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牛と歩む開拓史  作者: ぴえ
プロローグ的なあれ
3/13

準備しないと

 どうにもならないことは考えないようにして説明を受ける必要がある。これ以上問題が増えるのは得策ではないな、下策も良いところだ。出来ることはさっさと済ませ、出来ないことは出来るまで放置するか、出来る奴にやらせる。故人になった神様よ、凡人にあまり期待するな。


 家を出て近くの原っぱで説明を聞くことにする。ジョーンと俺のフェイバリットスポットである。

 ティアラの説明は堅苦しく専門用語っぽいものがあったので全力で端折る。この地球(ティアラ曰く終の世界)が異世界と吸収合併すると次のようになる。


 ・双方の世界一般の技術、知識、文化などが齟齬なく摺り合わされる。

 ・言語、単位などは吸収する世界の方に優先権がある。

 ・摺り合わせられない固有な要素はロストテクノロジーとしてそれぞれに住む霊長に託される。

 ・世界という単位は生物が生存活動するにあたり必要最低限の構成材料とされる。


 他にもいくつかあったがこれだけのことを四時間近く説明された。実際に試さなければ理解できないところがあるだろうということで現在休憩中。今更ながら俺以外が全裸ということで服を取り出して各自に着るように言うとまた問題が出る。


「一太郎は魔法が使えるのですか?こちらには魔力がないはずですが。」


 こっちでは常識でも何もないところから服を出されるとそれは驚くだろうさ。さっきまでこっちが驚くばかりだったけれど今回は逆ですかね。この世界のことを説明することになるのか。とりあえず端末を三つ取り出して自分以外に配る。


「これは魔法じゃなくて技術。この端末があれば誰でも使える。それと物資はこの中に入ってる。収納したいものを見てスキャン、触れれば収納できる。必要になるだろうから各自持っているといい。どうせ在庫はまだまだあるし。その中に今日までのこの地球での記録も入っているからそれも見ておくといい。」


 全員が納得するまで時間がかかるだろうし、一服でもしますかね。年齢ですか?三桁ですよ。たとえ、未成年でも国も法律ももうないですけど。未成年って概念自体がもうないのか。

 原っぱに寝っ転がり、缶コーヒーと煙草を取り出して火をつけ吸って吐き出す。最初は吸い方がわからなかったな。などと思いにふける。魔法が使えるのですか?ってことは魔法が使えるのか。信じがたいが実際に見たら疑わしくてもどんどん信じて消化していかないとやっていけないんだろうな。ま、今は缶コーヒーと煙草があれば困ることはないし。二十分くらいたったな。煙草は五本ほど吸っただろうか、一本四分程度なので時計を見なくてもだいたいの経過時間がわかる。愛煙家の嗜みですね。さわり程度であれば皆理解しただろうし。わからないところは教えてあげないと今後困ることになるので声をかける。


「早いかもしれないけど、わからないところがあるなら聞いてくれていいよ。」

「ではもう一度聞きますが、一太郎は魔法が使えるのですか?」

「だからこれは技術だってば。」

「主様私も使えませんぞ。ノエルも同様だと。」

「一太郎、確かめる意味も含めて先ほどの続きをしたいと思いますがよろしいですか?」

「それで納得できるならその方が早そうだしいいよ。」

「では、ショーンさんをノエルが、私が一太郎を。」


『聞こえますね?』


 ティアラの声がする。


「聞こえるけどこれ何?テレパシー的なやつ?」

『質問は後で、チュートリアルを開始します。』


 口に指を突っ込まれた瞬間に世界が暗転。周りを見渡しても誰も居ない。上からティアラの声が降ってくる。


『そちらの声は現在聞こえません。これは仕様ですのであきらめてください。私自身、こちらの世界に合わせ言語の最適化が終わりました。これからは会話が楽になると思ってください。』


