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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オープンの章

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第98話 開館当日



朝。


第三アクアリス水族館は、異様なほど静かだった。


それは嵐の前の静けさではない。


緊張と期待が入り混じった、特別な静けさだった。


まだ開館前。


しかし館内のあちこちには、すでに人の気配があった。


飼育員たち。


スタッフたち。


そしてアクアリスたち。


誰もが今日という日を意識していた。



中央エリア。


巨大なガラス越しに朝の光が差し込む。


水槽の中では魚たちがゆっくりと泳いでいる。


その光景を見つめながら、館長は深く息を吐いた。


「……ついにこの日ね」


手元の時計は開館時間を刻もうとしている。


あと少し。


その隣で飼育員が頷く。


「準備、完了しています」


「ありがとう」


館長は短く答えた。


しかしその声には、いつも以上に力があった。



海藻エリア。


ヒメタツは静かに立っていた。


リーフィーシードラゴンも隣にいる。


「ついに、ですわね」


ヒメタツの声は少しだけ震えていた。


「うん」


リーフィーシードラゴンは落ち着いている。


だが、その目はどこか遠くを見ていた。


「昨日まで準備してたのに、もう今日なんだね」


「時間というものは、不思議ですわ」


ヒメタツは海藻を見上げる。


水流に揺れているそれは、まるで拍手のようだった。


「お客様、たくさん来るかしら」


「来ますわ」


ヒメタツは少し笑った。


「なら、ちゃんと迎えないとですわね」



深海エリア。


ニシオンデンザメはまだ眠そうだった。


「むにゃ……もう開館かのう……」


メガマウスザメは冷静に答える。


「もうすぐです」


ジンベエザメは周囲を見渡していた。


「落ち着いていますね」


「ワシはいつでも落ち着いとるぞい」


「今寝てましたけど」


「夢の中でも落ち着いとった」


ジンベエザメは笑う。


メガマウスザメも少しだけ口元を緩めた。


その時。


館内放送が鳴る。


『まもなく開館いたします』


静寂が一瞬だけ止まる。


そして。


全員の意識が一点に集まった。



珊瑚エリア。


ミズクラゲはくるくる回っていた。


「始まるー!」


「落ち着いてください」


ウデフリツノザヤウミウシが優しく言う。


ハダカカメガイは静かに揺れている。


カブトガニはゆっくり歩きながら言った。


「本日が始まりの日です」


「そうだね!」


ミズクラゲは止まらない。


「いっぱい見てもらえるかな!」


「見てもらえますよ」


ウデフリツノザヤウミウシは微笑む。


その時。


照明が少しだけ強くなる。


開館準備の最終確認が終わったのだ。



アマゾンエリア。


デンキウナギは静かに配線を確認していた。


ミナミメダカが隣でジャンプするように動く。


「準備OKです!」


「問題ありません」


デンキウナギは短く答える。


だが、その指先はわずかに光っていた。


ミナミメダカは笑う。


「いよいよですね!」


「……えぇ」


その一言には、確かな感情があった。



開館直前。


中央エリア。


アクアリスたちが集まっていた。


館長が前に立つ。


「みんな」


静かに声が響く。


「今日、この水族館は開館します」


一瞬の沈黙。


そして。


「私たちの努力の成果を、見せる日です」


誰も言葉を挟まない。


しかし空気は熱を帯びていた。


ヒメタツが一歩前に出る。


「準備はできていますわ」


ミナミメダカも頷く。


「元気いっぱいです!」


ジンベエザメは優しく言う。


「楽しみにしています」


ミズクラゲは跳ねる。


「いえーい!」


ニシオンデンザメは大きく伸びをする。


「ようやくかのう」


メガマウスザメは静かに目を閉じた。


「始まる」


その瞬間。


館内の照明が一段階上がる。


開館の合図。


外の扉がゆっくりと開く。


最初の来館者の気配が流れ込んでくる。


人の声。


足音。


驚きの気配。


そして。


歓声。


「わぁ……!」


「すごい……!」


第三アクアリス水族館。


ついに、開館した。


アクアリスたちはそれぞれの場所でその音を聞いていた。


静かに。


しかし確かに。


この瞬間を受け止めていた。


そして誰もが思う。


ここからが、本当の始まりだと。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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