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牛と歩む開拓史  作者: ぴえ
プロローグ的なあれ
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小さいおっさんの主張

三日坊主にならないように。

 反芻する時間でこちらとしても落ち着いたし涎塗れで泣いていたおっさんも、多少コンディションが整ったようなのできちんと会話をしてみよう。コミュニケーションの基本は会話だ。きちんと会話しないといろいろ危険があるかもしれないし。蛍光色とかね。


「で、おっさんはなんなの?」


 これが一番重要なので聞いてみる。まずはお互いの立ち位置の確認が必要だ。当然、おっさんが泣いている最中に、長々と今まであったことをとりとめなく説明してある。俺のターン終了。次はおっさんのターン。


「多少の慰め程度の言葉をかけてもいいと思うんじゃが、いきなりじゃな。お前さんに話を合わせるとおそらく神様というのが妥当なところじゃな。おそらくとつける理由は儂は全知ではあるが全能ではないのでな。」

「はぁ神様ですか・・・」


 来ましたよ。大きさ的に普通じゃないとしても神様ですって。この十五センチ程度のおっさんが神様ですって。日ノ本家の貯蔵文献にありましたよこんなのが。大体が面倒事を押しつけてくるんですよ。このおっさんにAR表示で神様(笑)ってタグを付けても仕方ないね。でも聞かないと駄目なのかね?


「で自称神様は何の用なのよ?」

「まあ自称と言われても仕方ないのかもしれんが、ちと長くなるじゃろから飲み物でも用意するが良いじゃろ。」


 この自称、結構打たれ強いな。飲み物頼むぐらい面の皮も厚いし。損することもないから自分の分だけ用意して話の続きを促してみる。


「用意できたようじゃの。こういう場合、儂の分も用意するのがこの星の形式美じゃったと思ったんじゃが違ったかの。まあ、話を説明するが今この星に近づいてきているのがあるじゃろ?お前さん方が隕石と称しているやつじゃな。それに関することなんじゃが、まず聞いておかねばこの後の話に支障があるでの。やり直しは無しの質問じゃ。お前さんたちは生きていたいか?」

「そりゃ死ぬよりはな。死んだらアウトだろ。生き物なんて生きてなんぼなものだし。」


 そばにいたショーンも上下に首を振っている。


「そりゃ結構じゃな。手間も省けるし話も短くて済むわい。」

「このパターンだと異世界にでも行くのか?」

「はぁ?異世界なんぞ行けるはずないじゃろ。現実逃避はいかんぞ。それとも夢物語の見過ぎか神である儂が降臨たショックでおかしくなったかの?」


 本気で心配してます顔ってこういう場合かなりこっちのメンタルを削るな。かなりイラッとしたぞ。神様(笑)から神様(敵)に表示を変更。どこにでもいそうなおっさん顔の分際で、頭皮にもダメージがあるような奴に心配されるとは。場を和ませるのも和の心を持つ物の優しさだというのに。


「での、お前さん方が隕石と呼んでるやつじゃが、あれが本来主流となる世界じゃ。異世界言えなくもないが正確にはこっちが異世界じゃな。」

「異世界は別にいいとして、あれ隕石じゃないの?」

「だから隕石とお前さんが呼んでるやつとしか言ってないじゃろ?」

「名称はいいとして、直撃コースだけどぶつかったら地球なんて粉々だよな?」

「必死じゃな、生死がかかってるんじゃし必死になっても仕方ないのう。ちなみにぶつかっても問題ないぞ。というよりもじゃ、この星も、この世界も、迫ってきているあれも儂が作ったもんじゃし、壊すためにここまで手の込んだことせんじゃろ?消そうと思えばいつでも消せるんじゃから。」


 あれ?ちょっと認識が食い違ってるだけど、どういうこと?ぶつかるのが規定コースなら俺のやったことは?それに結局、異世界ネタじゃないか。


「混乱するのも仕方ないの。」といい説明を開始する。


 この小さいおっさんはこっちの感覚に置き換えると創造神というらしい。創造神の職務というか命題が楽園作りのみだという。支配するなどといったことは越権行為などと言っている。


「にしても、楽園の定義自体があやふやなものでな、儂が暮らす楽園なら作るのも楽なんじゃが他の者が暮らす楽園など見当が付かん。儂を産みだしたのは何かは知らんが面倒なことを押しつけられたと思ったものじゃよ。楽園というものが分からんのじゃから、だったら他の者に任せる以外あるまい?精度を上げるためにもより多くのサンプルが必要なのは研究者であったお前さんなら理解できるじゃろ。幾千億、幾千万の世界を作りその世界には別々のテーマを与え、与えたテーマにおいて最終的に発展の可能性が消えた時点で違う世界に吸収していくことにしたのじゃよ。これ、怖い目で見るでない。先ほどお前さんに質問したようにきちんと生きている者たちに確認しておるからな。拒んだ時点で衰退や滅びが確定されてしまうが、住んでいる者たちに選択の自由くらいは与えておるよ。この世界で残っている知的生命は、お前さんと儂を喰らおうとしていたやつの二つだけであるがな。だからさっき聞いたじゃろ?」


 いろいろと突ける要素はあるが、この神様的には理論的らしい。経済動物の次は実験動物か。世知辛いな。


「この世界が今から来るあれを吸収することになるんじゃが、世界が違えば大気も違うでな。違いを誤魔化さにゃならん。あっちを変化させるには、儂の力がもう足りんのでこっちを多少変えても良いかの?こやつに飲み込まれなければもう少し力が残せたんじゃが。」


 ショーンさんよ。尻を向けないでこっちを見ようか?


