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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オープンの章

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第99話 来館者の海


第三アクアリス水族館は、開館初日にもかかわらず異様なほど順調だった。


いや、順調すぎるほどだった。


館内のあちこちで歓声が上がり、ガラス越しの海の世界に人々が目を奪われている。


「すごい……本物みたい……」


「いや、本物なんだよなこれ……?」


そんな声が絶え間なく流れ込んでくる。


その一つ一つが、アクアリスたちのいる水槽へと届いていた。



中央エリア。


館長は静かに来館者の流れを見ていた。


その隣で飼育員が報告する。


「入館者、想定よりかなり多いです」


「そう」


館長は短く答える。


だが、その表情には驚きと、ほんの少しの誇りがあった。


「トラブルは?」


「今のところゼロです」


「優秀ね」


館長は小さく笑った。


その視線の先では、アクアリスたちがそれぞれの場所で来館者に見守られていた。



海藻エリア。


ヒメタツは少し緊張していた。


リーフィーシードラゴンはいつも通り落ち着いている。


水槽の前には子どもたちが集まっている。


「かわいい……!」


「本当に海藻みたい!」


その声に、ヒメタツは小さく瞬きをした。


「見られてますわね……」


「うん」


リーフィーシードラゴンは静かに答える。


だが、どこか嬉しそうだった。


「怖くはないですの?」


「怖くはないよ。少し、くすぐったいだけ」


ヒメタツはその言葉に笑う。


「なら良かったですわ」


水槽の外では、手を振る子どもたち。


ヒメタツも小さく手を振り返した。



深海エリア。


ニシオンデンザメは早くも眠そうだった。


「ふぁ……人間というのは騒がしいのう……」


メガマウスザメは淡々と答える。


「でも見てますよ」


「ワシは見られるのは慣れとらんのう」


ジンベエザメはゆっくりと泳ぎながら言う。


「でも、みんな楽しそうです」


水槽の前では大人も子どもも驚いていた。


巨大な影がゆっくりと通るたびに歓声が上がる。


「でかい……!」


「本物のサメだ!」


ニシオンデンザメは少しだけ目を細めた。


「……悪い気はせんのう」


メガマウスザメは静かに言う。


「それは良かったです」


その時、ジンベエザメがゆっくりと回転する。


光が水の中で揺れる。


それだけで歓声がさらに大きくなった。



珊瑚エリア。


ミズクラゲは完全に人気者だった。


「ふわふわしてる!」


「かわいいー!」


「生きてるのこれ!?」


ウデフリツノザヤウミウシは落ち着いて説明している。


「はい、生きています。刺激は弱いですが触れないようにしてください」


カブトガニはゆっくり歩きながら言う。


「昔から変わらぬ姿です」


ハダカカメガイは静かに漂う。


「透明で綺麗……」


その声に、ハダカカメガイはわずかに傾いた。


ミズクラゲは嬉しそうに回る。


「見て見てー!」


「やめなさい、落ち着きなさい」


ウデフリツノザヤウミウシの声は優しい。


だがどこか母親のようだった。



アマゾンエリア。


デンキウナギは静かに泳いでいた。


その周囲では小さな光がゆっくりと走っている。


「わ……光った!」


「電気だ!」


来館者が驚いている。


ミナミメダカは嬉しそうに跳ねていた。


「すごいです!」


「危険はありません」


デンキウナギは淡々と答える。


しかしその指先が軽く動くと、水槽の光がふわりと変わる。


「わぁ!」


「すごい演出みたい!」


「違います」


即答だった。


だが、少しだけ誇らしげでもあった。


ミナミメダカは笑う。


「人気者ですね!」


「……そうですか」



館内全体。


人の流れは止まらない。


むしろ増えていた。


館長はその光景を見ていた。


「予想以上ね」


飼育員が言う。


「はい、完全に成功です」


館長はゆっくり頷いた。


しかしその目は遠くを見ていた。


海の向こう。


誰にも気付かれないほど小さな違和感。


それでも確かにそこにある“何か”。


館長はそれを見逃さなかった。


だが何も言わない。


「……順調すぎるわね」


その言葉は誰にも届かない。


来館者の歓声にかき消された。



アクアリスたちは、それぞれの場所で感じていた。


今日という日の重さ。


そして楽しさ。


人間たちの視線。


そして期待。


水族館は、確かに成功していた。



ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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