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牛と歩む開拓史  作者: ぴえ
プロローグ的なあれ
6/13

冒険者っぽく依頼を受けようかと

 怪我の一つも無く街に帰り、街に入るための税金を払い宿に戻り飯を食う。街から帰る者達の通常のプロセスをこなして眠りにつく。身体能力がどうだろうがこれについてはあまり大きな違いは無い。英気を養うために酒を飲む、商館に行く、武器屋防具のメンテナンス、風呂でのんびりなど多少の差はあるものの常識の範囲に収まる。


 翌朝、朝飯を食べギルドへ向かう。満腹だと心にゆとりがある。街の風景も中世ヨーロッパといった感じでのんびりとした気持ちにさせる。昨日はただ狩りに行ったので依頼をこなすという冒険者デビューは今日が初めてになる。俺は昨日の戦闘のせいで武器も防具も全滅していたのでランニングに短パンという覇気の無い服装をしている。ティアラと並ぶと俺はどう見えているんだろうか。別に気にならないと結論づけギルドに入ってしばし眺める。受付の横の掲示板にA6サイズの紙に依頼ナンバーと概要が書いてあり、掲示板の横の棚に依頼の詳細がファイルに入って置いてある。掲示板と棚の手前には机と椅子が多数有り、そこで受ける依頼についていろいろ調べている冒険者の姿がある。昨日貰った冊子の情報を参照すると、掲示板を見て依頼の品定めをしてめぼしいものがあればファイルを参照して依頼を受けるかどうか決める。受ける場合、受付に行き手続きをし、完了させたらまた受付へ行き報酬を貰うという流れだそうだ。基本的に早い者勝ちで、複数のパーティーで受けても問題ない。受付の仕事量が低く、接点もあまりないため定番の女性受付員の必要性があまりなく、男女比は半々くらいだ。もちろん女性受付員も居るのでそこには多少列が出来ているがほとんど事務的な会話しか無い。


 貰った冊子の内容と違いが無いことを確認した後、早速掲示板を見ると赤線で囲まれた中にいくつか紙が貼られている。赤線の中の依頼は定番の急ぎの依頼というものだ。あまり興味を引かれない。冒険者デビューに相応しいのは薬草などの採取と相場が決まっているからだ。探しても見当たらないので、受付に聞きに行くと採取系の依頼は疫病が蔓延する時以外は無いらしい。採取依頼というのは基本的にモンスターの特定部位を討伐後回収と認識されているんだと。男性の受付は人気が無いようでいろいろ説明を受けたが誰からも文句が出なかった。


 俺たちは身分証を提示して、昨日退治した分の報酬を貰うついでに説明を頼んだ。ついでに初日に演説していた奴の遺髪や遺品も受け付けに渡してある。受付がきちんと背筋を伸ばして座り本格的に説明を始める。


 まず、国には王族が君臨してその下に貴族が居る。さらに貴族の下に国立騎士がいる。王族には近衛騎士がおり、王族は貴族に土地と国立騎士を爵位によって規模は違うがそれぞれ与える。近衛騎士は王族を守り、国立騎士は貴族が統治する土地を守る。国立騎士は一般人から自分の部下にするための一般兵を募集し騎士団を形成する。騎士団は国立騎士の給料によってまかなわれるので国と貴族からの給料により数の上下がある。騎士団は門番から街の中の治安維持モンスターからの防衛、街道の巡回などがおもな仕事になる。近衛騎士は実力主義、国立騎士団は血統により構成されているそうだ。貴族もどきの国立騎士よりも騎士団の一般兵の方が戦力的には上だが元が一般人のため教練されている分強くなっている程度とのこと。


 国立騎士は血統で組織されている貴族もどきなので、見栄えの悪いことや失敗しそうなことには手を出さない。騎士団では対処しきれない、手が足りないという部類が依頼という形になりギルドへ委託される。民間からも依頼はあるが依頼となると報酬が必要になるので、民間も最初は街の上役などに直訴することが多い。直訴しても解決できない場合は報酬を払ってでも依頼する人も居る。キルドの依頼は基本的に残飯処理。その分依頼は少なくなるはずだがモンスターの討伐依頼が多いので人手が慢性的に不足気味で依頼の解決数があまり良くなく、高給であるモンスターの討伐依頼は報酬に比例して死亡率も高いのでやはり人手不足となるらしい。ただ、一攫千金や騎士団への手土産に冒険者を目指す人は多いので定員にはとどかないが補充は出来ているそうだ。国からのしがらみを嫌う人も冒険者となるそうだ。冒険者には国に尽くす義務が無い。完全に自由を得ているが、街への出入りなどに税金がかかる。税金を払ってでも面倒を回避したいためにギルドに登録だけして普通に暮している人も居る。


 このままでは建国以来からの歴史も説明されそうで、簡単にまとめてもらった。

 ・採取依頼は、モンスターの素材集め。

 ・護衛依頼は、街から街への護衛。依頼期間の依頼主の護衛。

 ・討伐依頼は、指定地域のモンスターの討伐。危険度の高いモンスターの討伐。

 ・捜索依頼は、行方不明になった人の捜索。

 ・特殊依頼は、前の四つに分類されないもの。


 なお、適当にモンスターを討伐した、退治して死体も持ち込んだ場合、数や種類によっては採取依頼や討伐依頼を達成したということにギルドの方でするらしい。これはギルドがきちんとお仕事してますよ、機能していますよと周囲にアピールするためらしい。また、ギルドも資金を稼がなくては維持できないので、できる限り報酬を依頼主からつり上げるなどの努力もしている。冒険者にも依頼をこなして貰えるようにサポートしたり準備したりしているとのこと。ネットカフェの料金体系に近いものがある。