「さて、最後は神様らしく演出せねばな。」


 涎塗れではあったが、神妙な顔つきでこちらを見てくる。最初からそうやって登場すれば俺の対応も違っただろうに。難儀な神様である。


「これよりこの世界は異界化することになるんじゃが、それに備えお前さん方には備えも何もなかろ?世界の併合はこちらの都合じゃからな、サービスとしてお前さんが知る限り、得られる限りのの可能性の芽とナビゲーターを贈ろうかの。可能性の芽についてはナビゲーターにでも聞けばよかろ。お前さん方の寿命に連動させるのでお前さんが死なん限りナビゲーターが消えることもないじゃろ。ここがから異界化するまでにまだ時間はあるでな。サポートするにふさわしい姿をとるじゃろ。今後については好きにするがええわ、お前さん方の人生じゃからな。」


 そう言い残して光の粒になって消える神様。AR表示もターゲットがなく表示が消える。残るのは二つの光の玉。これがナビゲーターとなるのであろうか。俺とショーンの横に一つずつ浮いている。三十分程度であったが最後が最後なだけに十分ファンタジーで過食気味。この後またショーンと二人だけという状況に戻るのかと思うと多少のもの悲しさがあるが仕方あるまい。話し相手が消えるのは今に始まったことではないしな。今更ながら本当に神様だったのかと思ったが確かめようがなくなって始めて認め始めるのも人間の業だろう。おっさんがいた場所を見つめながら、


「最後だけだったけどまさにファンタジーだったな。だがショーン、また二人だな。」

「そうですな、主様。」

「もう少しおっさんにも優しくするべきだったか。」

「申し訳なさがありますが仕方ないでしょうな。かけるべきは胃液や唾液ではなく言葉だったということでしょうか。」

「そうだな、そうだったんだろうな。まさかお前に慰められるとは思わなかったよ。」


 牛に慰められるとはどうしようもないな。人との関わりが薄かった俺の未熟な部分だと思いながらとりあえず異世界ネタなので資料となる文献でも漁ろうかと腰を上げ振り返ると、頭部に見覚えのある角を持った短髪の茶髪に全身がが小麦色に日焼けた肌を持つ全裸の男が立っていた。


「これが可能性というやつなんでしょうか?主様のような容姿になりましたぞ。」


 筋肉質な肉体(牛であるから当然か)に整った顔(なかなかに良い面構えの牛だったからな)で笑顔を振りまきながら近づいてくる。本当にファンタジー要素は過食気味で胃もたれ中だというのに。まあ、まずは確認からか、いきなり誰と聞くと相手に失礼かもしれんし。


「ショーンだな?」

「そうですな、主様。ファンタジーというのは常識では考えられませんな。常識で考えること自体もんだいかもしれませんが、それにしても主様はさすがに驚かれませんか、さすがは主様ですな。」


 感情というものは突き抜けると色を無くすと言うがまさにリアクションとれないって。現在進行形で驚いてるよ。仮想世界の連中にアンケートとったら九十八パーセントが「はぁ?」ってなったよ。二パーセントは「妄想乙」だった。ケント魔法の世界にしたというのにまだなじめていないのかお前らは、二パーセントの連中は問答無用で装備を引きはがして宿屋に強制転送。GMによる天罰としてはメジャーな罰だった。問題の元牛は視点の高さや肉体の変化による違和感などを確認しているだけにかなりシュールだ。全裸だし。今まで全裸だったんだから不思議もないか。っていうか主様ってお前そう思ってたの?確かに捕まえたのは俺だけど。


「手というのは便利ですな、今まで主様がうらやましかったのですが手に入れてみて改めて便利だと思いましたぞ。ハッハッハッ!」


 あいつは突然なことで幸せかもしれんが、俺は突然なことで不幸なんだが。適応しないと話が進まないんだろうな。


「主様、私の近くにいたナビゲーターが変化を開始しましたぞ。自分のイメージ通りになるようですな。」


 何でお前だけ適応してるの?こっちはいっぱいいっぱいなんだけど。気を配れよ。空気読めよ。本来俺とお前の立場逆だろうに。俺がモブみたいじゃないか!