 それは大切でありがたいけれど現状の説明が後回しになってませんかね?あと前歯が折れるかと思いました。


『まずやって欲しいことがありますのでこちらの指示通りに実際にやってみてください。正面に自分が居るというイメージを思い浮かべてもらえますか?』


 自分が居るイメージね。最低でも毎日鏡を見るからイメージは楽にできる。ほら出来た正面に俺が居る。朝鏡で見たとおり寝癖がひどい。

 正面にいる俺のコピーが近づいてきて見るからに金属だと思われるプレートを差し出してきた。金属プレートにはなにも映っていない。受け取らないと駄目なパターンだな。「受け取ってみるか。」と言って俺のコピーを見るとコピーは苦笑いしていた。なんとも不思議な感覚だ。

 金属プレートを受け取ると最初からそうであったかのように手形が表示される。直感的に手を合わせろということだとわかる。金属プレートに表示された手形に手を合わせると世界が復帰した。目の前にはティアラが居る。


「無事にチュートリアルを開始できるようです。」

「そりゃどうも。」

「先ほど渡された物をイメージできますか?」


 そう言われ思い出すと目の前にゲームでおなじみのメニュー表示が出た。人類を避難させたゲームのものに近い。


「その表示を見ながら説明を聞いてください。その表示が今後必要になるあなた個人のトップメニューとなります。それはあなたにしか見えていませんので誰かに覗かれる心配はないですよ。」

「いきなりゲームっぽくなったな。案外俺もゲーム脳というやつなのか?」

「最適化された証拠ですよ。こういう表現の方がわかりやすいでしょう?」

「確かにな。ティアラの口調も前よりはいいと思うよ。」

「ではステータスの中のスキルの項目を開いてみて。さらに所持スキルのタブを。」


 どうせやるなら前向きに、ゲームだと思えば楽しめるだろう。俺だけ避難先のゲームに参加できないのも悔しい。表示されたステータスの中のスキルの項目を表示する。一面文字の海。めちゃくちゃ多いな。マスターするのにどのくらいプレイすればいいんだろうか?とりあえず所持スキルと。


<空間魔法☆><四大魔法☆><変性魔法☆><創造魔法☆><偽装☆><不死☆><肉体☆言語><肉体改造☆>


「それが一太郎が持っているスキルです。所持スキルの中に魔法とつくものがありますか?」

「あるね。(☆が付いている意味はなんだ?あと肉体言語の☆の場所!!)」

「では、スキル一覧に戻って初心者セットを取得してください。」

「とらないとまずいの?(こういうスキル取得方のゲームは好きじゃないんだけど。)」

「合併したあとの世界では必須ですね。これがないと人として扱われません。化け物や動物と同じ扱いですね。私の夫は動物と言うことになります。」

「あいあい。とりますよ。妻帯者ですからね。」

「あとのことは見れば分かると思いますのでメニューでも見ていてください。では、私も自分のチュートリアルを始めますね。」


 確かに動物扱いは困る。ここは素直に取っておこう。言われたスキルは一覧の一番上にあった。では、初心者セットをポチッっと。思考型のインターフェースなので実際ポチッと押す必要なはいんだが気分的には押したい。ポチッとすると文字が反転した。取得すると反転するようだ。取得したがアナウンスもなければファンファーレもない。酷く不親切なメニューだ。ログくらいあれば良いのに。確認するためには所持スキルで見比べるしかないんだろうな。所持スキルを表示してみると増えた項目が太線表示になっていた。しばらくすると元に戻ったが案外ユーザーに優しいのかも。


<自己証明☆><スキル取得☆><能力値取得☆><身分証明☆>


 新規に追加された項目がこの四つだった。要はポイントの割り振りで強さが決まるというわけですか。均等に割ってオールマイティーか極振りで特化型とかかな?レベルアップで振り分けポイントが増えるとかだな。能力値はスキルで左右されるとかあるんだろうか?ゲームならスキルの取得条件に能力値が関わっているが多そうだ。システムを考えるのは楽だがやらされる方はたまったもんじゃないな。

 適当にスキルでも取っておくか、定番の片手剣とかだよな。あって問題ないものを最初の一つにするのは初心者の美徳だ。ポチッとな。押した瞬間にメニュー内にダイアログが出てきた。ダイアログには「初心者セット以外、ポイントを使用した強化については合併後使用可能となります。サービス開始までお待ちください。」ゲーム内のチュートリアルが終わってない時点で選べないメニューを選んだときと同じ表示だった。ここまで似せる必要はあったんだろうか。わかりやすいけど。分かったことはこれで自分を強化していくということだけだな。見る分には自由だからシミュレートしておくのも悪くないか。じゃあ、一服するかね。缶コーヒーと煙草を取り出し、煙草に点火。


 煙草は先端に火をつけないと燃えない。ライター使ったことなかったな。ってことは魔法使ってたっていうことか?

