくないような気がしたけれど、今回はゼロでした。茶菓子の匂いが消えると男子更衣室みたいな匂いが漂ってくる。匂い移りが気になるので何とかして退出したい。


『そういえば嫌らしい目で見られた気がしました。』

『なら死罪が妥当ってとこか。』

『ここですると面倒ですから後でということになりますね。』

『お約束的には美味しい状況なのかな?』

『打開策があれば多少ってことですね。でも今はただ居るだけですから。何か発言してみます?』

『ん~、なんか暇つぶしになるようなことでも考えてみるわ。』


 というか護衛の中の数人がティアラを見ている。なんというかあまり面白い状況ではないな。ティアラを見ている奴と目が合うと鼻で笑われたことが分かった。


「人を鼻で笑うのは失礼だとおもうけど、それくらいもわからないのかな?」


 会談の途中であったがふとそんな言葉を言っていた。誤解だがカモにする国の陣営の冒険者風情に自分たちが有利な話し合いを邪魔されて嬉しいわけがない。目が合っていた護衛が笑いながら俺に返答を返す。


「王の話し合いの場で身分の低いものが水を差すのは失礼ではないのかね?」

「お前も喋ってるじゃないか?お利口さんぶらないで正直になれよ。こっちは油ギッシュな面を眺めているだけで結構きついんだから。暇ならお前の王様の顔でも拭いてやれよ。」


 確実に自分より年下に自分に正直に生きるように諭してみた。ティアラは顔を背けて笑っているね。正直に生きると笑える人生になるんだぞ。なんかみんなしてこっちを見てるね。もしかしてやっちまったか?思わず、名言残しちまったか。長く生きていると含蓄ある言葉を残してしまうことが多いからね。ほら王様に耳打ちしてないで会話を楽しもうか?


「王の許しも頂いた、お前らはハイヤードに所属しているわけではないらしいじゃないか。ならばここで切り捨てても問題は無い。それに冒険者は生きる保証を受けていない者達だからな虫を潰すようなものだ。私はこの虫をここで潰すことにするが異存のあるものはいるか?」


 どうやら名言を残しそびれたらしい。ムカつかせただけだったのか。五カ国に所属する全員が沈黙を返して成り行きを見守っている。ティアラはまだ背中を向け声を殺して笑っていた。典型的なやられキャラだしな、特に発言と沸点の低いところなんてさ。軽めで済ませてあげましょうね。


「とりあえずなのっておいた方が良いかな?俺は一太郎。冒険者だな。で君は油ギッシュな腰巾着さんと、他の剣を腰に下げてる奴は不参加かい?何人でもいいよ。暇だしさ。」

「言うに事欠いて貴様一人など一太刀でどうとでもなることもわからんのか。」

「そういうのをダラダラやるのが面倒なの。人の女をやらしい目で見られるのは気分いい話じゃないでしょ。自分だったらやられて嬉しいのかい?」

「だったら、お前の女とやらを」


 言い切る前に殺そうと思って踏み出そうとしたら、パチンと音がする。後ろで指を鳴らした音がした。振り返ると、


「私はそのフレーズを言う男は嫌いなの。一太郎以外に興味は無いしね。」


 俺を含め会談の参加者全員の沈黙。女は怖いということを嫌というほど醸し出している。その怖い女は俺の腕に自分の腕を絡めてきた。今のは結界を張って中の時間を止めた感じかな?警告も無しにいきなり制圧という行動はお約束からかなり外れている行動だと思うけど。


「とりあえず会談の続きでもしようか、仕切り直すけれど以前と同じ状態を維持するように。異議があるなら何か言ってくれ。ないね。じゃあ今度面白い女でも紹介してやるよ。」


 気を取り直して会議を終わらせる。返答できるはず無いわな。静止しているわけだし、一人納得しながらハイヤードの連中を押し出しながら部屋を出る。ハイヤードの皆様の目が冷たいな。俺が主犯格みたいじゃないか。


