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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
キマユペンギンの章

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第71話「空飛ぶペンギンとお昼の見回り」


ここは、アクアリス達が暮らしている。オープン前の第三アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


海鳥エリア、ペンギンアイランド。様々な種類のペンギン属のいるエリアにて。


「キマユペンギンちゃん~!調子どう?」


飼育員さんが声をかけると黒と白を基調にした髪に黄色い冠羽のような髪飾りの少女が、小さく首を傾げる。


「?......あ、はい、バッチリ......です」


キマユペンギン。


「ペンギン目 ペンギン科 マカロニペンギン属 キマユペンギン(奇形種アクアリス)」フィヨルドランドペンギンとも呼ばれる。ニュージーランドの南島などに生息し過去にニュージーランドの北島の南岸にも生息していたことが化石から分かった。頭部から上面の羽衣は黒い、下面の羽衣は白い。嘴基部から眼上部と後頭にかけて太く黄色い冠羽があり後頭で垂れ下がる。頬には白い筋模様がある。スネアーズペンギンと似ているがキマユペンギンは嘴根元の剥き出しの皮膚がない。人間に対して警戒心が強い。人間が連れてきたイヌや鼠やオコジョにより生息地が激減している。ペンギン類のアクアリスはペンギンの羽根(フリッパー)の形の刃をした薙刀を持っている。彼女は奇形のキマユペンギンのアクアリスであり、他のペンギン類のアクアリスにできない月光力で氷を足元に生成しそれを蹴ることで空を飛ぶ。アクアリスになる前はは奇形ではなかったが月光を浴びてアクアリスになるさいに突然変異いたらしい、彼女は12時間半潜ることができて深海の水圧にも耐えれることがわかっている。彼女は運動が得意であり特にロッククライミングが好きだが脚だけで壁を登る。彼女についたあだ名が「フライング・ペンギン」である。彼女はそれを恥ずかしがっているが飼育員達は可愛がっている。


飼育員は苦笑しながらメモ帳を閉じた。


「そっかそっか、なら安心だねぇ。昨日の夜も巡回してたんでしょ?」


「......少しだけ」


「少しだけって顔じゃないなぁ。ほら、目元ちょっと眠そう」


「ね、眠く......ありません......」


そう言いながら小さく欠伸を噛み殺す。


飼育員は思わず吹き出した。


「してるしてる」


「............」


キマユペンギンは恥ずかしそうに視線を逸らした。


水槽の向こうでは数羽のペンギンたちが水へ飛び込み、勢いよく泳いでいる。ばしゃり、と軽快な水音が響き、涼しい潮風の匂いが辺りへ広がった。


その光景を眺めながら、キマユペンギンはぽつりと呟く。


「......みんな、元気ですね」


「うん。今日も食欲すごかったよ。掃除中にホースつつかれちゃった」


「ふふ......」


小さな笑みだった。


だが、その表情を見た飼育員は少し嬉しそうに目を細める。


「最近、前より笑うようになったねぇ」


「......そう、ですか?」


「うん。最初に来た頃なんて、物陰に隠れて全然出てきてくれなかったし」


「............」


キマユペンギンは黙る。


彼女の長い冠羽が、わずかに揺れた。


「......人間、苦手でしたから」


「今は?」


「......まだ、少し......苦手です」


「はは、正直」


「でも......」


彼女はゆっくりと顔を上げた。


「ここの人たちは......嫌じゃ、ないです」


その言葉に、飼育員は優しく笑った。


「ありがと。そう言ってもらえると嬉しいなぁ」


「......」


「それにしても、キマユペンギンちゃんって本当に身体能力高いよねぇ。昨日バックヤードの壁登ってたでしょ」


「近道......でした」


「脚だけで垂直の壁登るのを近道って言う子、初めて見たよ」


「......?」


本気で不思議そうな顔をする。


どうやら本人にとっては普通らしい。


飼育員は困ったように笑いながら肩をすくめた。


「あとさぁ」


「......?」


「また言われてたよ。“フライング・ペンギン”って」


その瞬間。


ぴたり。


キマユペンギンの動きが止まる。


数秒後、耳まで真っ赤になった。


「そ、それは......!」


「お、反応早い」


「や、やめてください......!」


「ごめんごめん。でもあだ名としてはかっこいいと思うけどなぁ」


「かっこよく......ありません......!」


「えぇ?空飛べるペンギンって普通にすごいじゃん」


「......変です」


「変かなぁ」


「......変です」


即答だった。


飼育員は少し考え込む。


「でも、キマユペンギンちゃんしかできないんでしょ?」


「......はい」


「じゃあ特別だ」


「............」


「特別って、悪い意味だけじゃないよ」


静かな声だった。


キマユペンギンは少しだけ目を丸くする。


ペンギンたちの鳴き声が遠くで響く。


ゆっくり流れる水の音。


人工の空から差し込む柔らかな光。


その中で、彼女は小さく俯いた。


「......昔は、嫌でした」


「うん」


「みんなと違うって......ずっと思ってて......」


飼育員は何も急かさず、静かに聞いている。


「でも、ここに来てから......」


彼女は水槽の方を見る。


泳ぐペンギンたちは、今日も自由だった。


「みんな、“すごいね”って言ってくれるから......少しだけ......嫌じゃなくなりました」


飼育員は微笑む。


「そっか」


「......はい」


すると突然、館内の奥から小さな警報音が鳴った。


ぴこん、ぴこん、と軽い電子音。


飼育員が端末を見る。


「あー、海鳥エリアの上部点検通路に異常反応かぁ」


「......故障?」


「多分センサーかな。確認してくるよ」


そう言って歩き出そうとした瞬間。


ひゅるり。


冷気が舞った。


キマユペンギンの足元に月光色の薄い氷が生成される。


「......わたし、行きます」


「え?」


次の瞬間。


ぱきん、と氷を蹴る音。


彼女の身体がふわりと浮き上がった。


まるで空を滑るように。


長い冠羽を揺らしながら、キマユペンギンは一気に上部通路へ飛び上がる。


「おぉー......」


飼育員が感嘆の声を漏らした。


数秒後。


上部通路から声が響く。


「......コードが外れてました。直しました」


「はやっ!?」


ひらり。


再び氷を蹴り、彼女は静かに着地する。


床に降り立つ姿は、どこか鳥そのもののようだった。


飼育員は思わず拍手する。


「すごいなぁ、本当に」


「......普通、です」


「いやいや、普通じゃないって」


「......」


「でも、そこがキマユペンギンちゃんのいいところだよ」


彼女は少しだけ困ったように視線を逸らした。


けれどその口元には、ほんのわずかな笑みが浮かんでいた。


ペンギンアイランドには、今日も穏やかな時間が流れている。


オープン前の第三アクアリス水族館。


そこでは今日も、アクアリスたちが静かに暮らしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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