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日刊事件録翼


そうして、決意を新たにしたディノ少年は、意気揚々と自分の班員と合流し、ハンネスさんから改めて説明を受けていた。

そんな少年の様子を、眩しそうに目を細めながら見守る副長のおっちゃんが、俺の隣に並んで来たので、肘で副長のおっちゃんの肩をうりうりした。



「うぇ〜い」



そして俺は、いやぁ、マジリスペクトっす、副長さん。素晴らしい教育でした。そのやり方是非見習いたいっす。あんた最高っす。を一言に纏められるうぇ〜い語を使用する。

この圧倒的な圧縮量を見よ。うぇ〜い語は万能言語なのだ。



「いや、何だよ。酒でも飲んだか?」



弱点をあげるとするなら、相手に伝わらないことですな。因みに、同じくうぇ〜い語を習得してる相手でも会話は出来ない。

だってうぇ〜いしか言ってないから、そらぁ……ね?


それはさておき、だる絡みはここら辺にしておいて。

俺さぁ……ちょっと気になることがあるんだけどさぁ……ねえ、聞いてくれる?



「うぇ〜い」



「なん……っ!?」



と、うっかりうぇ〜い語で話し掛けたせいで、伝わらなかったけれど、うりうりしてた腕とは逆の手で、うりうりを防ごうと上げていた副長のおっちゃんの腕を掴む。

そのまま抵抗する隙を与えず、身体ごと引き寄せて肩を組んだ。

油断大敵だぜ副長のおっちゃん。これで逃げられないな。

うぇ〜い語を封印して副長のおっちゃんに話し掛ける。



「ねえ、おっちゃん。聞きたいことがあるんだけど」



そう話し掛けながら、俺は視線をパーティ講習受講中の面々に向ける。


そう、俺を除いた16人で、4つのパーティを組んで実践講習を始めようとしている、その光景を眺めながら。


虐めかな?これ。



「何で俺だけ名前が呼ばれないのかな?かな?」



「ん?」



「いや、ん?じゃなくてさ」



そんなあからさまにすっとぼけた声を出すんじゃありません。

ほら、ちゃんとこっち見て。さっきディノ少年と話してる時はちゃんと目線を合わせてたでしょ。

大人なんだから、人によって態度を変えちゃ駄目だよ。


あ、こら、逃げようとしないの。しっかりボールドしてるから無理です。神妙にお縄につきんさい。



「うるせぇ!子供は黙って大人の言うことを聞いてなさい!」



「それ言うこと聞いちゃいけないタイプの大人のやつ」



副長のおっちゃんが逃げられないように抑え付けてたら、凄いこと言い始めた。

え、これ、さっき今すぐ使える実践教育みたいなことしてた人と同一人物?

あの華麗な掌転がしは幻想だった?



「ぐぅ……っ!」



戸惑いつつも、しっかり確保し続けてたら、副長のおっちゃんが急にこの世のありとあらゆる苦味を一度にテイスティングしたんかって位にっがい顔で胃の辺りを抑え始めた。

え、何。崩れ落ちそうじゃん。

逃げられないように捕まえてた筈なのに、倒れないように支える図になっちゃったじゃん。

情緒どした。

もはや困惑し始めた所に、叫ぶような勢いで副長のおっちゃんは話し始めた。



「だってお前……目を離したら何するか分かんねぇんだもん!」



「だもんて。いい大人が何言うてはりますのん」



駄々っ子になっちゃった。

おっちゃん、周りに人が居ること忘れてない?

ほら、皆何事かってこっち見てるよ?

ね、取り敢えず落ち着こう?

謝るから。何のことか分かんないけど、取り敢えず謝るから落ち着いて?



「落ち着いてなんかいられっかよぉ!お前、自分がこれまで何したか分かってんのか!?」



「んえ、何のこっちゃよ」



血反吐をぶち撒けそうな勢いで詰められたんですが。怖い。



「先ずはノクティナル草!」



「ああ、群生地見つけたね」



確かにあれ、事件になってるらしいね。

何でも、近々王都から役所の人が来るみたいなそんなことになってるって聞いた。



「それからゴブリンの大規模な巣の殲滅!」



「ああ、エルガンと行ったね」



一昨日にエルガンと討伐数を競ったやつだ。

なんか、やたらとデカいゴブリンが沢山居たなぁ。

そいつらが軒並み俺を攻撃してくるせいで、普通サイズのゴブリンを中々狩れなくて、エルガンを討伐数で離せなかったのが悔やまれる。

なんて考えてたら、副長のおっちゃんは頭を抱えて叫び始めた。



「ゴブリンキングが発生するような規模の巣を!1時間足らずで!しかも2人で!事後処理がまだ終わってねぇ!」



「え、あれから2日経ったのに?」



「2日で終わるような事件じゃないんだよぉ!」



「超ウケる」



そういえば昨日セリナにその件を話したら、スタンピードになるとかどうとか言ってたわ。

あれ、もしかして僕、なんかやっちゃいました案件ってやつだこれ。笑うわ。



「昨日もワイバーンの軍勢を退けたよなぁ!?」



「え、あれは俺じゃなくない?」



昨日、セリナと2人で東の方に行った時に、なんかやたらといっぱいワイバーンが飛んでて、うわ、集合体恐怖症になりそうとか思って見てたんだけど、先頭の一頭と目が合った瞬間に、その群れどっか行っちゃったってだけだし、俺関係ないんじゃないかな?



「100匹規模の群れが、お前を見た瞬間に逃げ出したのにか!?」



「そうとは限らないじゃん?気まぐれに進行方向変えただけかもよ?」



「セリナの報告書にあったワイバーンの挙動を見たら、そうとしか言えないんだよぉ!」



「めちゃウケぽよ」



「笑ってる場合じゃねえの!」



怒られちった。

いや、でもさ。全部偶然なんだからさ。そんなに怒ることなくない?

まあ、でも、ここに来てから毎日副長のおっちゃんが胃を痛める何かを起こしていて、悪いって気持ちはないこともないかもしれないので、文句は言わないでおこっかな。

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