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ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
ニシオンデンザメの章

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第61話 深海を泳ぐ古きサメ


 ここは、アクアリス達が暮らしている。オープン前の第三アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。


 第三アクアリス水族館 深海エリア 巨大水槽内。


 巨大な水槽の中では、深海魚たちが静かに漂っていた。


 淡い青色の光。


 ゆっくりと流れる水流。


 外の喧騒とは切り離された、深海だけの静かな世界。


 その中央付近。


 岩場の上で、一人の少女が丸くなって眠っていた。


 暗色の長い髪が水中にふわりと漂っている。


「………………んぁ?……」


 少女はゆっくり目を開ける。


 ぼんやりした視線を動かした先には、黒褐色のおかっぱ髪の少女が立っていた。


「……また寝てる、……起きてニシオンデンザメ」


「ん、んんぅ……ん?あぁ、また寝てしまったのか、歳かのう、お?おぉ!メガマウスザメ!久しぶりじゃのう!!元気にしておったか?」


「……わかれて1日しか立ってないよ、」


「お?そうだったか?最近忘れやすくてなぁ……すまんすまん」


 ニシオンデンザメは豪快に笑った。


 メガマウスザメは呆れたようにため息を吐く。


「……まぁいいや、館長が呼んでる、行くよ」


「おう!わかったのじゃ」


「ニシオンデンザメ『ツノザメ目 オンデンザメ科 オンデンザメ属 ニシオンデンザメ』

北大西洋や北極海周辺の冷たい深海に生息する大型のサメ。成長速度が極めて遅く、成熟まで100年以上かかるとも言われている。推定寿命は400年以上ともされ、脊椎動物としては最長寿級。ゆったり泳ぐが魚類や海獣の死骸などを食べる。肉には毒性があり発酵処理をしないと食べられない。アクアリスとなったニシオンデンザメは非常にのんびりしていて物忘れが激しいが、長い年月を生きたような落ち着きを持つ。」


「メガマウスザメ『ネズミザメ目 メガマウスザメ科 メガマウスザメ属 メガマウスザメ』

ネズミザメ目 メガマウスザメ科に属する者はこの種のみである。

太平洋、インド洋などの熱帯、温帯の200m付近のやや深海などに生息していて、日本近海では目撃例、捕獲例が比較的多い、

古い形態のサメで現代のサメとはことなる点が多く、ネズミザメ目のサメのなかではミツクリザメとならんで原始的な形状を残しているらしい、

鰓耙と呼ばれるブラシ状の突起物で、海水と共に飲み込んだプランクトンだけをこしとるモノがあるのでプランクトンを食べるらしい。浅瀬にも現れることがある。」


 二人は巨大水槽の奥へ向かう。


 そこには月光強化ガラスがあった。


 淡く銀色に輝く特殊なガラス。


 ニシオンデンザメはそのまま歩き出す。


 すると身体が、水面を抜けるようにガラスをすり抜けた。


 メガマウスザメも続く。


 月のエネルギーを詰め込んだ強化ガラスです。すり抜けれるのはアクアリスだから。アクアリスは月のエネルギーから生まれたので、緊急時に出動できるよう、水槽のガラスは全てこれ。


 通路へ出ると、ニシオンデンザメは大きく伸びをした。


「ふぅ~、やっぱり陸は少し変な感じじゃのう」


「もう慣れて」


「いやぁ、ワシ海のほうが好きでなぁ」


「知ってる」


 二人は並んで歩き始めた。


 深海エリアの通路には、青い照明が静かに灯っている。


 ニシオンデンザメは辺りを見回しながら感心したように頷いた。


「相変わらず綺麗な場所じゃな」


「うん」


「オープンしたら客がいっぱい来るんじゃろ?」


「たぶん」


「ほほぉ~、賑やかになるのう」


 メガマウスザメは少し考えてから答えた。


「ニシオンデンザメは、人混み苦手そう」


「苦手じゃな!」


 即答だった。


「うるさいのは疲れる!」


「知ってる」


「じゃからワシ、深海エリア好きなんじゃ」


 ニシオンデンザメはにかっと笑う。


 その時。


 通路の向こうから、小走りの足音が聞こえてきた。


「わっ、すみません!」


 現れたのは、小さな資料を抱えたミナミメダカだった。


「あっ、メガマウスザメさん!」


「……ミナミメダカ」


「ミナミメダカ:『棘鰭上目 ダツ目 メダカ亜目 メダカ科 メダカ亜科 メダカ属 ミナミメダカ』日本在来種の小型淡水魚で緩やかな川や水田に生息し身近な存在でしたが環境悪化により絶滅危惧種に指定されています。アクアリスとなったミナミメダカは頑張り屋でお手伝いが大好き」


 ミナミメダカは隣の少女を見て目を丸くする。


「わぁ……大きい……!」


「ん?おぉ、新しい子かの?」


「ミナミメダカです!」


「ほほぉ!元気がいいのう!」


 ニシオンデンザメは豪快に笑った。


 ミナミメダカはぺこりと頭を下げる。


「えっと……どなたですか?」


「ワシはニシオンデンザメじゃ!」


「ニシオンデンザメさん!」


「うむ!」


 ミナミメダカは興味津々で見上げる。


「なんだか、おばあちゃんみたいですね!」


「よく言われる!」


 ニシオンデンザメは全く気にした様子もなく笑った。


 メガマウスザメは静かに補足する。


「たぶん深海エリアで一番マイペース」


「なるほど……」


「おぬしは?」


「私はお手伝い中です!」


「えらいのう!」


 ニシオンデンザメは満足そうに頷いた。


 すると、遠くから館内アナウンスが流れる。


『館長より連絡です。ニシオンデンザメちゃんとメガマウスザメちゃんは館長室まで来てください』


「あ、また呼ばれてますね」


「うむ!」


 ニシオンデンザメは腕を組む。


「何の用じゃろ」


「知らない」


「また仕事かのう」


「たぶん」


「むぅ~、寝てたかったんじゃが」


「さっきまで寝てた」


「そうじゃったか?」


「うん」


 ミナミメダカはくすっと笑った。


「仲良しなんですね」


「まぁ……長い付き合い」


「うむ!」


 ニシオンデンザメは元気よく頷く。


「メガマウスザメは静かでよい子じゃからの!」


「……ありがと」


 少しだけ照れたように目を逸らすメガマウスザメ。


 ミナミメダカはそんな二人を見て、なんだか温かい気持ちになった。


「それじゃ、ワシらは行くかの!」


「うん」


「ミナミメダカ!またの!」


「はい!」


 二人は通路を進み、深海エリアをあとにする。


 静かな青い光の中。


 深海を思わせる穏やかな空気が、今日も第三アクアリス水族館を包んでいた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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