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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
オープンの章

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第96話 静かな開館前夜


第三アクアリス水族館。


オープン予定日まで残りわずか。


大規模なアビス襲撃を乗り越えた館内には、再び穏やかな時間が流れていた。


もちろん、誰も油断はしていない。


それでも。


準備を止めるわけにはいかなかった。


朝日が差し込む中央エリア。


巨大水槽の青い光が床へ揺れている。


館長は完成した案内板を見ながら頷いた。


「うん、いい感じね」


飼育員たちも忙しく動き回っている。


展示説明の確認。


水槽の最終点検。


照明の調整。


お土産コーナーの準備。


やることは山ほどある。


そんな中。


通路を歩く小さな影があった。


ヒメタツだった。


ヒメタツは完成間近の館内を見渡しながら微笑む。


「いよいよですわねぇ」


以前は何もなかった場所。


工事中だった場所。


まだ水槽だけだった場所。


それらが今では立派な展示になっている。


思わず感慨深くなる。


そこへ。


淡い緑色の髪を揺らしながらリーフィーシードラゴンがやって来た。


「何見てるの?」


「館内ですわ」


「なるほど」


リーフィーシードラゴンも静かに周囲を見る。


海藻エリア。


クラゲ館。


深海エリア。


案内表示。


休憩スペース。


どれも完成している。


「本当にもうすぐなんだね」


「ですわね」


二人は少しだけ嬉しそうに笑った。


その頃。


深海エリア。


巨大水槽内ではニシオンデンザメが昼寝をしていた。


巨大な岩の上。


完全に熟睡している。


ぐぅ。


ぐぅ。


規則正しい寝息。


その近くではメガマウスザメが展示説明を眺めていた。


古代魚。


深海魚。


発光生物。


説明文を一つずつ読んでいる。


そこへ。


ジンベエザメが現れた。


「あら」


「......こんにちは」


「また読書ですか?」


「うん」


メガマウスザメは小さく頷く。


「知らないことがいっぱいあるから」


ジンベエザメは優しく微笑んだ。


「素敵なことですね」


その時。


岩の上から声がする。


「むにゃ......焼き魚定食......」


ニシオンデンザメだった。


寝言である。


ジンベエザメが思わず吹き出す。


メガマウスザメも少しだけ笑った。


「......また寝言」


「ふふっ」


平和だった。


とても平和だった。



一方。


珊瑚エリア。


ミズクラゲが元気よく走っていた。


「わーい!」


後ろにはウデフリツノザヤウミウシ。


さらにハダカカメガイ。


そして巡回中のカブトガニ。


ミズクラゲは新しい展示を見つけるたびに足を止める。


「あっ!」


「どうしました?」


「この照明かわいい!」


天井から降り注ぐ光。


まるで海面の揺らぎを再現したような演出だった。


ハダカカメガイも見上げる。


「綺麗ですね」


カブトガニはゆっくり頷いた。


「観覧する人も喜ぶと思うのです」


「だよね!」


ミズクラゲの笑顔は明るい。


ウデフリツノザヤウミウシも微笑む。


「きっと人気になりますよ」


すると。


遠くで作業していた飼育員が手を振った。


「みんなー!ありがとうね!」


「はーい!」


ミズクラゲも元気に手を振り返す。


それを見ていた飼育員たちは笑顔になった。


この水族館は。


人間だけでは作れない。


アクアリスたちもまた大切な仲間なのだ。



アマゾンエリア。


デンキウナギは配線確認を手伝っていた。


弱い電気を流しながら機械の動作を確かめている。


飼育員。


「助かるよ」


静かに頷く。


「異常ありません」


その隣ではミナミメダカが一生懸命に説明パネルを運んでいた。


「これどこですかー?」


「あっちだよ!」


「はーい!」


元気いっぱい。


何度も往復している。


デンキウナギはその姿を見て少しだけ微笑んだ。


「元気ですね」


「ミナミメダカちゃんだからね」


飼育員も笑う。


ミナミメダカは疲れているはずなのに。


いつも笑顔だった。



夕方。


館内はオレンジ色の光に包まれていた。


作業も終盤。


アクアリスたちは中央エリアへ集まっていた。


ヒメタツ。


リーフィーシードラゴン。


ミナミメダカ。


メガマウスザメ。


ニシオンデンザメ。


ジンベエザメ。


ミズクラゲ。


ハダカカメガイ。


ウデフリツノザヤウミウシ。


カブトガニ。


デンキウナギ。


フウセンウオ。


他にも多くのアクアリスたち。


皆が巨大水槽を見上げていた。


館長がゆっくり前へ出る。


「みんな」


自然と静かになる。


館長は微笑んだ。


「ここまで本当にありがとう」


誰も喋らない。


館長は続ける。


「第三アクアリス水族館は、みんなのおかげでここまで来られたわ」


アクアリスたちは真剣に聞いていた。


「もうすぐ開館です」


その言葉に。


館内の空気が少し変わる。


実感が湧いたのだ。


本当に。


あと少しなのだと。


ヒメタツが小さく呟く。


「楽しみですわ」


ミナミメダカも頷く。


「いっぱい来てくれるといいな」


ジンベエザメ。


「きっと来てくださいます」


ミズクラゲ。


「楽しみー!」


ニシオンデンザメ。


「賑やかになるのう!」


笑い声が広がる。


館長も笑った。


「えぇ」


しかし。


その時だった。


館長の視線が一瞬だけ窓の外へ向く。


遠い海。


夕焼けに染まる水平線。


この穏やかな時間を大切にしたかった。


中央エリアには笑顔が溢れている。


開館の日は近い。


第三アクアリス水族館。


その新たな物語が始まる日は、もう目前まで迫っていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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