「一太郎さん、ティアラさん報酬が届きましたのでギルカと一緒にお返しします。」


 ギルカとはギルドの身分証のことだ。略し方がムカつくが皆そう呼んでいる。自分からそう口走ることは無いと信じたい。男がギルカとドヤ顔で略しているこの光景はかなりメンタルを削る。依頼を受けるはずが無駄に疲れた。


「でいくらくらいになったの?」

「依頼に合致する部分がいくつかありましたのでお一人当たり一万七千ゴールドくらいですね。」

「新米にしてはいい稼ぎなのかね?(百七十万円か、剣と防具を必要経費としても稼ぎすぎたか?)」

「討伐としては破格ですが、貴族や王族の護衛依頼よりは額としては低いですからね。」

「じゃあ、今日はもう帰るわ。」

「あのですね。アーノルドさんの遺族にアーノルドさんの死亡を報告しました。そして遺族から別に報酬と遺体発見時の話を聞きたいそうです。そちらに向かってください。発見者の義務というやつですね。」

『あなた、フラグが立ったんじゃないですか?』

「今日じゃ無いと駄目なの?」

「まだ、昼にもなっていませんので、それに討伐報酬の出所なのでギルドとしては今日中に済ませて欲しいと思います。お泊まりになっている宿のことはこちらから連絡しますので、夕方くらいに迎えが来ると思いますよ。」

「はいよ。じゃあ帰るわ。」


 妻は報酬の額よりもフラグがったったのではないかと先ほどから笑顔だ。冒険者であれば報酬の方に意識を向けて欲しい。こっちが冒険者気分を味わおうとしているのにフィクションだということを問答無用で押しつけてくる。妻じゃなければ剣の錆にするところだ。まだ剣を買い直してないけど。


「フラグが立ったのかどうかは、夕方の楽しみとしてひとまず置いておこうよ。」

「わくわくしますね。」

「ひとまず置いておいて、さすがに遺族に話をする時にランニングに短パンだとあれだから装備を揃えたいんだけど。」

「馬鹿にしているような気がしますね。その服装だと。」

「でも必要も無いのに防具を買うのって無駄だよな。」

「武器は必要になるかもしれませんけどね。防具は必要ないでしょうね。防具というよりは服のような感覚でいいと思いますよ。」

「次の武器は何にしようかね?」

「剣でしょうね。こういう物語の英雄が持つ武器と言えば剣でしょう。大きさは片手剣と大剣の中間くらいですかね。」

「そこら辺も任せるわ。」

「任されました。」


 女性との買い物は気を遣うから任せておけば良い。なお、全部任せるのは絶対良くない。理由は全て任せると相手がこっちが買い物に興味が無いと分かってしまうから。男としては適度なタイミングでの相づちと、究極の難問「どっちがいいと思う?」に備えなければならない。「どっちがいいと思う?」の対策としてはこちらに提示する前段階で、先に見ていた方が当たりの可能性が高い。可能性が高いだけで絶対では無い。「どっちもいいが、強いて言えばこっちかな」と言った後に間髪入れず、「じゃあこの服に合う君の服を選びに行こうか」が正しい選択肢では無いかと思う。このノウハウは洋服を買いに行くときのもので鎧を買いに行くときには全く役に立たない。


 結局、胸当てが金属製で他が革製の鎧とガントレット、すね当てとブーツを購入した。ティアラが放った究極の選択肢についてはいくつか返答を間違ったがフラグが気になるのか大事にはならなかった。剣については二刀流がいいとの主張をされ続け、両手剣を二本購入した。昼食の時間になったのでデート感覚で外食をするという話になりこの町の中央広場に行き露店を巡る。異世界物のお約束である地球にはあったがこちらにはない食材というものは全くない。インスタント食品、缶詰。野菜に魚にフルーツから穀物すべてある。料理も和洋中とそろっているので中世の町並みの現代という感じも俺の異世界感覚をガリガリ削る。結局のところ、食べる物と強さ、資金があればどんな世界でも困りはしないということなんだろう。きっと冒険者デビュー数日で至ってはいけない真理に至ってしまったような気がした。


 昼食後に防具の下に着るインナーと部屋着、甚平、服をいくつかと下着を俺の分とティアラの分を購入した。今日の買い物で一番高かったのがティアラの下着であったのは俺の男心がそうさせたと言うしかない。


 夕食を済ませたあたりでアーノルドの遺族とやらの迎えが来た。さすがに自家用車などは無く、ファンタジーお約束の馬車だ。二頭引きのこじんまりとした馬車だったので二人して「馬車だな。」という感想しか無かったが。いわゆる<お約束>の展開であれば、この後は貴族とのあまり気の進まないネチネチしたやりとりが始まるのかと思いながら溜息が出る。身体は青年、中身は老人の俺からしたら狩りでもしながらのんびりしたい。

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