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異世界ハーレムのミソジニスト(女性嫌悪者)  作者: 一条 剣
ジュエルシティ編
16/17

16.依頼

 佐々木茜、まさか彼女がこの世界に来ているとは思わなかった。

 いや、思いたくなかった。

 

 彼女が半年前から学校に来ていなかったのは知っていた。

 今年はクラスが一緒ではなかったため、詳しい事情は分からない。

 ただ、佐々木茜は行方不明なのではという噂は流れていた。

 

 突然いなくなったため、中には泣き出す女の子もいた。

 友達を急に失った悲しみからだろう。

 俺が突然いなくなってもみんなが悲しむ姿は想像できない。

 彼女が学校内でいかに人望があったのかを実感させられた。


「お前、あの娘と知り合いだったのか?」


 ディックが意外そうな表情でこっちを見て聞いてくる。

 何と答えればいいか躊躇していると、


「ええ、同級生だったの。私のことが好きだったのよね?もちろん、私が彼なんかを相手にするわけないけど。」


 佐々木がからかったような声や表情で言う。

 みんなはビックリした表情をしてこっちを見る。

 まさか、片想いの相手だったとは思わなかったのだろう。

 いや、正確には違うんだけどな。


 とりあえず、相手が佐々木茜である以上、みんなの前で話すとかえって混乱しそうだ。

 腰を据えて話すためにも、俺は彼女と二人で話したかった。


「佐々木さん、二人で話がしたいんだ。」

「あら?また愛の告白かしら?」

「からかうな、今後のことについて話がしたいんだ。」

「分かったわよ、じゃあ私の部屋に行きましょう。」


 おいおい、ここはヤンの家だろ。

 どうして、お前の部屋があるんだよ。

 

 まあいい、とりあえず二人で話さないことには始まらない。

 佐々木はヤンに、俺は連れの三人に許可を取り、彼女の部屋に移動した。


 彼女の部屋は二階にあった。

 部屋と言っても豪邸の一室なので、40平米くらいの広さはあった。

 

 女子の部屋に入るのは正直初めてだった。

 全体的にピンク色に統一されており、部屋の右奥あるベッドにはぬいぐるみが置いてある。

 部屋の左側には箪笥などが置いてあり、その上には花瓶に花が添えられていた。

 この国の花だろうから名前は分からないが、黄色いその花は見ている者を落ち着かせる。

 おそらく、この部屋は佐々木がこの部屋を使うようになってから自分色に染めていったのだろう。


「ちょっと、あんまり人の部屋をジロジロ見ないでくれる?」


 俺が部屋を見渡していると、佐々木は不愉快そうな声で言った。

 確かに、女子の部屋をジロジロ見るのは常識に欠けるかもしれない。

 反省しなければ。

 別に女子の部屋なんか興味ないのに、変態と勘違いされてしまう。


 俺は、改めて彼女を見つめる。

 肩まで伸びた長い黒髪。

 クリッとした瞳。

 少し赤みがかった唇。

 158程度の身長。

 Dカップある胸。

 

 美人と可愛いの中間にある顔立ち。

 俺に見せる冷徹な表情は美人のそれだったが、クラスで見せる彼女の笑顔は可愛いと呼ばれるべきものだろう。

 俺はその笑顔に惹かれて、彼女を少し気にしていた。それは事実だ。

 

 だが、こうして対面する彼女にはその持ち味の笑顔はない。

 対面している相手が俺だからだろう、常に不愉快そうなオーラを纏っている。

 正直、中学時代の軽蔑した視線は堪えたが、今は笑顔でいられるよりこっちの方が話しやすい。

 俺は話を切り出した。


「なあ、お前こんなところで何をしているんだ?」

「何って、ヤンと生活しているだけよ。」

「この世界が日本じゃないことは分かっているだろ!?」

「ええ、分かっているわ。」

「帰ろうとはしなかったのか?」

「最初は帰ろうとしたわよ、でもやめたの。」

「なんでだよ!?」

「ヤンを愛してしまったからよ!」


 佐々木は真剣な表情で言い切った。


「ヤンはね、優しいの。私が倒れているのを看病してくれたのもヤンだったわ。」

「でも、所詮は俺ら違う世界の人間だぞ!?元の世界の両親は心配じゃないのか?」

「別に、家族関係もそんなに良くなかったし。」

「友達だっていただろ!?お前がいなくなって泣いてたぞ」

「それは悪いことをしたわね。もちろん私も最初は皆と会いたいと思ったわ。でもね、所詮一カ月もすれば誰かがいない状況なんて慣れちゃうわ。みんなもきっと私のことをもう忘れてるはずよ。いずれにせよ、絶対に元の世界に戻らなければいけないなんて、そんな理由は私にはないわ。」


 なるほど、道理で半年もここにいたわけだ。


「あなたには、絶対に日本に戻らなければいけない理由があるの?」

「それは…」


 確かに彼女の言う通りだ。

 結局、元の世界に戻っても馬鹿にされるだけじゃないのか?

 でも、


「元の世界に戻る理由もないが、この世界にずっといる意味もない。だったら、勝手を知っているあっちの世界に俺は戻りたい。」

「そうなの、わかったわ。」


 佐々木が興味なさそうに返事をする。

 彼女は俺に対してもう興味はないのだろう。

 だが、おれはどうしても気になることがあった。


「なあ、お前秋吉と付き合っていたんだろ?それでも、戻らなくていいのか?」

「あら?彼と付き合っていたのは一年前までよ。フラれたわ。」

「フラれたらもうそれで終わりか?すぐに次へいけるのか?」

「そりゃあ、フラれた直後は落ち込んだわよ。中々立ち直れなかったわ。でも、いつまでも引きづっていても仕方ないじゃない?」

「そっか、お前の考えは分かったよ。」


 分かったとは言ったが正直分からない。

 俺はこいつの考えを理解できなかった。


 だが、こんな女の考えを理解したところで意味はない。

 俺は女が嫌いだし、向こうも俺のことは気持ち悪いと思っているはずだ。


 だとしたら、とっとと用件を済ませてこの街から立ち去ろう。

 それがお互いのためだと思う。


「お前に帰る意志がないのはよく分かった。別にこの世界に留まろうとそれは自由だろう。」

「別にあんたなんかに許可をもらわなくても勝手にやるわ。」

「だが、俺はさっきも言ったが帰りたいんだ。何か、この世界と俺たちのいた世界を結ぶ重要な情報があったら教えてくれないか?」

「なるほどね、あんたがわざわざここに来たのはそれが目的なのね?」

「ああ、そうだ。同じ日本から来た人間なら何か知ってると思ってな。」

「あんたはいつこの世界に来たの?」

「俺は5日前にこの世界に来たばかりだ。アークシティという所にいた。」

「へー、あのアークシティからね~。なるほどなるほど…。」


 佐々木は納得したように頷くと俺の方を興味深そうに見た。

 そして、独り言のように呟いた。


「たった5日で私のところに辿り着くなんて…。意外とこの男使えるかも…。」


 おい、独り言は人に聞こえないように言えよ!

 だが、使えるってどういうことだ?

 疑問に思って佐々木を見ると、何か企んだような笑顔で言った。


「確かに私は、向こうの世界に戻るのに重要な情報を持ってるわ。ただし、」

「ただではやらんということか。」

「そういうこと!よく分かってるじゃない!」

「分かった。俺に出来ることなら協力する。何をすればいいんだ?」


 俺がうんざりした調子で聞くと、彼女はさっきの笑顔から一転真剣な表情に変わり言った。



「ヤンを町長選で勝利に導いて欲しいの!」


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