人生とは、競い合うことが本質なのかもしれない
うおおおおお、と、心の中で叫びながら。てか、エルガンは実際に叫んでたけど。
息もつかぬデッドヒート。
迫るゴール。走る速度は互いに短距離走並みの全力疾走。
盛り上がる勝負に興奮した麒麟もどきJr.達がゴールテープを構えたまま、ぴょこんぴょこんと飛び跳ねる。
ちょ、ちゃんとテープは張って待ってて。落ち着いて。
しかしそんなことを言っている時間もなく、勢いそのままにゴール!
果たしてその結果は!?
「…………俺じゃね?」
クールダウンの為に競歩で歩き回りながら、隣で同じことをしているエルガンに話し掛ける。
いや、ほとんど同時のゴールだったけど、俺の方が微かに鼻先が先にゴールに触れたはず。多分。恐らく。メイビー。
「…………俺、だろ」
対して、エルガンは俺と同じような表情でそう主張した。いや俺だって。ちょっと俺の方が早かったもん。
「いやいや、微かに俺が先にあの紐に触れた筈だ」
「いやいやいや、だって俺感じたもん。テープの抵抗。先に触ってないとそうはならないじゃんね?」
「いやいやいやいや、それを言うのなら、俺こそが紐の抵抗を感じていた」
「いやいやいやいやいや……」
「いやいやいやいやいやいや……」
と、いやいや期を迎えた子供よりもいやいやと言い募る男2人。
いい年して何をやってるのかって話しだけども、原因は明らかにエルガンにあるでしょ。
いくら悔しいからってね。往生際が悪いと言いますかね。ええ、早く負けを認めたらどうですか。エルガンさん。
何ですか、その分からず屋に話し掛けるみたいな態度。それは貴方のことですよ。分かってる?
いやいや言ってないで、リピートアフタミー。
「翼君の勝ちです。エルガン君は負けました」
さあ、どうぞ。言いなさいよ早く。
何で俺がエルガンに負けたなんて事実に反することを言わないといけないの。
こらもう埒が開かない。この聞かん坊に純然たる勝負の真実を理解させるには、第三者の意見が必要だ。
そうだろ?審判。
「…………同時であった様に思うが?」
2人で麒麟もどきに結果如何を問うと、数秒程頭上を見上げて考えた後、そう宣った。
よし、クビです。
使えない審判もどきは捨て置いて、俺達は侃侃諤諤、やいのやいのとラストパート時よりも熱い議論を繰り広げる。
そうして辿り着いた結論は、確かに、考えてみれば当たり前で。
至極真っ当過ぎて、ともすれば平々凡々と言わざるを得ない答えだったのかもしれない。
……そう。誰もが思い至る分かりやすい答えだ。
もう1回勝負して、勝ったらいいじゃないか。という。
再試合じゃい!!!!
おおやったらぁ!!次こそ文句の付け所のない完璧な勝利を掴んでやったらぁ!!
そうして始まった2回戦。
俺は敢えてエルガンの後ろを走る。今度は君がペースメイクする時間だ。
言っとくけど、生半可な走りをしたら速攻引き離してあげるからね?さっきの君より割り増しで煽るからよろしくね?
……あ!おま、前回より早いペースで走るんじゃないよ。
当てつけのつもりかね?良い性格してるじゃん?
やってやんよ。絶対に負けないからな?
そう気合を入れて、エルガンの後ろ1m付近を追いかけ続ける。
展開としては、前後の入れ替わりがあった以外ほとんど変わらずだった訳だけど、最後にやってやった。
ラスト200m地点でラストスパートを掛けてやったのだ。
見事にエルガンの反応は遅れ、数歩分のイニシアチブを得た。
前回とほとんど変わらない挙動だったから油断したな?
今度は自分が仕掛ける番だと、錯覚していただろう?
いいや、違うね!今回も俺から仕掛けてやったわ!
その作戦が功を奏し、半身分のリードを持って俺が勝利した。
完勝である。
「いいや!もう一度だ!」
そうして手に入れた勝利の余韻に浸っていると、あろうことか完敗を喫した男は、再戦を申し出して来た。
もう既に格付けは済んだのだと、優越感を感じながら、やんわりと、もう再戦に意味はないことを伝える。すると。
「おや?逃げるのか?」
と、下手な煽り文句を言ってくるではないの。
はっはっはっはっは。もう、本当に、必死なんだから。
そんな分かりやすい挑発に乗る程お馬鹿さんではないよ。
言ったでしょ?もう格付けは終わったんだよ。俺が勝者で、君が敗者という結果でね。
……まあ?とは言え?うん、とは言えね。
この減らず口を叩く弱者にね、もう一度完膚なき敗北を与えてやって、ちゃんと引導を渡してあげるのも、勝者としての貫禄になるんじゃないかなって。
まあ、言ってしまえばこれは優しさだね。
ちゃんと諦めさせてあげるっていう、その為にもう1回戦ってあげることもやぶさかではないというか?
……決して、かっとなって挑発に乗った訳ではないからね?そこんとこよろしくね?
と、始まった3回戦。
結果、負けました。
エルガンがスタートから、頑なに先行しようとしてたので、次は自分で仕掛ければ負けないとでも思ってるのかなって。それを逆手に取ってまた同じ敗北を味合わせてあげようかって思った訳なんだけども。
残り500m位から、完全にこっちをブロックして前に出させないように全力を出して来やがった訳で。
抜けませんでしたとも。
この……ふざけ、ぐっ……やってくれるじゃないの。
いいや、まだイーブンだし。次やればまた俺が勝つし。
奇襲戦法で勝った位で調子に乗ってもらっちゃ困りますね。
そう言ってまたまた勝負。
そのまた次も。
そしてまた次も。
6回ほど勝負した辺りで昼飯時となり、休憩がてら一緒に飯を食う。
それもまた早食い勝負になり。
で、その後も戦いは続く訳。
ギルドの依頼で、ゴブリンの大群が街付近に巣を作ったらしく、討伐依頼が出ていたので、より多くゴブリンを倒す勝負や、素材をどれだけ集められたか。街に戻る早さから、依頼完了報告の正確さまで。
他にも事ある毎にエルガンと争った。
そして気付けば、すっかり日も暮れる時間になってしまっていたとさ。
仲良し過ぎない?
超ウケるね。




