ハンネス△
引き続きのパーティ講習でごわす。
抗議は大体30分程で終わりまして。
要約すると、パーティは主に、その依頼限りのスポット的な臨時パーティと、短〜中期間組んで複数の依頼を受ける継続パーティの2種類あるそうで。
大体小規模パーティは臨時パーティ、中規模パーティは継続パーティになる事が多いそうな。
で、拠点を構えるような大規模なパーティになると、クランて呼ばれることが多いんだってさ。
そんな説明の後、パーティを組む心構えやら、メリットとかデメリットとか、実際に組んだ時の細かなルールとマナーを教えてもらった感じ。
……いや、普通に為になった。
途中からなるほどね、ほうほうって前のめりで講義を聞いちゃったもん。
俺もパーティ組みたくなっちゃったね。
元々バレーやってたし、団体競技好きだし。
え、どうしよう。組んでくれる人探そうかな。
セリナは固定パーティ組んでる様子は無かったし、頼めば普通に組んでくれそう。
後は、エルガンとかもいいな。一緒に遊んでて楽しいし。セリナとも面識あるし。まあ、その面識ってのが、三日月堂での説教っていうあれだけど。
後個人的にはガーネも良き。あの人面白いし。
昨日も今日も俺が朝食のタイミングで帰って来ては、好きなように話して、好きなだけ飯食って、勝手に満足して楽しそうに去って行くあの後ろ姿に病み付きになってる俺が居る。
毎日飲み歩いてるの凄くね?肝臓どうなってるんだろう?
わぉ、皆とパーティ組んだらどうなるか、想像するだけで楽しい。
取り敢えずこの講義が終わったら、セリナを誘ってみよう。
他の人はどうか分からないけれど、会ったら声掛けるのは有りだね。
わくわくして来た。
なんて考えていると、講習は実技へと移行する様子。
ハンネスが、誰と誰がパーティとして組んでみるって話をしている最中のこと。
「せんせー!何でオレがこの役立たずと組まなきゃいけねぇの!?」
と、何やら不満そうな声を上げるチビっ子の声が聞こえて来た。
すっごいこと言うじゃん。真っ直ぐな侮蔑じゃん。君は母親の腹の中に気遣いってもんを置いて産まれて来てしまったのかね?
そう思いながら、その声の主を確認する。
さっき副長のおっちゃんが言ってた赤髪のガキ大将だった。
おいよい、ガキ大将君よ。その物言いは将来自分に不利な形で戻って来ると思うから、止めた方がいいと、お兄さんは思うな。
なんて声を掛けようかと思ったら、単純に物理的に距離が遠いこともあって、それより先にハンネスがガキ大将に話し掛けたので、俺は機会を失った。
「ディノ……その言い方は良くないぞ」
「えー!?でもこいつ黒髪だもん!役立たずじゃん!」
ガキ大将は、フードの少年を指差しながら、そう叫ぶ。
おわぁ……ガキ大将、君、怖いもの知らずな挙げ句無遠慮過ぎるってぇ。
ハンネスってごりっごりの武闘派な見た目のおやっさんだよ?大丈夫?鉄拳制裁とかありそうだよ?
ほら、ハンネスの表情が、聞き分けの悪い子供に物申すモードから、部下を叱責する鬼教官のそれに変わったよ?
うわ、顔こっわ。あれはお子様泣くって。間違いなく漏らすもん。
ガキ大将よ、君は虎の尾を踏んでしまったみたいだぞ。やっちまったな。
「ディノ!もう一度は無いぞ!考えて発言しろ!」
訓練場中に響き渡る声量で、ハンネスの叱責の声が響く。
直前まで露骨に迷惑そうな顔をしていた中高生達も、何故かニヤニヤしてたやんちゃグループも、それ以外のチビっ子達も、全員が大きく肩を振るわせた。大人達はそこまで露骨じゃなかったけど、それでもびっくりしてハンネスの方を見てた。
こっわ。やっぱ鬼教官だぜあの人。これは流石のガキ大将君も……。
と、ガキ大将の表情を確認する。
あ、すげぇ。怖がるんじゃなくて、不貞腐れてる。めっちゃむくれてる。
もしや、彼は大物か?それとも世紀の大問題児か?
うわ、どっちなんだろう?不謹慎ながら、面白くなって来ちゃった。
俺、分かる。これ、思う、良くない。
予想外の展開は大好物だけど、今はそれを表に出して良いタイミングじゃない。落ち着け、俺の内なる怪物よ。わくわくするんじゃない。空気を読め。
そう必死に自戒をしている間にも、話は進んでいく。
「だってぇ……」
「話す時は相手の顔を見ろ!」
「あいつ、黒髪だし……」
「それが今回の講習と何が関係あると言うのだ!」
「絶対足引っ張るし……」
「ここはパーティの基本を学ぶ場だ!全員、学びに来ている!そこに足を引っ張るかどうかは関係ない!」
「でも……」
「そして、今は我儘を言って時間を無駄に浪費させている貴様が全員の足を引っ張っている!これはそれを理解しての発言か!?」
「……」
おほぉ……ガチ説教。
しかもこれ、教育者の説教だ。公平な教育者のやつだ。
ハンネス超良い教官。ハンネス△。よし、これからハンネスのことは、ハンネスさんと呼ぼう。敬意を表して、ね。
と、その感情的ではない素晴らしい説教に感銘を受けていると、俺の隣にいたはずの副長のおっちゃんが、緩く前へ歩き出していた。
「そうだぞー。ハンネスの言う通りだ」
そして、薄く笑いながらガキ大将の横に並び、歩く調子と同じ緩さでガキ大将の肩を軽く叩いた。
「ふ、副長……」
副長のおっちゃんの登場に、ハンネスさんが気まずそうにたじろぐ。
副長のおっちゃんは、そんなハンネスさんにウィンクを1つ。
キザぁい!でも俺に任せとけって感じがまた格好良い!ひゅー!副長のおっちゃん、マジ副長!
「あのな、ディノ」
それから、ハンネスさんが仕方なさそうにお任せします、といった態度を示したことを確認してから、座り込んでガキ大将と目線を合わせる。
あ、その子供に目線を合わせる感じ、良い。
凄い、ちゃんと大人だ。
いつもあんだけ腹が痛そうにしてる副長のおっちゃんの、大人な部分が出てる。