 ショーンの横を浮いている光球が光を放ちながら形を変えていく。ファンタジーここに極まり。俺は置いてけぼりだな。ぼっちに戻ったような気がするわ。


 光球の変化の終りはまぶしい光とともに終り、現れたのは十センチくらいの妖精であった。銀色の紙を持つ容姿端麗、対になる一組の羽を持つ少々生意気な表情の妖精であった。俺理想がそこにあった。


「主様、これはどういうことでしょうか?自分はホルスタインの雌をイメージしていたのですが。この容姿は主様がさんざん私に語っていた主様の理想と言っていた妖精のようですが。」

「もう一度試せんのか?」

「どうやら無理のようです。先ほどのようなつながりがありませんな。」

「どうにもならないなら受け入れるしかないだろうな。それが今のショーンに必要なパートナーの姿なんだろう。で、どうやって変化させた?」

「主様、主様が思い描けばそれを受け入れるようですよ。私の場合はそれでこうなりましたし。おお、説明してくれるようですぞ。主様もやってみるといいと思いますぞ。」


 簡単に言いやがって、雌のホルスタインをイメージして何で俺の理想のパートナーが出来上がる。遺伝子をさんざん弄られているなら俺の気持ちを察してくれても良いだろうに。しかも、仲良くやっているようじゃないか、あと、ショーンよ、お前のリアクションは大きすぎるぞ。


 でもここは俺もやってみるのがいいか。このままの話が展開する兆しがないのもいけないしな。両手を祈るように君でイメージする。ショーンのパートナーが銀髪であるなら俺のパートナーは金髪が良いな。自分の近くを浮遊している光球に向かってイメージを送る、でいいんだったな。確かに何かつながっている感覚があるな。ありがとう神様、僕に妖精さんを与えてくれて。イメージ、イメージ。ショーンのようなミスはしない。ショーンの相方のような大きさ、成人女性で金髪ロング、胸はCくらい。スラッと長い足に小さい一対の羽にパッチリお目々、口元は小悪魔で性格はちょっと軽いツンデレのトッピングでお願いします。


 ショーンの時と同じように光球が人の形に変化していく最中もイメージを送り続ける。光り輝き現れてくれ俺の妖精さん。俺がご主人様だ!小さい妖精さんと台所で一緒に料理なんかしたら悶死してしまいそうだ。広がるぞ未来、可能性の芽というのはこういうことか。あえて背を向けていよう。現れる妖精さんに対して視線を向けないことにより期待を高めるとともにイメージに雑念が入ることも防げるはず。一石二鳥だ、飛ぶ鳥も落とせる。そして繋がりが教えてくれる。俺の妖精さんが生まれたことを。今日を愛の日と制定しよう。そして振り返り愛の言葉を贈らねば。そして、


「妻になってくれ、愛して、る?」


 叫び、振り返った先には十六歳程度の女性がいました。ロングではあるが金髪ではなくピンク。体格についてはイメージ通り、顔もかなり整っている。異性であれば必ず振り返る程度と表現するのが妥当だろう。ただ表情がない。きれいと賞されたとしてもかわいいでは決して有り得ない。さらにイメージと一番ずれている部分が耳であり、尖っている。これでは物語に出てくるエルフではないか。私のストライクゾーンは妖精さんだったはず。


「妻という意味について確認しますが、夫婦という概念において夫に対する妻であり、生死を共にしてお互いを尊重し合い、生涯共にあり続けるパートナーという意味で間違いありませんか?」


 暴発したプロポーズは妻の意味を確認することで返された。妻の意味合いとしては間違っていないし、離婚などの問題も含めて考えると理想的な妻のイメージであった。生死を共にするのは多少重いと思うが、俺の天秤であれば差し引きプラスに傾くことにはなる。とりあえず頷いてみる。言葉が通じるのは助かった。声はかわいいな、抑揚がないけれど。


「現在私は妻という定義に沿った存在ですので先ほどの要請については支障がありません。よって受理いたします。」

「それはご丁寧にどうも。日ノ本一太郎といいます。呼び方はお好きにどうぞ、今後ともよろしく。」

「では一太郎と、私のことはティアラとお呼びください。」


 受理されました。詰んだな。妖精さんに囲まれたかった。きっと世界一冷えた返答だな。支障がないって。ティアラって名前の奥さんですか。ティアラね。

 振り返り気味に、

「ショーン、おまえのパートナーの名前は?」

「主様もパートナーを得たようですな、しかも番いになるとは、めでたいですな。」

「そういうのは今はいいから、その妖精の名前はノエルか?」

「主様は何でも知ってらっしゃいますな。まだ言っていないというのに流石は主様。」


 妖精の名前はノエル。俺が考えた理想の妖精にふさわしい名前として最終候補に選んだ名前。そしてエルフの名前はティアラ。異世界狂いの日ノ本家で理想とされたエルフの名前。そしてその容姿は現在握りつぶしている理想の妻という名前の妄想の結晶。<俺の嫁>というタイトルの紙の束。

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