ディノ団子作成中
さて、そんな神対応待ったなしの状態の副長のおっちゃんが、どんな素晴らしい言葉を投げ掛けるのか。
俺はにっこりしながら、優し気に笑う副長のおっちゃんの言動に注目した。
「大人ってなぁ……うるさいよな?」
心底分かると言うように、副長のおっちゃんはうんうん頷きながら言った。
俺も分かる。小さい頃はよく、周りがうるさいなぁって思ってた質なもんで、よく分かる。
「お前さんも大変だなぁ。ディノ」
そして、副長のおっちゃんの同調は、一定の効果はあったようで、ガキ大将君の表情から、不機嫌さが減っていくのがよく分かる。
しかし、まだ警戒心は残っているようで、副長のおっちゃんの言葉に頷いて同調しつつも、表情はまだ固い。
そんなガキ大将君に、副長のおっちゃんは内緒話をするように声を潜めて続けた。
「知ってるか?あれ、大人って自分の為に言ってるんだぜ?」
「……へ?」
副長のおっちゃんの言葉に、思わずといった様子で、ガキ大将君が疑問の声を上げた。
ついでに今まで俯いて下を向いていた目線も上げた。
ガキ大将君の目線が合うと、副長のおっちゃんはにかりと笑った。
「ちょっとあっちで話すか」
それから、ガキ大将君と共に、講習の参加者の輪から離れる。
その離れ際、ハンネスさんにチラリと視線を向けていった。
それに気付いたハンネスさんは、ゆっくり頷いてから、班分けを再開する。
おほぉ……さり気なくこういうことも気遣えるの、すっごいなぁ。
伊達に副長やってる訳じゃないんだなぁ。
さて……じゃあ、どうしよっかな。
俺はどのグループに参加するのかは聞いとかなきゃだけど、ぶっちゃけ、2人の話の方が気になる。
……うん、両方気にしよう。
とりあえず、班分けに関しては、俺の名前が呼ばれる筈だから、そこだけ注意しとけは大丈夫っしょ。
俺は班分けがどのメンバーになるのか軽く気にしながら、副長のおっちゃんとガキ大将君の会話を聞くことにした。
「さっきのハンネスのやつも、そうなんだぜ?」
「え、そうなんだ?」
副長のおっちゃんが話を再開させた時には、ガキ大将君の不貞腐れたような態度は収まっていて、普段通りの調子といった様子だった。
それを見た俺は思ったね。
ガキんちょや、今、君、副長のおっちゃんに掌の上でごんろごんろ転がされておるぞ。
そしてこれから更にごろんごろんさせられるぞ。
転がされまくってお団子になっちゃうよ、ってね。
さて、それじゃあ引き続き、お子様が悪い大人の手によってお団子にされちゃう様を、楽しませてもらいましょかい。
「そうそう、自分がやりたいようにする為に言ったんだ。ほら、ああやって講習を進めたかったんだよ」
「ふーん?」
「お前さんも自分がやりたいようにする為に言っただけなのにな。大人ってうるさいよな」
「副長も大人じゃん。でもそーなんだよなー」
副長のおっちゃんは、ガキ大将君の指摘に対して、ニンマリと笑顔を返す。
お、来るか?ごろごろタイム開始か?
「まあな、俺も大人だ。だから、お前さんもハンネスも一緒なのに、どうしてディノだけ怒られたのか、分かっちまうんだぜ?」
「え、そんなのハンネス先生が大人だからでしょ?」
と、ガキ大将君は副長のおっちゃんの問いに、悩むことなく、当たり前のことを言うように即答する。
捻くれたお子様の考え方だなぁ、と思っていると、副長のおっちゃんはそれを得意気な顔で受け止めた。
「そうじゃないんだなぁ、これが」
「えー?でも大人って怒られないじゃん!」
副長のおっちゃんの否定を受けたガキ大将君は、分かりやすく不満気だ。
でも、そういう訳じゃないんだなぁ、それ。
と、副長のおっちゃんが言っていたことと同じことを思う。
大人だから怒られないってこたぁないんだよなぁ。
怒られないように立ち回ってるから怒られないだけであって、それに大人も子供も関係ないのよね。
うんうん、小さい頃って、案外そういうの分かんないもんよね。分かる、分かるよ。俺もまだ子供だからよく分かる。
「いや、大人だって普通に怒られるぞ。この前、お前さんとこの院長先生が、孤児院の近くで酔っ払って寝てたおっさんを叩き返してただろ?ほら、大人も怒られるんだ」
そんなことを思っていたら、副長のおっちゃんはガキ大将君に身近な例をあげて、分かりやすい解説をしていた。
相手に分かりやすい例え話ってそんなさらっと出てくるもんなの?すげぇじゃんっ。
そう感心していたら、案の定直ぐに理解出来たようで、ガキ大将君は瞬時にハッとしていた。
「あ……ほんとじゃん!え、じゃあ、何で?」
そして、自分の考えが間違っていたと気付き、では、本当の所はどうなのだろうと、疑問を覚えた。
さあて、聞いちゃったね。
副長のおっちゃんに聞いたね?
これは止めのコンビネーションブローが炸裂しますわ。
凄い綺麗に掌の上で転がされてるガキ大将君の様を見るのは、詰め将棋を見てるようで面白い。
さて、後何手で詰みかな?と、にんまりして副長のおっちゃんの言葉を待つ。
副長のおっちゃんは、笑いながら口を開いた。




