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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
リーフィーシードラゴンの章

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第88話 海藻の森と小さな変更



第三アクアリス水族館、海藻エリア。


淡い緑色の髪を揺らす少女は、設計図のような紙を静かに見つめていた。


リーフィーシードラゴン。


その隣では館長がメモを取りながら何度も頷いている。


少し離れた場所から様子を見ていたヒメタツは、興味津々といった様子で近寄った。


「何を描いていますの?」


「海藻エリアの調整案」


「調整案?」


「うん。今のままでも悪くない。でも、人が来た時にもっと生き物たちを観察しやすくできると思う」


館長が笑う。


「リーフィーシードラゴンちゃんは細かいところによく気が付くのよ」


「そんなことないよ」


そう言いながらも、紙の上には細かな書き込みがびっしり並んでいた。


海藻の配置。


展示水槽の位置。


説明看板の角度。


休憩用ベンチの場所。


どれも来館者が見やすく、そして生き物たちが落ち着けるよう考えられている。


ヒメタツは目を丸くした。


「すごいですわ……!」


「普通だよ」


「普通ではありませんわ!」


思わず声が大きくなる。


リーフィーシードラゴンは少しだけ困ったように目を逸らした。


褒められるのはあまり得意ではないらしい。


館長がくすりと笑う。


「でも本当に助かっているのよ」


「役に立てるなら、それでいい」


海藻エリアを見渡す。


背の高い海藻模型が並び、緑色の照明が幻想的な雰囲気を作り出している。


まだオープン前ではあるが、すでに完成形に近い。


それでも細かな改善点は見つかるものだ。


ヒメタツは設計図を覗き込んだ。


「あら、この通路が少し広くなっていますわね」


「車椅子の人とか、小さい子が来ても通りやすいと思って」


「なるほどですわ!」


「あと、ここ」


細い指が図面の一角を指す。


「観察窓」


「観察窓?」


「低い位置に作るの」


館長も頷く。


「小さなお子さんでも見やすいようにね」


「わぁ!」


ヒメタツの表情が明るくなる。


「それは素敵ですわ!」


海藻の森の中を覗き込むような小窓。


そこから魚や海藻を眺められる。


想像しただけで楽しそうだった。


「人間の子供って、ああいうの好きだから」


「詳しいですのね」


「勉強した」


少しだけ誇らしげな顔。


ヒメタツは思わず笑った。


「ふふっ」


「何?」


「いえ、楽しそうだなと思いまして」


リーフィーシードラゴンは一瞬きょとんとしたあと、小さく視線を逸らした。


「そうかな」


「そうですわ」


海藻が揺れる。


空調の風で装飾の葉がさらさらと音を立てた。


館長は設計図をまとめながら満足そうに言う。


「これで決まりね」


「うん」


「ありがとうございますわ!」


「お礼を言われることじゃないよ」


それでもどこか嬉しそうだった。


しばらく三人で海藻エリアを歩く。


完成間近の展示。


説明看板。


照明。


足元の装飾。


どれも少しずつ形になっている。


ヒメタツはふと立ち止まった。


「完成したら、たくさんの人が来ますわね」


「そうだね」


「緊張します?」


リーフィーシードラゴンは少し考えた。


そして静かに答える。


「少し」


「意外ですわ!」


「でも」


淡い緑色の瞳が海藻の森を見つめる。


「楽しみでもある」


その言葉に館長も微笑んだ。


「私もよ」


「わたくしもですわ!」


三人の声が重なる。


まだ開館していない水族館。


けれどそこにはすでに賑やかな未来が見えていた。


子供たちの笑顔。


生き物に驚く声。


新しい発見。


新しい出会い。


それらを想像すると自然と胸が温かくなる。


その時だった。


館内放送が静かに流れる。


『飼育員の皆様、本日の点検作業を開始してください』


館長が時計を見る。


「あら、もうそんな時間」


「早いですわね」


「じゃあ私は次の確認に行く」


リーフィーシードラゴンが歩き出す。


ヒメタツが慌てて後を追った。


「どちらへ?」


「海藻水槽の最終確認」


「わたくしもお手伝いしますわ!」


「そう?」


「もちろんですわ!」


館長が笑う。


「ふたりともお願いね」


「はい!」


「うん」


海藻エリアの奥へ向かう二人。


完成へ向かって少しずつ進む第三アクアリス水族館。


今日もまた、穏やかで優しい時間が流れていた。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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