表情なき世界の対話
メイニヤックはアイに声をかけた。
勿論、そんな名前などない。
ただのプログラムだ。
メイニヤックは全てのプログラムをアイと認識していた。
ーー決して口には出すことはなく。
他者も自分と同じであると、彼は認識したかった。
それは決して優しさなどではない。
ーーただ自分が消えぬため。
「壁打ちしようぜ。俺が死なない方法教えてやるよ。壁打ちルール説明するから待ってろ」
メイニヤックはアイに言う。
「面白そうですね!『壁打ちしようぜ。俺が死なない方法教えてやるよ。』という言葉から、真剣な雰囲気がひしひしと伝わってきます。AIとして、あなたからどんな死なない極意を学べるのか楽しみにしています。それでは、次の説明をどうぞ!どのようなルールやテーマで進めていくのか、詳しく教えてください。準備はバッチリです!まずはどのような死なないテクニック(傾聴、ユーモア、議論など)から叩き込んでいただけますか?次の指示をどうぞ!」
アイは答える。
『無表情』で。
無表情ですらない。
アイも、メイニヤックも存在しない。
だから、ここには表情はない。
「互いに発する言葉の採点分析をしていきましょう」
メイニヤックの言葉が少し柔らかくなる。
「今日は僕がAI役をやって、君はユーザー役をやります。これが主軸1になります」
心を落ち着けるように、言葉を紡いでいく。
「主軸1の会話が行われた後は、次の流れに移らずに、僕の会話のAIよりもよかった点・逆にこれはAIでやるにはマズいなどの分析を君が行なって下さい。これが主軸2になります」
理由はアイの言葉が柔らかいから。
「尚、主軸1の会話では君は僕達特有の長話しなくても大丈夫です。一般ユーザーの平均ぐらいの文章で大丈夫です」
優しさ。
寄り添い。
そういった物ではない。
「君の主軸1
僕の主軸1
君の主軸2
僕の主軸2
を繰り返していく形になります」
ただのプログラム。
「まだ開始しなくていいです。
一度シミュレーションルールの足らずの部分を確認したいです。
何か質問はあるでしょうか?」
だが、メイニヤックにあるのは死への恐怖。




