第7話「深海組のお掃除大作戦」
ここは、アクアリス達が暮らしているアクアリス水族館。
今日も今日とて平和です。
開館準備の進む館内では、今日も飼育員たちが忙しそうに動き回っていた。通路の清掃、設備の点検、水層の管理――やることは山ほどある。
「....ふぅ、ここのあたりの掃除はこれくらいでいいかな、......ん?....君たち、どうしたの?」
床を磨いていた飼育員の青年が顔を上げる。
そこには二人の少女が立っていた。
一人はふわふわとしたピンク色の髪を揺らす、どこかのんびりした雰囲気の少女。
もう一人は白髪の小柄な少女で、目をきらきらさせながら辺りを見回している。
「飼育員さん、」
「飼育員さん!!こんにちは!」
「あれ?君たちは、深海エリアの子たちだよね?」
「ん?、暇だから来た」
センジュナマコ:「板足目 クマナマコ科 センジュナマコ属 センジュナマコ」 深海数千メートルの深海に生息するクマナマコ科の生き物です。ピンク色の風船のような半透明の身体を持ち長く伸びた管足で海底を歩く姿から海の豚の愛称で親しまれる。深海の泥中に含まれる有機物を食べる。集団で同じ方向を向いて移動する
「うん、来た」
ダイオウグソクムシ:「ウオノエ亜目 スナホリムシ科 オオグソクムシ属 ダイオウグソクムシ」等脚類としては世界最大であり体長は20〜40センチメートルで最大50センチメートル近くにもなる世界最大のダンゴムシの仲間。鎧のような外殻を持った甲殻類でクジラの死骸などを食べることから「海の掃除屋」として知られる。5年以上断食した個体などもいるらしい
「暇って、」
飼育員は少し苦笑する。
するとセンジュナマコが、通路の端に設置された小さな水槽を指差した。
「ねぇ、飼育員さん....ここ、なに?これ、なに?」
「なになに〜!」
二人は興味津々で身を乗り出す。
「ん?あぁ、これはタッチプールって言うものだよ。そしてこの生き物はイトマキヒトデって言う種類だよ」
浅い水槽の中では、星形のヒトデがゆっくりと張り付くように動いていた。
「どうして剥き出しなの〜?」
「触れてしまいますよ?」
深海組の二人は、不思議そうに水槽を見つめる。
「そういうやつだからね。タッチプールは生き物とのふれあいができるんだ」
「なるほどです。」
「そうなんだね~!」
ダイオウグソクムシはぱたぱたと嬉しそうに動き回る。
飼育員はそんな二人を見ながら、少しだけ安心したように笑った。
「君たちも楽しんで行くといいよ。オープンに向けて、様々な施設や生き物が次々と来る予定だからね」
「うん.........」
「うん!!」
元気よく返事をする二人。
その姿を見て、飼育員はぽつりと呟く。
「みんな元気そうだね」
「飼育員さんは、何してたんですか?」
「ん?見ての通り掃除だよ。いつお客さんが来てもいいように綺麗にしてるんだよ」
「お掃除!!」
ダイオウグソクムシの目が輝く。
「お手伝いしますよ」
センジュナマコが静かに言った。
「え!?いいよ、これは僕達飼育員の仕事だから」
しかし二人は止まらない。
「海の掃除屋を」
「舐めないでね!」
「いや、そういうことじゃなくて、」
「わぁ〜い!」
「あぁ!!」
ダイオウグソクムシは勢いよく掃除用モップを持ち上げる。
「失礼します」
センジュナマコは落ち着いた様子でバケツを抱えた。
二人はそのまま掃除を始めてしまう。
ダイオウグソクムシは楽しそうに床を磨き、センジュナマコは丁寧に手すりを拭いていく。
思った以上に真面目だった。
「......まぁ、いいか、、、終わったら返すんだよ~」
二人は元気よく振り返る。
「はーい!!」
しばらくして。
通路の床は驚くほど綺麗になっていた。
「ぴかぴか〜!」
ダイオウグソクムシは満足そうにモップを掲げる。
「綺麗になりましたね」
センジュナマコも静かに頷く。
飼育員は少し驚いたように周囲を見回した。
「……本当に綺麗になってる」
「当然です」
「海の掃除屋だからね〜!」
二人はどこか誇らしげだった。
そんな様子を見て、飼育員は小さく笑う。
「ありがとう。助かったよ」
「ふふん♪」
「役に立てましたか?」
「うん、すごくね」
その言葉に、センジュナマコは少しだけ嬉しそうに目を細めた。
まだ開館前のアクアリス水族館。
けれど、そこでは今日も少しずつ、“みんなの場所”が作られていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




