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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
シーラカンスの章

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第83話 過去を知り、今を知る



ここは、アクアリス達が暮らしている。オープン前の第三アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


第三アクアリス水族館 古代水生生物模型展示エリア。


静かな展示エリアには青い光が広がっていた。


巨大な古代魚の模型。


天井に映し出される古代の海。


そして説明パネル。


その中をシーラカンスとメガマウスザメはゆっくり歩いていた。


先程まで古代の海について話していた二人だったが、気付けば展示の奥まで来ていた。


「ふむ」


シーラカンスが足を止める。


「どうしたの?」


メガマウスザメが首を傾げる。


「これじゃ」


シーラカンスが指差した先には巨大な魚類進化図が描かれていた。


太古の魚達から現在の魚類へ続く長い系統図。


無数の名前が並んでいる。


「難しい......」


メガマウスザメは思わず呟いた。


「はっはっは、それは仕方ないのう」


シーラカンスは楽しそうだった。


「ワシも全部は覚えておらん」


「そうなの?」


「うむ」


「なんか詳しそう」


「詳しいというより好きなだけじゃ」


シーラカンスは図を眺める。


「昔の生き物を知ると今の生き物も面白く見える」


「今の生き物?」


「例えばメガマウスザメ」


「......私?」


「そうじゃ」


メガマウスザメは少し驚く。


シーラカンスは頷いた。


「お主もかなり変わった魚じゃからな」


「......そう?」


「そうじゃとも」


「大きな口」


「プランクトンを食べる」


「滅多に見つからん」


「発見されたのも最近じゃ」


メガマウスザメは少し考える。


確かに自分は他のサメとは少し違う。


「......そうかも」


「じゃろう?」


シーラカンスは嬉しそうだった。


「珍しい生き物というのはな」


「うん」


「生き残った理由があるんじゃ」


その言葉にメガマウスザメは耳を傾ける。


「生き物は環境に合わせて変わる」


「変われなかったものは消える」


「変われたものは残る」


シーラカンスは静かに模型を見上げた。


「じゃが時には」


「うん」


「昔の姿のまま生き残る者もおる」


「シーラカンスみたいに?」


「そうじゃな」


シーラカンスは笑う。


「だからワシはよく生きた化石と呼ばれる」


「かっこいい」


「そうか?」


「うん」


即答だった。


シーラカンスは少し照れたように頭を掻く。


「そう言われると悪い気はせんのう」


その時だった。


展示エリアの奥から声が聞こえてきた。


「おーい!」


元気な声だった。


二人が振り返る。


そこには館長がいた。


「やっぱりここにいたのね」


「おぉ、館長殿」


「......こんにちは」


館長は二人の元へ歩いてくる。


「楽しんでる?」


「うむ」


「......勉強中」


「ふふっ、それはよかった」


館長は周囲を見回した。


巨大な模型。


説明パネル。


古代魚達。


そして穏やかな二人。


「ここって不思議よね」


館長が呟く。


「うむ?」


「今はいない生き物ばかりなのに、どこか生きてるように見えるの」


シーラカンスは頷いた。


「わかるのう」


「そう?」


「うむ」


シーラカンスは模型を見上げる。


「人間達が覚えておるからじゃ」


館長は少し驚いた顔をした。


「覚えているから?」


「そうじゃ」


「姿を記録し」


「研究し」


「展示し」


「語り継ぐ」


「だから消えても完全には消えぬ」


館長は優しく微笑んだ。


「なるほどね」


メガマウスザメも展示を見上げる。


確かにそうかもしれない。


ここにある模型も。


説明文も。


全て誰かが残したものだ。


だから今の自分達は昔を知ることができる。


「......大事なことかも」


「うむ」


シーラカンスは頷く。


「知ることは大事じゃ」


「昔を知れば」


「今も見えてくる」


「未来も少し見える」


館長は感心したように笑った。


「シーラカンスちゃんって時々すごく先生みたいになるわよね」


「そうかの?」


「うん」


「......確かに」


メガマウスザメも同意する。


シーラカンスは困ったように笑った。


「年寄り扱いされておる気がするのう」


「実際そうなのでは?」


「館長殿まで!」


三人の間に笑いが広がった。


静かな展示エリア。


そこに柔らかな笑い声が響く。


古代の海を再現した空間はどこか神秘的だったが、その中にいる三人はとても自然だった。


館長は時計を見る。


「さて」


「うむ?」


「そろそろ見回りの時間なの」


「もうそんな時間か」


「......早い」


館長は頷いた。


「オープン前でもやることはいっぱいあるからね」


「確かにのう」


シーラカンスはゆっくり立ち上がる。


メガマウスザメも後に続いた。


三人は出口へ向かって歩き始める。


その途中。


シーラカンスは最後に一度だけ振り返った。


巨大な古代魚の模型。


悠久の海の映像。


語り継がれる命の歴史。


「また来るとするかの」


小さく呟く。


メガマウスザメも振り返った。


「......うん」


館長も微笑む。


「いつでも来ればいいわ」


三人はそのまま展示エリアを後にした。


古代の海へ想いを馳せながら。


そして今を生きる海の仲間達のもとへ向かいながら。


今日もまた、第三アクアリス水族館には穏やかな時間が流れていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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