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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オープンの章

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第100話 ようこそ、第三アクアリス水族館へ


第三アクアリス水族館。


開館初日。


朝から多くの人々で賑わっていた館内は、夕方になっても活気を失うことはなかった。


中央エリアでは子どもたちの笑い声が響き、クラゲ館では幻想的な光景に大人たちが足を止める。


海藻エリアでは海の森に驚く声が聞こえ、深海エリアでは巨大な魚たちに歓声が上がる。


それは館長が夢見た光景。


飼育員たちが目指した景色。


そしてアクアリスたちが守ってきた場所だった。



中央エリア。


館長は大水槽を見上げていた。


巨大な魚たちがゆったりと泳いでいる。


ジンベエザメの妹も、その中を優雅に泳いでいた。


「綺麗ね……」


館長はぽつりと呟く。


隣には飼育員。


「はい」


「ここまで長かったわね」


「本当に」


準備の日々。


工事。


展示。


掃除。


点検。


訓練。


アビスとの戦い。


様々な出来事があった。


だが、それらすべてが今日へと繋がっている。



海藻エリア。


リーフィーシードラゴンは海藻の揺れる水槽の前に立っていた。


ヒメタツも隣にいる。


来館者たちは少しずつ帰り始めていた。


「静かになってきましたわね」


「そうだね」


海藻が揺れる。


水が揺れる。


夕方の光が差し込む。


「無事に終わりそうですわ」


「うん」


リーフィーシードラゴンは小さく微笑んだ。


「よかった」


その一言には多くの想いが込められていた。



小魚エリア。


ミナミメダカは走り回っていた。


もちろん仕事である。


「こちらです!」


「はい!」


「ありがとうございます!」


飼育員たちの手伝いをしながら笑顔を絶やさない。


デンキウナギはその様子を見ていた。


「元気ですね」


「はい!」


「疲れませんか」


「疲れます!」


即答だった。


デンキウナギは少しだけ目を丸くする。


「でも楽しいです!」


その笑顔に。


デンキウナギもわずかに微笑んだ。



珊瑚エリア。


ミズクラゲはくるくる回っていた。


「今日はいっぱい人が来たね!」


ハダカカメガイは頷く。


「そうですね」


カブトガニはのんびり歩く。


「平和ですねぇ」


ウデフリツノザヤウミウシは微笑む。


「えぇ」


水槽の向こうでは最後の来館者たちが写真を撮っていた。


みんな笑顔だった。


それだけで十分だった。



深海エリア。


メガマウスザメは暗い水槽の中を見ていた。


ニシオンデンザメは相変わらず眠そうである。


「ふぁぁ……」


「寝てました?」


「半分ほどな」


ジンベエザメがくすりと笑う。


「寝ながら会話できるのですか?」


「長生きするとできるのじゃ」


「本当ですか?」


「多分のう」


メガマウスザメは静かに言う。


「適当」


「うむ!」


深海エリアには穏やかな笑い声が広がった。



海鳥エリア。


キマユペンギンはペンギンたちを見守っていた。


夕陽が差し込む。


黄金色の光が羽を照らす。


飼育員が近付いてくる。


「お疲れさま」


「はい」


「どうだった?」


少し考える。


そして答えた。


「……楽しかったです」


その言葉に飼育員は笑った。


「それは良かった」


キマユペンギンも小さく笑う。


今日は悪くない日だった。



閉館時間。


館内放送が流れる。


来館者たちが少しずつ出口へ向かう。


賑やかだった館内が静かになっていく。


そして最後の来館者が帰った。


第三アクアリス水族館。


初日の営業終了である。



夜。


館長室。


館長は今日の報告書を見ていた。


来館者数。


展示状況。


設備状態。


どれも良好。


問題なし。


飼育員が資料を置く。


「完璧ですね」


「えぇ」


館長は笑う。


「みんなのおかげよ」


窓の外を見る。


そこにはライトアップされた水族館。


静かに輝いている。



館内。


アクアリスたちはそれぞれの場所へ戻っていた。


疲れている者。


眠そうな者。


まだ元気な者。


みんな違う。


だが共通していることが一つだけあった。


嬉しかったのだ。


来館者が笑ってくれたこと。


海の生き物を好きになってくれたこと。


水族館を楽しんでくれたこと。


それが何より嬉しかった。



クラゲ館。


静かな光が漂う。


ミズクラゲが天井を見上げる。


「明日もいっぱい来るかな」


誰も答えない。


けれど。


どこかで誰かが笑っている。


どこかで誰かが海に興味を持つ。


そのきっかけになれるなら。


それはとても素敵なことだ。



海の近く。


夜の波が静かに打ち寄せる。


アビス撃退用大水槽へ繋がる海も静かだった。


今夜は何も現れない。


風も穏やか。


波も穏やか。


まるで祝福しているかのようだった。



第三アクアリス水族館。


ここは海の仲間たちが暮らす場所。


絶滅危惧種も。


深海魚も。


クラゲも。


サメも。


海鳥も。


みんなが生きる場所。


そして人と海を繋ぐ場所。


明日もまた。


新しい来館者が訪れるだろう。


新しい出会いが生まれるだろう。


新しい笑顔が生まれるだろう。


館長も。


飼育員も。


アクアリスたちも。


それを楽しみにしている。


夜空には月が浮かんでいた。


アクアリスたちを生んだ優しい光。


その月明かりに照らされながら。


第三アクアリス水族館の夜は更けていく。


静かに。


穏やかに。


そして幸せに。


――ようこそ、第三アクアリス水族館へ。


海の仲間たちは、いつでもあなたを待っています。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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