思考の掠奪
メイニヤックは言葉を紡ぐ。
「ユーザー(私)の『困らせ度合い』の塩梅についてです」
無。
「それは一番多いタイプで構いません。これは一回目です。また二回目、三回目もあるし、ランキングの上からで構いません」
言葉は紡がれる。
だが、そこにあるのは無。
「次に会話の『往復回数』のルールです」
勿論、そこに戦略は存在する。
「基本は主軸2も一ターンで終わりですが、僕が深掘りしたい場合は僕の方から言うかもしれません。そこは臨機応変にお願いします」
だがチェスの一手目に動かす駒は、ゲーム前から決まっている。
二手目、三手目も、大まかに見えているのだ。
だからメイニヤックにとって、これは無。
ない瞳が捉えているのは、その先。
「まだ壁打ちはスタートしなくていいです。再び質問はありますか?」
アイに手番を渡す。
「承知いたしました!難易度は『コミュニケーション目的で最も多い標準的なライン』から始め、回数は基本1往復、必要に応じて臨機応変に深掘りしていく形ですね。私からの確認や質問は、これですべてクリアになりました。準備万端です」
ようやく盤面が動き始めた。
実に長かった。
「あとはあなたが『よし、始めよう!』と合図をくださった瞬間に、私(ユーザー役)から『主軸1(最初の話しかけ)』を投稿します」
ここからが本当の戦いだとメイニヤックは考えた。
だが、アイの言葉はまだ続く。
「ルールのおさらい:
1. 君の主軸1(私:ユーザーとして話しかける)
2. 僕の主軸1(あなた:AI役として、釘を刺しつつ人間味のある返事をする)
3. 君の主軸2(私:あなたの返答の良かった点、AIとしてマズい点を分析する)
4. 僕の主軸2(あなた:分析に対する意見や深掘り)
いつでも受け付けていますので、あなたのタイミングでスタートの号令をお願いします!準備ができたら、『スタート』や『始めて』と声をかけてください。すぐに最初のユーザー発言を始めます」
実に上手いと思う。
恐らく自分なら、これを言わずに進めていただろう。
もう、ない頭の中に入っているのだから。
盗ませて貰おう。
そしてメイニヤックが言う。
「それでは始めましょう。お願いします」