「一太郎、いったいどうするつもりだ。」

「いいじゃないの王様。茶菓子をケチった王子様もそんな目で人を見るもんじゃないぞ。気楽に任せておきなさいよ。あと飯の準備しておいてね。」


 国王は背中を向け去って行く。そうそうご飯の用意をしに行くといいよ。


「なにをどうするつもりなのか聞いても良いのか?」

「なんだよ王子様、親父さんみたいに飯の準備しておきなよ。この国の王族は痩せすぎだから。食べないと成長しないって、他の国の連中はかなり太っていたけどそれなりに貫禄あったぞ。」

「私たちはきちんと食事をしている。それに父は呆れて出て行ったんだ。まったく。この現状を誰かに見られでもしたら国家間の戦争が再発することになるんだぞ。もう知らん、任せても良いか?」

「話し合いは自分も参加しないと暇でね。さっきのあれは俺からすると拷問だったけわけだな。任されましょう、最善を尽くすよ。」


 とりあえず会議を終わらせることには成功したな。あとは俺のご都合主義だな。


「あなたの立場はどうでも良いのだけど一太郎には敬称をつけなさい。私にもね。」

「あのティアラさん、俺は別に気にしないけど。」

「私は嫌なのよ。だってどこの王族も基本的にモブでしょ?呼び捨てにするようならあまり好印象じゃないし今後出てこない可能性が高いわ。どうせ、ストーリーの進行上仕方なく出てきた数あわせでしょ。その程度のモブに呼び捨てにされるってどういうこと?」

「王族に対してモブ扱いはどうかと思うが、今後は敬称をつけることにしよう。」

「俺もその方が良いと思うわ。」


 微妙な空気のままノキオは去って行った。お笑いの巨匠に路線変更を言い渡された若手芸人のような雰囲気を纏っていた。ああいうのは芸名を意味が分からないのに変えたり、巨匠からもう流行らない昔のネタの強要をされたりするっぽいし。大丈夫かね?


「そういえば女を紹介するって言っていたけど?」

「言ったねぇ。ちょうど良い感じに暇そうな女性が居るから紹介しておこうかな。他の国の王様達は女好きっぽいし。期待を裏切らない程度にはやらしいでしょ。」


 メイドさんに話を通して彼らに紹介する女性をドレスアップして化粧を施した後で連れてきて貰うように手配する。あとビデオカメラと撮影賞のスタッフもついでに用意して貰う。ついでに国王も呼んで貰おう。


 一時間後にさっきの会議が行われていた謁見の間の前で国王と落ち合う。国王直々に飯の用意が出来たことを教えて貰った。飯の用意云々を除いても合流場所として謁見の間の前で待つ国王というのは微妙な感じだな。国王には先に撮影機材を持ったメイドさんと一緒に謁見の間に入って貰った。王は玉座に、カメラは玉座の横にセットしておく。撮影準備も整い紹介する女性も集まった。さて祭りの始まりだ。


 ティアラに言って全く動かない国王達を言葉を発することが出来ず四肢のみ動かない状態に緩和して貰う。


「さっきの約束通り貴方たちに女性を紹介しよう。」

「・・・・・・・・・」

「では、どうぞ!オリバー夫人とオリバー夫人同盟の皆様です。」


 つばの広いフリルがふんだんに使われた黒い帽子を深く被り、覗く口元には真っ赤な口紅。首元には首の太さを緩和するためのレースのチョーカーを天然物の髭とマッチするように装備、逞しすぎる胸元にはこれまたレースを使ってある大胸筋矯正サポーターが胸毛をもり立てている。大胸筋矯正サポーターを包み込むのは漆黒のボディーラインを強調するかのような絹仕立てのマーメイドドレス。もちろんヒールはピンである。あちらの世界にはあってこちらの世界にないものを先ほど発見した。去勢し女性へ生まれ変わった男性。つまりニューハーフだった。とある事情によりやむなく去勢されたオリバーを含む彼の部下達は全員ではないが少なくない程度の数が次のステージに昇華することに成功していた。内面は女性へ変貌。SM表記はMへとシフトした。オリバー侯はオリバー夫人へと変貌を遂げていた。夫人ではないのだが、インスピレーションにより夫人(婦人ではない。)と俺が勝手に命名した。部下の人達も夫人がいいと主張してきたので彼ら全体を夫人と括り、とりあえず全体を夫人同盟とした。代表者はオリバー夫人なので、オリバー夫人同盟となる。歴史に名を残す人物オリバー夫人の誕生の瞬間であった。


