前途はある危険物
……はい、という訳でですね。
新人向けのパーティ講習に参加することになった訳なんですけども。
朝一でセリナから10個以上もの注意事項を頂戴したり(特にやり過ぎ注意と強く言われた。解せぬ)ミリアに講習に参加することを伝えたら、きょとんとした顔で必要ですか?って聞かれたりしたけれど、私は元気です。
俺だって新人なんやぞ。ギルドに登録してから5日しか経ってないんやから。てか、必要だからギルド長もこの講習に参加するように言ったんだよね?
何故か、さっきちょろっと顔を合わせた時、見てるだけでいいって笑ってたけど、必要なんだよね?
所でさ、地下訓練場に副長のおっちゃんが居てさ、何故か横で俺をずっと胡乱気な目で見てるんだけど、どうしたんだと思う?
まるで監視役みたいな空気出してるけど、まさか俺の監視をする為に待機してた訳じゃないよね?
「という訳で、俺らは見ているだけだから。難しいと思うが、予定通り進めてくれな」
「は……はぁ」
本日の講師役であるらしいハンネスが来た所、副長のおっちゃんはそんな説明をしていた。
ハンネスは終始困惑した様子で、気もそぞろに曖昧な返事ばかりしてた。
どうやら今日、副長のおっちゃんは地下訓練場に来る予定はなかったそうな。
だったらそんな反応になるのもしゃーないねって思って2人の会話を聞いてたら、急に副長のおっちゃんは素早くこちらを振り返った。え、勢いヤバ。どした?
「な!見てるだけだからな!分かってるよな?な!?」
「お……おん」
力強い念押しを食らいました。
もう状況証拠が全部俺の監視役をするって言ってるじゃないですかやだー。
え、俺何もしないよ?ギルド長にこの講習に出るよう言われて来ただけなんだよ?だと言うに、なんでこんな扱いを受けているのかな?
そう困惑する俺を見て、副長のおっちゃんは何かを確信した表情で更に続けた。
「見ての通り前途ある若者ばかりなんだぞ?下手な刺激を与えるなよ?」
「副長のおっちゃん。俺も前途ある若者」
「うん、そうだな。だから気を付けろよ?分かったな?」
「ねえ、話聞いてた?」
まるで俺がもう若くないみたいな言い方はやめてもろて。こちとらピッチピチの16歳ですよ?
後、さっきのセリナも似たようなこと言ってたんだけど。小さい子が多いからどーって感じに。
何?あーたら、俺のこと刺激物か何かって思ってる?
誠に遺憾です。
と、まあ、非常に不本意なことを言われながらも、新人講習がスタートした。
「んっんん!では、定刻になったので、講習を始める」
気を取り直すようなハンネスの咳払いから、講習が始まる。
先ずは座学からのようで、用意されていた机と椅子に座っての講義が始まった。
机は4人掛けの長い物が横2列、縦2列に並べられていて、その向かいにホワイトボードみたいな形の木の板が置かれている。
小会議をするみたいな配置だ。
ハンネスが講義するパーティでの心得を聞きながら、俺は他の参加者の面々を見回した。
さっきまで副長のおっちゃんにやんややんや言われてたから、そこまで見てる余裕が無かったのよね。
参加者は、俺と副長のおっちゃんを除くと16人。
成人らしき人が3人、中高生位の人が5人、チビっ子達が8人。
確かに、セリナの言う通り小さい子が多いね。半数がチビっ子だし、まだ二桁になってなさそうな子供までおる。
と、いうことを踏まえていただいて、先程の机の配置を思い出していただきたい。
机は、4人掛けが4つ。椅子は当然、机の大きさに合わせて4脚が机の前に置かれていた訳で。
おや?椅子の数が足りないね?
所がどっこい、椅子は全部で18脚用意されていた。
……俺と副長のおっちゃんの分だけ、1番後ろに、ぽつんと離島のように置かれていた訳なのです。
……机がないのは、この際まあいいさ。
それよりも俺が言いたいのは、何で俺と副長のおっちゃんを隔離するみたいな配置になってるのかなってことなんよ。
扱いおかしくない?ねえ、不当じゃない?訴訟も辞さないよ?
それはもうこの講習の後で存分に抗議させてもらうことに決めた。
なので、今は一旦他の参加者を見ていて気になったことを考える。
何か年齢層低いね?ギルドにこんなチビっ子いっぱいいたっけ?
新人てなると、こんなもんなん?
「ん?いや、今月は多い方だな。普段は居ても2〜3人位だぞ?」
副長のおっちゃんに聞くと、今回は特別なのだそうで。
どうしてなのか聞いてみると、副長のおっちゃんは1人のチビっ子を指差した。
「ほら、あの赤いツンツン頭の子供が居るだろ?あの子が中心の5人組が入ったからな。だから人数が多いんだ」
「あのガキ大将っぽい子?」
「ガキ大将……まあ、うん、そうだな」
副長のおっちゃんが指し示したのは、他のチビっ子達と比べて、頭1つ分身長の高い真っ赤な髪の少年だった。そいつは、ふんぞり帰るようにして講義を受けていた。
生意気盛りって感じの、いかにもガキ大将。
副長のおっちゃんも苦笑いしながら曖昧に頷いたので、性格もしっかりガキ大将なんだろう。
そういえば、やたらと騒がしい5人組のチビっ子達がいたような……なるほど?やんちゃグループだ。
なんて思いながら、ぼんやりとそれらしきチビっ子達を眺めてたら、ふと、それとは別の1人の子供に目が留まった。
……少年?いや、少女?フード付きのケープを着ていて、フードを深く被って下を向いているから、背が低いことしか分からない。
身長的には、さっきのやんちゃグループと歳の頃は同じかな?
ちょっち気になることがあったので、その子供をちょいと観察してみる。
……わーお、何あれぇ?どうしてそうなってんの?
「……どうした?」
まじまじとその少年——よく見てたら少年だと分かった——を見てたら、副長のおっちゃんが怪訝な表情をしてた。
ちょっと気になって見てただけなのに、そんな険しい顔しないでほしいですねぇ。




