お客様
ジェーンさんがいうには、竜族の住まう里から南に位置する国、ハース王国の姫様がいろんな国をお忍びで旅行するのが趣味らしく、この度、この世界最強を誇る竜族の里に来たがったらしい。
でも、竜族の里は入国検査が他国より厳しい上に、王族が来るとなると、それなりの宿を必要とするため、今回は使者の方が、王様から手紙を預かって、挨拶に来たらしいのです。
お忍び旅行が趣味って凄いですよね......
私なんてあと50年くらいしないと外出できないのですよ? 羨ましい限りです。
そう言えば、ハース王国は確か、獣人やエルフ、魔族、天族、人間など、多くの種族がごっちゃに暮らす国として有名な所ですね。まぁ、今でこそ純血種族は殆ど暮らしておらず、そこに居るのはマミーのように、エルフ等のハーフやクォーター等が多いようです。それゆえに、差別などがなく、とても治安のよい国なので、観光客などで年中賑わっているそうです。
そんな情報を頭のなかで思い出していると、ジェーンさんが、パピーに預かっていた手紙を手渡して、また話始めた。
「今回挨拶に来た使者は、エルフと天族のハーフの者で、里までは翼で飛んできたようです。今は応接室にて、族長からの返事をお待ちして貰っております。」
そう言うと、ジェーンさんは、族長であるルイの指示を黙って待った。
「ハース王国か......彼処の王はよい人だし、貿易などでかなり優遇してもらっているため、できることなら歓迎したいのだが、問題の皇女様の噂はあまりよくない......さて、どうしたことか......」
ルイは表情を若干歪めると、手紙をまた読み進めた。
「ん?どうやら今回の旅行は珍しく皇子様もお見栄になるようだ。皇子は聡明で有名な方で、市民の信頼も厚い、だか、皇子は歓迎して皇女様だけを追い返すのは些か体が悪いな......」
話からしたら皇子が里に来ることは貿易などのこともあり歓迎するが、旅行好きの皇女様とやらは、かなりいろいろやっちゃっている人なのだろう。かなり、扱いを悩んでいるようだった。
「......仕方ない、出来ることならあまり歓迎はしたくないが、このお二人には家に泊まって貰おう。その方がいろいろ安心だ。」
どうやら何かあると困るので自分の家で見張る事にしたようだ。ルイは、その事を手紙に纏めると、執務室に使者を呼んでくるように、ジェーンさんに言った。
暫くルイの膝の上で頭を撫でられていると、部屋の戸を三回ノックする音が聞こえ、ルイが入室許可を出すと、部屋のなかにジェーンさんの他に、綺麗な天使のような翼を背中に生やした、美形か方が入って来ました。きっと天使だと言われたら、無条件で信じてしまいそうな雰囲気を持ったかたです。部屋に入ってパピーであるルイの膝の上に座っている私を見て、ぎょっとした顔を一瞬しましたが、流石に潜り抜けた場数が違うのか直ぐに表情を戻し、挨拶をし始めた。
「竜族族長殿、この度の旧な面会感謝いたします。ハース王国貿易長官のレインと申します。」
レインはそう言いながら綺麗に御辞儀をした。
「いや、時間がたまたま空いていたのでそれは構わない。手紙を読ませてもらったよ。そこで君には今日は家に泊まって貰い、明日にはこの手紙を王へ届けて貰いたいのだが、構わないね?」
ルイの言葉には疑問系ではあるが、決して選択肢があるようには聞こえなこった。
「構いません、と言うより、私は今すぐ手紙を王へ届けに帰っても良いくらいなのですが......」
レインは少しだけ眉を下げながらそう言った。どうやらここに止まっていく気ははじめから無かったようだ。
「いや、もう夕方になる、この時間に空を飛んで帰るのは危ないし、ハース王国からの者を蜻蛉返りさせるわけにはいかないからね、是非とも泊まっていきなさい。」
ルイがそう締め括ると、部屋の戸をまたしてもノックする音が響いた。
「お話し中失礼いたします。客室の用意が整いましたのでご報告に参りました」
どうやらジェーンさんが部屋を出る際に言っておいたようだ。
「あぁ、丁度よかった、レインさんを早速案内してくれ」
そう言うと侍女さんが返事をし、レインさんを連れていった。
「さて、我々は再来週に来るゲイン皇子とカレン皇女様の歓迎の準備をしなくてはいけないね」
そう言うと、ルイはレイミアの頭を数回撫でた後に抱き上げ、扉を開け、部屋の外へ出た......
すみません、9月と10月全般は学校行事がつまっているため、更新ができない日が続くかも知れません。
できる日はしますが、21日からもしかしたら難しいかも知れません。
ご了承ください......