表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/50

やたらとテンションの高い麒麟もどき


暖かな街灯を眺めながら、そう振り返っていた所に。

ふと立ち上がった麒麟もどきが、ゆっくりと弧を描く様に、俺の前を闊歩する。

静かに街を眺めながら、ぽつりと呟くように、口を開いた。



「資格者よ。この街並みを観て、其方は何を想う」



緩やかな街明かりを背に、ビーズのような目で、俺を一直線に眺めながら、そう問うた。



「何を……」



麒麟もどきの質問を受けて、俺は一度空を仰いだ。

前世と比較して、決して多いとは言えない街明かりの影響か、記憶にあるそれよりも鮮やかに見える星々を眺めながら、俺はその答えを探す。

それを見つけるのに、決して長い時間は必要としなかった。



「まあ、俺って人が好きだなって。そんな感じのことをね」



滲んだものは。湧き上がった気持ちは。

発露したその思いの元は……それは、人のことだった。


門ジィのこと、副長のおっちゃんのこと、ミリアのこと、ギルド長のこと、セリナのこと、エルガンのこと、ミテラさんのこと、ガーネのこと。


これまでに出会った、ひと。

それから、これまでに出会うだろう、ひと。

そんなことばかり、思いを馳せていた訳で。

街を見ていて、そんなことばかりを考えてるってのも、変な話だったな、なんて思いつつ。

それを止めるつもりが起きない位には、心地良い時間に思える。



「ふむ……」



麒麟もどきは、俺の答えを聞いて、考え込むように首を傾げた。

まあ、そうなるよな。繋がりが分からないよな。

もうちょい詳しく説明しようかと思ったけれど、麒麟もどきが話し始めたので、中断。



「今一度、問おう」



勿体ぶるようにゆっくりとした動作で、麒麟もどきはそんなことを言う。



「汝、力を求める者か?」



「あ、間に合ってまーす」



やたらと深刻そうな雰囲気出して聞くから何事かと思いきや。

俺も今突飛なこと考えてたからあんまり言えないけど……こいつは本当に言も動も、全部いきなりでぶっ飛んでるんだよなぁ。

ね。本当、何なん君?何でついて来るん?



「左様也、資格者よ。汝は求める者ではなく、掴みし者」



「おん?」



いつもの流れ——また謎の斜め上からの好意的解釈が返ってくると思って、ツッコミの準備をしていたのだが、それは無意味に終わった。

何事かねと、麒麟もどきの顔を改めて眺めた。

基本的に、ニュートラルな状態のこいつには、表情らしきものはない。

それは無表情ともまた違って、表情が無と言うのが1番近いと思う。そう、こいつ基本虚無顔なんだよね。


そして、今も麒麟もどきの顔に、大凡表情というものは無い。

しかし、それもまた、無ではなく。だが、纏う空気が微かに変わった。

あえて言うならば、威圧感に似た説明の難しい凄みが、麒麟もどきから感じられる。

……え、急にどした?

やば、何かのフラグ立てちゃったこれ?やだ、巻き込まれたくない。



「え、待って。これ何か始まる?どうしたの?おたく、何をしようとしてるの?」



「汝のその技量は、(しか)し、耐え難き欲求の発露とはまた一線を画すものである」



焦って止めようとするも、お構いなしに話し続ける麒麟もどき。

ちょいちょい、何でよ?何がフラグだったの?あーし、分かんない。何をやらかしてこのイベント進み出しちゃったの?

リセットボタンはどちらに?ロード画面まで戻らせて?



「では、汝の望むものとは、何か?」



「いやないよ?」



「資格者が、ヒトを求めるその、根源は?」



「ねえ、めっちゃぐいぐい来るじゃん?」



どんどん近付いて来る。ちょ、圧が。圧が強い。

何で何で、何処が琴線に触れたの?どーしちゃったのあーた。止まんないじゃんぐいぐい一気の勢いじゃん。



「此れ程迄に、人類の、一個人へと、感興をそそられた事なぞ、例がない」



「近いなぁ。ちょっち離れてくれないかなぁ」



現在、あーしと麒麟もどきの距離、マジでキスする1秒前。咄嗟に両手を顔の間に挟んでブロック。押して引き剥がす。初回遭遇時と比べて、抵抗する力が明らかに強い。何でそんな前のめりなのよ。

止めてくださぁい……。


麒麟もどきの顔を押して寄せられてを数度。

ようやく諦めてくれたのか、ふと抵抗が弱まる。

おろ、と、逸らしていた目線を、麒麟もどきの顔に戻す。


俺を、真っ直ぐに見ていた。

その、陶器のような瞳の中に、確かな感情の光を宿らせて。

熱……と、表現しても良いのかもしれない。

熱く、激しい感情が、俺に対して向けられているではないか。



「——我は、観測せしモノ也」



「あ、へぇ。そうなんだ?」



「——此れは、逸脱した行為に他ならぬ。故に、問うのは一度のみ」



「あ、俺?それ俺に対しての質問?」



(しか)り」



つまり、今回答えたら、以降こうやってぐいぐい来ることがなくなるってことやん?

え、それならやぶさかじゃない。それどころか大歓迎。

俺は即座に頷いて、麒麟もどきの質問を待った。



「資格者よ。其方が成す偉業の、その根源には、何がある?」



そうして、聞かれたその質問は……。


ひっっっっ………………じょうに、答え辛いやつぶん投げて来たねぇ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