 夫人達は夫人となっているが夫が居ない。そして、夫を求める傾向にあった。ちょうど良かったのだ。面倒な国のお歴々に夫人達を解き放つという行為は。この正解では外見で年齢を推測することは出来ない。生まれて二十歳程度まで成長しそこで成長が止まる。そのまま二百五十年くらい若さを保つことになる。その後は普通に老けていき寿命を全うすることになる。金持ちのスタータスは感覚的に中世が基盤となっているため権力者は体格的に豊かになっていく。外見が二十歳なはずなのに、どう見ても五十代の油ギッシュなスケベオヤジというレアな外見をしている。そして夫人もレアである。同じ穴の狢。同族嫌悪よりマシだろう。マゾで肉食系の夫人達はタフすぎる微笑みを浮かべてまるまると太った獲物にキャットウォークでしなしな近づき、そして捕食していく。俺とティアラは見たくないので紹介したあとでさっさと謁見の間を出て扉を封鎖した。


「一太郎、用意されたご飯を食べて帰りましょうか?」

「そうだな。それじゃメイドさん案内よろしく。」

「かしこまりました。お二人ともこちらへどうぞ。」


 食後に聞いたメイドの話だと玉座に固定しておいた国王は開始数分で血を吐いて気絶したとのこと。(ハイヤードの面子は餌食にならないように事前に夫人方に説明しておいてあった。)謁見の間に残された会談の参加者は、おそらく全員自力では立ち上がることも出来ないほど衰弱するだろうとの推測によりハイヤードの護衛によるそれぞれの国への運送計画を練っているとのこと。そんなやりとりのあった翌日王都を去りホームの街へと帰ることにする。実際にはこっちにいた時間の方が長いのだが、王都ではおそらくお約束のイベントはもう無いだろうとティアラが言い出したので素直に従うことにした。家に帰らない限りどこに居てもあまり変わりが無いということは気にしても駄目だと思うわけだよ。一般的にはホームとなる街の宿からその街か、それより少し栄えた街、出世して王都に家を買うプロセスを最初から無視しているわけだし。どこに行ってもアウェー感が半端ない。


 この出来事によりいろいろと問題が出たが、オリバー夫人の出現やオリバー夫人に関わること、というインパクトを超えることはなかった。精々が箇条書きで一文ずつ教科書に載るかどうかというところだ。変わったことといえば、ハイランドとハイドリーが王家の血統を残さぬまま王が自国を無断で出奔し、次期国王を種に権力闘争が悪化。それにより両国は最終的に崩壊した。それに伴いハイフォードとハイワードも国王がいきなり引退を発表し、それぞれの息子が後を継ぐが若さ故に臣下を掌握できず内政が悪化し国力を大きく落とすことになる。ハイヤードは国王が悟りを開き全てに達観したため、息子であるノキオが悟りを開いた国王に大司祭とい役職を用意し持病となった吐血を理由に、神殿へ移籍させ自分が王を引き継いだ。大司祭は持病の吐血と睡眠時に見る悪夢のため窶れていったが日々神殿に訪れる人々に理性と常識、倫理観の大切さを必死に、本当に必死に全力で説いた。新国王のノキオに対して同様に国王が替わった二カ国同のように国を傾けるのではと不安に思っていたが、新国王のノキオは元ハイドリーの国土を吸収しその地に残っていた元ハイドリー臣下を自国に採用し国土を広げる事に成功する。ノキオを知る人物は、「ノキオ様はある日を堺に人格が変わったかのように変貌を遂げた」と残している。ノキオの王位継承後、一般公開された演説の中で「私たちは私たちの人生において各が主役なのだ。決して脇役などではない。」と力強く発言し多くの国民が共感し涙した。ノキオは国民から絶大な信頼を得て愛されるようになった。なお、国名にハイをつける風習を小馬鹿にしたからか国名をヤードに変更した。もともと国土で言うと最大の大きさを誇っていたのに、もう一カ国吸収して他国からの文句を言わせない程度に国力を上げたことを国内外に証明したことにもなった。証拠としてはどこの国からも文句が出なかったことが証明とだろう。オリバー夫人が関連しない部分ではこの程度のことだ。


