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竜族族長の娘  作者: 五月雨 アルト
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古代文字?

またまたアシュリー視点です。






 レイミアが外にいると確信して僕達が場外を捜索しにいこうとしたときに、廊下の向こうから慌てた兵士がやって来た。よく見るとその手には紙のようなものが握られて居るのがわかる。








「グラーシア様!! レイミア様が書かれたと思われる書を発見いたしました!」


「なんですって!?」


「! 見せろ!!」


「此方です!」




 兵士が渡してきた紙には僕の知らない言語が綴られており、最後にレイミアの文字で名前が書かれていた。ーー間違いなくこれはレイミアが書いたものだろう。それにしてもこの暗号はなんのために......いや、賢いレイミアのことだ。きっと何か意味があるんだろう。






「な、何なの? この文字......少なくともこの国の文字では無いわね......古代語の類かしら......」


「我々は言語こそ共通しておりますが文字は国によって異なっている故、この紙を見付けた時自分も見たのですが、何が書いてあるのかさっぱりわかりませんでした」


「そもそもこの文字をレイミアが使えると言うことは、きっと僕達も1度は見ているはずだ。......だが、こんな文字で綴られた本、家の書物庫には無かった筈だ」





 僕達が頭を悩ませていると、今まで黙っていたノアがいきなり、可笑しくて仕方がないと言ったように笑いだした。ーーノア......?






「ふ..ふふふ...ははは」


「ノア?」


「......本当に、アシュリー兄さんはレイミアの事をよく見てないよね?......」


「何だと?」



 僕達の回りに凍てつく様な殺気が充満する。回りにいたグラーシアや兵士も息を詰め、緊張を表すように身を固くしているのが見てとれた。




「......これ、レイミアが、図書館で読んでた本に載ってた、昔の人間の文字......」


「!?」


「......レイミアが読んでる物を、僕も共有したくて......僕も読んだ」


「では、お前にはここに何が書かれているのか、レイミアが何を伝えたいのか、ノア・リントヴルム、お前にはわかると?」





 僕がレイミアの事でわからない事があると言うことに苛立ち、言葉に棘を含めノアに問うと、ノアはまた、腹立たしいぐらいに余裕の笑みをその顔に浮かべた。




「わかるよ」


「ふーん......なら、読んでみなよ」



 そう言いながら僕が乱雑に紙をノアに渡すと、ノアはその紙を解読し始めた。



 紙には"城下町に行ってきます。この時間なら人も少ないので直ぐにを買ってこれると思います。なるべく早く帰るようにしますので心配しないでください。"と、書かれている。こんなに字体が違う物を本当にノアは解読できるのか?......



 僕が未だに紙を見て考えている様子のノアを怪しげに見ていると、ノアがふと顔をあげた。





「......わかった」


「!......それで、その紙にはなんて?」


「......城下町のこの時間、人が買われる。早く帰す。心配しないで......と、書かれている......」


「そ、それって......」


「レイミアは、奴隷商人の人獣売買じんじゅうばいばいを阻止するために......!?」


「いや、それなら何故我々に協力を仰がなかったのでしょうか? これは我が国の問題でしょう。レイミア様が何処かで情報を掴んでいたとしても、それを黙っていることは無いのでは?......」


「た、確かに......そう考えると不自然ね......」


「......甘いね」




 ーーそうか、ようやく話が繋がった。




 きっと、こう言うことだろう。


この国の者ではないレイミアがその事を言ったとしても、それはとても信用性に掛けるだろう。それにレイミアは本来なら、里の外に出る事が良く思われない年齢。話しが上に通ったとして、まともな対処は望めないだろう。心優しく賢いレイミアはそれをわかっていたのだろう。だからこそ、人獣売買を知ったレイミアは放置することをできず、自分の身を鑑みず、竜族と言う甘い餌で相手を捕まえようとしていたのだろう。それをその場で言えば、「そんなの無謀よ!」とグラーシアは叫ぶようにして言った。




「......うん、そうだね......でも」


「もしそれに、協力者が居たとしたら?」



 そう、レイミアは賢い。単体でそんなことをすれば無謀だと言うことはわかりきっている。なら、いる筈なのだ。



「協力者?」


「そう。もし、レイミアが危険なときに、僕達に伝える方法と、もしものときのナビゲート魔法と転送魔法が使える者が居たとしたら、この話は無謀ではない。むしろその犯人を現行犯として捕らえられると言うわけだ。」


「で、でもそんな都合のいい者がこの国に居るなんて......それに、転送魔法は兎も角、ナビゲート魔法は妖精にしか使えない特殊魔法で......」


「ーーそれを使えるものに、一人だけ心当たりがあるものがいる」





 ーーそんな都合のいいレイミアと仲がいい存在は君しかいないよね? アリスーー




 そう問いかけるように言うと、その場に転送魔法特有の鈍い光が一瞬辺りを照す。その光が消えると、そこには金髪に妖精の証とも言える羽が生えた男の子が現れた。




「あれ、気が付かれちゃってた?」


「ちょっと前にね。あまりにも上手く行きすぎてたから、きっと誰か来てるんだろうなってね。それに、あの父がなんの対策無しでレイミアを外に出すわけないしね」



「そっかぁ......うん、僕はルイ様にレイミアちゃんのこと報告するためにこっそり着いてきてたんだ! でもレイミアちゃん、ちょくちょく僕がいる方を見てたから気が付いてた見たい」


「それなら何故一緒に行動しなかったんだ? レイミアに気がつかれていたなら、隠れる意味はない筈だ。」


「だって、レイミアちゃんが僕を見掛けても声かけてこないってことは、きっと何か理由があるんだろうなって。そしたらレイミアちゃん良く路地の方を見てたし、その向こう側で何かあるのかと見たら怪しげな男が二人、レイミアちゃんを見てたんだ。」


「何故それを僕達に報告しなかった?」


「ルイ様がレイミアの計画を崩すなって。僕もレイミアちゃんの意思を尊重したかったから言わなかったんだよ」






 なるほど、確かに彼処で僕達が下手にその事を知れば、レイミアにそんな危険な真似をさせるわけがないし、その犯人をそっちのけでレイミアを連れて里に帰っていたことだろう。そうしたらきっと犯人は逃していた筈だ。




「ちょ、ちょっと待って!! それじゃあレイミア様は今その現場に居るってこと!? しかも見張り役の妖精がここにいるって事はもし今レイミア様に何かあったら......!?」






 僕達はそのグラーシアの悲痛な叫ぶような声にハっとなり、どんどん顔色が悪くなる。





「アリス! レイミアの現在地は!?」


「"城門より500メートル東よりに行った先の路地"だよ! 僕は転送魔法で向かってるからね!!」




 そう言ってその場で消えたアリスを確認することなく僕達はレイミアの下へ最速で向かった。


 



レイミアはうっかり前世の文字を書いていたと言うね......

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