 そう思ってしまったら、実験してみようと思うのは仕方ない。煙草を手に持って小さい火ををイメージ。煙草の先端に火が現れる。魔法よ、案外身近にあるものなんだな。魔法で火を使えるなら飛ばしてみたくなる。火の魔法であれば攻撃魔法。遠距離攻撃と連想ゲームが進む。倫理観?三十九人のマッドサイエンティストに囲まれ、その後生存する方法しか聞いてこない大人達の中でどうやって倫理観を育てろと?そんなことよりも魔法実験です。ちょうど一服している原っぱに良い感じに的になる岩。ちなみに岩は俺が探してきて俺が設置した。癒やしの空間作りにはこだわるタイプだ。岩にぶつけるイメージで、


「それじゃ、ていっ!」


 掛け声に叩かれたかのように火は加速して岩に向かっていって視界から消えた。失敗したのかと思って繰り返し何度か火を飛ばす。何度やっても火は視界から消えていく。速度の調整も上手くいかない。上手くいったのは複数を同時に出すことくらい。今まで使えていたかもしれないが、鍛錬したわけでも、意識していたわけでもないものをいきなり上手く使えたら誰も苦労はしないか。ちなみに魔法の練習をする前にショーンがやってきて鏡を欲しがったので姿見を渡したら離れたところでポージングを始めた。あまり見ていて気持ちいいものではない。幾度となく火を飛ばしていたら喉が渇いてきた、コーヒーを飲むと俺は喉が渇く、そうだ水系統の魔法はどうだろう?コップを取り出し、水をイメージ目の前に球状の水が出てきた。魔法万能だな。コップで掬って飲んでみると冷えていて美味しい。掬うのは芸が無いな。コップに注ぐイメージで。イメージ通りに球状から変化していきコップの中へ。生き物みたいで気持ち悪いなと思いつつも便利さには勝てない。水は移動していきコップの底を貫通して地面に穴を開けめり込んで消えていった。俺のイメージでは魔法は攻撃魔法というイメージが強すぎるんだろうな。これは時間が許す限り鍛錬しなくては。そう思いながら煙草を吸って原っぱに寝転がる。今日は天気が良くて絶好の昼寝日和だ。これはこのままだと寝るな、そう思いつつ眠気に誘われ眠ることにする。


「一太郎、こちらは終わりました。最後に私の能力値を決めなくてはならないので協力してください。」


 ティアラがそんなことを言ってきた。寝てからどのくらい経過したのかわからないが助けがいるなら協力しないとならないだろう。ここにいる四人は運命共同体になるわけだし。


「なにすればいい?」

「手を繋いでください。」


 素直に両手を繋ぐ。そういえば夫婦になって初めての共同作業か。初めての接触は口に指を突っ込まれたことがだ。


「私の能力値は一太郎の能力値に依存します。一太郎の能力値の半分から十分の一の範囲で好きに決められますから好きなように選んでください。」


 今後のことを考えて恐妻家になっては困るが戦力不足ではこちらが不安になる。上限が半分であれば半分にしておいた方が良いだろう。手を繋ぎながらそう念じてみる。


「ありがとうございます。これでこちらでの作業は終りですね。ショーンさん達も終わったようですので今日のところはここまでにして、明日からは合併に備えて必要なものを揃えることにしましょう。」

「あいよ。じゃあ、飯でも食いに戻るか。」


 ポージングに納得がいったショーンとノエルに合流して家に戻る。食料は備蓄が量子化(魔法?)してあるのでいくらでもあるし、減ったら複製して補填すれば良いので食糧問題は俺には無い。元々日ノ本家は魔法使いだったのか?と思ったが飯の支度をしている内に綺麗さっぱり忘れていた。なお、ナビゲーターの二人は全く家事が出来なかった。ショーンですら出来たのに・・・

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