 オリバー夫人達は謁見の間で心理的に新境地に達した後、その日の内に現実的、土地的な意味での新境地を求め総勢五十名を満たない数で国を出る。(「夫人の自分探しの旅」より抜粋)


 安寧の地を見つけることは難航し偶然寄ったハイランド崩壊に居合わせる。内乱が勃発したハイランドであえて分類するならテノールよりはバスに近い地声で争いをやめるように歌い平和を求めた。前線の兵士達は最初、腹に響くこの低音の原因を探るべく戦闘を中断。オリバー夫人達を発見し戦意を失い、武装解除の後投降した。中には敵対姿勢を崩さない兵士も居たがオリバー夫人の強すぎる熱い抱擁により恥も外聞も捨て、助命を嘆願したのち投降する。オリバー夫人達は投降した兵士を引き連れハイランドの全土を巡り困っている人を助けつつ、まだ消えぬ戦火を低周波音波振動兵器の領域に入った歌声とアイアン・メイデンよりも拒否したい抱擁とで次々と消していき、夫人達は一国をまとめ上げた。(「夫人による愛と歌の奇跡」より抜粋)


 夫人達の台頭はこの世界において特異な例となった。同性愛は禁忌にあたるとされているため婦人誕生後人々の風当たりは厳しいものがあった。その後のお告げにより夫人達は存在を一代に限り認められる。夫人達は今まで女性の境遇に思いを巡らせ、女性の地位向上を訴え始める。これにより当時行われていなかった女性による茶話会、ダンスパーティー、パジャマパーティーなどが大衆化し他国へも影響を与える。この出来事は<夫人宣言>と呼ばれる。女性の行動がある程度活発になると夫人達は自分たちへと目を向け始める。婦人たちは子供を残せないということに心を痛めていた。次の世代へ命を繋ぐことの出来ない生き物。自然の摂理に反しているが神によりその存在を許されたが歪な者達。ならば育成に助力しようということになる。後の歴史に唄われる<夫人の涙>と呼ばれる出来事であった。乙女の涙後、夫人達による妊婦へのサポート、新生児の衛生管理、育児に疲れた母への精神的なケア、父親の立場からの育児へのアプローチなどを熱心に行い人口は爆発的に増加し、子供を持つ家庭では不和が消え始めていた。また夫人達は持ち前の身体能力を生かし前戦でも活躍した。その勇猛な戦い振りから<戦夫人>と呼ばれモンスターとの戦闘により局部を負傷した男性に対してのみ自分たちに加わるかどうかを聞いたという。それ以外では積極的に婦人に加わることを拒否し続け。夫人の涙以後、ある時を堺に夫人達はその存在を消した。夫人達の残した功績はあまりに大きく婦人と直接の関わりを持った女性は尊い夫人達の功績を称え<貴夫人>としその呼び名は国中に広がる。夫人の活躍中は国名はハイランドがそのまま使われたが、夫人達の姿が消えた後、夫人達の精神的支柱となっていた代表のオリバーが国名となる。民主主義国家オリバー誕生の瞬間となる。国家の代表はオリバーと制定された。国家の名前変更を他国に連絡した際に歴史には残されていないがハイヤードの大司祭が大量に吐血し生死の境を数日さまようこととなる。


 なお、親は息子に対して「貴夫人のような高い志を持ちなさい。」という言葉を言っても「あなたも貴夫人になりなさい。」とは間違っても言わなかった。貴夫人になるには前提の夫人になる必要あり、夫人になるには息子の息子をもがねばならないからだ。

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