第34話 雷光の守護者と小さなメダカ
「ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。」
第三アクアリス水族館、川魚エリア。
水槽の中では、淡水魚たちがゆったりと泳いでいる。岩陰に隠れる魚、群れを作って泳ぐ魚、水草の葉をついばむ小魚。川を切り取ったような空間は、静かで穏やかな音に満ちていた。
その水層の前を、黒髪の少女が静かに歩いていく。
長い黒髪の先端には、青白い電流のような光が時折走る。腰にはしなる鞭状の武器。鋭い金色の瞳は周囲を警戒するように細められていた。
デンキウナギ。
川魚エリアの巡回をしているアクアリスの一人だ。
「.........異常なし.........ふぅ、....ん?」
背後から近づいてくる足音に反応し、少女は振り返る。
そこには工具箱を抱えた飼育員が立っていた。
「あ、やぁ、デンキウナギちゃん」
「飼育員さん、」
「デンキウナギ:「デンキウナギ目 デンキウナギ亜目 ギュムノートゥス科 デンキウナギ属 デンキウナギ」
ウナギとついているがウナギの仲間ではなくナマズの仲間に近い、
空気呼吸をし視力は低いが弱い電気で敵を探りつよい電気でしびれさせ食べる。
最大800Vの電圧を出す
アマゾン川などに生息する。
デンキウナギは体のなかに2つの発電器官を持ち弱い電気のレーダーで相手を探し電気の乱れを感じ敵を発見する、乱れを感じる器官が顔にある無数の穴である。
アクアリスとなったデンキウナギは両腕の筋肉が発電器官になっていてそこから電気を生成し操る、腰についているムチは攻撃用で電気を通しやすい素材でできていてこれを敵に巻き付けて電気を流し仕留める。
飼育員やアクアリス達の疲れや肩こりを弱い電気で癒したりしている。」
「どうしたんですか?」
「あぁ、水層の点検だよ」
「点検.....なるほど、」
「デンキウナギちゃんは、いつものパトロール?」
「はい、いつ危険が起きるかわからないので」
飼育員は苦笑しながら肩をすくめた。
「危険は起きないほうがいいよ、それに、そんなに警戒しなくても、オープン前だし」
「いえ!警戒しなくては!」
思わず声が強くなる。
周囲の魚たちがびくりと散った。
デンキウナギは慌てて頭を下げる。
「......す、すみません」
「まぁ、デンキウナギちゃんがいいならいいけど、気を使いすぎないでね」
「.....はい!」
飼育員は笑いながら手を振り、点検用の通路へと消えていった。
静寂が戻る。
デンキウナギは再び歩き出した。
その瞬間だった。
「....ッ!?アビス!」
空気が揺れる。
微かな異質な気配。
普通の人間には感じ取れない、月光エネルギーの乱れ。
デンキウナギの瞳が鋭く細まる。
次の瞬間には床を蹴り、月光強化ガラスを飛び越えて水層へ飛び込んでいた。
冷たい水が全身を包み込む。
腰の鞭がゆらりと揺れ、青白い電流が走る。
水層管。
細長い通路を勢いよく泳ぎながら、デンキウナギは周囲へ微弱な電流を放つ。
電気感覚。
水流の乱れ、生物の位置、異物の存在。
すべてが頭の中へ流れ込んでくる。
(....こっち、....私はエラ呼吸できないから、早く終わらせないと、....)
デンキウナギは空気呼吸の生物だ。
長時間水中にはいられない。
急がなければならない。
やがて巨大な空間へ飛び出した。
アビス撃退用大水層。
訓練や迎撃のために用意された広い水域だ。
そして、その中心にいた。
黒い霧のような存在。
歪んだ人影。
「ァァァ.....」
「ぁぁぁぁ....」
(見つけた....)
デンキウナギは腰の鞭を構える。
(2体!?.....いや、問題ない!!!)
片方のアビスが気づいたように顔を向けた。
「ァァァ!?」
その瞬間。
シュバッ!!
鞭が伸び、アビスの身体へ巻き付く。
青白い雷光が走った。
(行くよ.....雷光送電!!!)
轟音。
水中に稲妻が炸裂する。
「ぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?........」
アビスは痙攣しながら崩壊し、黒い粒子となって消滅した。
(よし、あと1体、....どこ!?)
その時。
声が響く。
「後ろです!」
「!?」
デンキウナギは反射的に振り返る。
背後。
アビスが煙の触手を振り上げていた。
「ァァァ!!!!」
触手が襲いかかる。
デンキウナギは咄嗟に腕を突き出した。
(.....雷光...送電..)
バチィィィッ!!!
水中に閃光が弾ける。
「ぁぁぁぁ!?!?!?」
アビスもまた崩壊した。
静寂。
ゆらゆらと黒い粒子が消えていく。
そこでようやく、デンキウナギは声の主へ視線を向けた。
淡い茶色の髪。
小柄な少女。
制服姿のような服を着た、小さなアクアリスが水中に浮かんでいた。
「....すごい、...」
「....?」
デンキウナギは少女へ近づく。
少女はびくりと肩を震わせた。
デンキウナギはそっと人差し指を少女の額へ当てる。
微弱電流。
神経信号へ接続。
「え!?え!?」
(あ~、あ~、聞こえてる?)
少女は目を丸くした。
「あ、頭のなかに声が!?」
(よかった、聞こえてた、これは、私の電気をあなたの神経に接続してしゃべってる、テレパシー?みたいなこと、....まぁ、それはいい、私はデンキウナギ、あなたは?)
「み、ミナミメダカ、です!」
「ミナミメダカ:「棘鰭上目 ダツ目 メダカ亜目 メダカ科 メダカ亜科 メダカ属 ミナミメダカ」
日本在来種の小型淡水魚で緩やかな川や水田に生息し身近な存在でしたが環境悪化により絶滅危惧種に指定されています。アクアリスとなったミナミメダカは頑張り屋でお手伝いが大好き」
「すごいですね。」
(ううん、私はすごくないよ、私は守ってるだけだから、そろそろ出ようか、)
「あ、はい!」
二人は水層管を通り、川魚エリアへ戻っていく。
やがてデンキウナギは水面から顔を出し、大きく息を吸った。
「ふぅ、」
隣でミナミメダカがじっとこちらを見ている。
「.....」
「ん?どうしたの?」
「い、いえ!?....」
ミナミメダカは慌てて視線をそらす。
けれどその胸の中では、強い憧れが渦巻いていた。
アビスを倒した雷。
迷わず飛び込んだ勇気。
誰かを守ろうとする強さ。
(やっぱりすごいよ、私なんて、全然攻撃力ないし、)
小さく拳を握る。
すると、デンキウナギが首を傾げた。
「どうかした?」
「あの!」
勢いよく顔を上げる。
「ついて行ってもいいですか?」
「いいけど、ついてくるの?」
「はい!」
即答だった。
デンキウナギは少し驚いた顔をしたあと、小さく笑う。
「...わかった、おいで」
「はい!」
その返事は、川魚エリアに響く水音よりも、ずっと元気だった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




