表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP
イロワケイルカの章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/101

第32話 海の中のショートレーニング



「ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。」


「ショープール」


ドルフィントレーナーがプールサイドで手を振る。


「あ、いたいた、」


水面から顔を出したマイルカが元気よく返事をした。


「トレーナーさん!今からショーのトレーニングしようと思ってけど、どうしたの〜?」


「まぁ、そうだったんですね。そうそう、昼に設備の点検をするのでうるさくなるかもしれませんが、気をつけてくださいね」


「はーい」


「はい、問題ない.....です」


「わかった!」


「うん!」


「オッケーだよ〜!」


「うん〜」


六人の返事にドルフィントレーナーは安心したように頷いた。


「それと、今日は軽めにしてくださいね。イロワケイルカちゃんも無理はしないように」


白黒模様の少女が水面でぷかぷか浮かびながら笑う。


「だいじょーぶだよ〜」


だが、その少し眠たそうな声に、スナメリが心配そうな目を向けた。


「でも、昨日もちょっと咳してたよね〜?」


「ん〜、ちょっとだけ」


シャチが静かに近づく。


「無理……よくない……」


イロワケイルカは苦笑した。


「わかってるって〜」


ドルフィントレーナーもしゃがみ込み、水面へ手を伸ばす。


「今日は海中トレーニングだけにしましょう。ジャンプ系は禁止です」


「えぇ〜」


マイルカが少し残念そうに声を漏らす。


するとコガシラネズミイルカがくるりと回転した。


「でも海中トレーニング好き!」


シロイルカも嬉しそうに頷く。


「私も〜!」


ドルフィントレーナーが笑った。


「それじゃあ、フォーメーション練習をお願いします。音響設備は点検中なので、今日は手信号で」


「お〜!」


六人は一斉に水中へ潜った。


ショープールの中は青い光が揺れている。


大きな窓から差し込む光が、水の中に白い筋を作っていた。


イロワケイルカが先頭を泳ぐ。


その後ろを、マイルカ、コガシラネズミイルカ、シロイルカ、スナメリ、シャチが続く。


水中で身体をひるがえすたび、泡がふわりと舞い上がる。


プールサイドではドルフィントレーナーが手旗を使って指示を出していた。


右。


旋回。


停止。


六人はぴたりと動きを合わせていく。


マイルカが勢いよく回転しすぎて、スナメリと軽くぶつかった。


「あっ、ごめん!」


「だ、大丈夫〜」


スナメリが少しふらつく。


するとシャチがすっと間に入り、ゆっくり支えた。


「怪我……ない……?」


「うん、平気」


イロワケイルカが水中でくすくす笑う。


「なんか家族みたい〜」


シロイルカが嬉しそうにくるくる回った。


「わかる〜!」


コガシラネズミイルカが急加速する。


「競争しよ!」


「だめです〜!」


ドルフィントレーナーの声が水中スピーカー越しに響いた。


「今日は安全第一ですよ〜!」


「はーい」


少し不満そうに返事をしながらも、コガシラネズミイルカはちゃんと減速する。


その様子を見て、スナメリがふふっと笑った。


「なんだか学校みたい」


「学校?」


イロワケイルカが首を傾げる。


「うん。みんなで練習して、注意されて、でも楽しくて」


マイルカが勢いよく頷いた。


「たしかに!」


シャチは静かに水流を見つめる。


「悪く……ない……」


その時だった。


ゴゴゴゴゴ……!


遠くから低い振動音が響いてきた。


設備点検の音だ。


コガシラネズミイルカがびくっと跳ねる。


「わっ!?」


シロイルカも驚いて水面近くまで浮かび上がった。


「びっくりした〜!」


だがイロワケイルカは少し苦しそうに眉を寄せた。


「ぅ……」


スナメリがすぐ気づく。


「イロワケイルカちゃん?」


呼吸が少し乱れている。


ドルフィントレーナーもすぐに異変に気づいた。


「休憩!」


六人はすぐに浅い場所へ集まる。


イロワケイルカは水面に寄りかかるようにして息を整えていた。


「ごめん〜……ちょっとだけ苦しかった〜」


ドルフィントレーナーが優しく頭を撫でる。


「謝らなくて大丈夫ですよ。だから軽めにって言ったんです」


シャチがじっとイロワケイルカを見る。


「今日は……もう……終わり……?」


イロワケイルカは少し考えて、それから笑った。


「ううん、まだやる〜」


「えぇ〜?」


マイルカが驚く。


「無理しちゃだめだよ!」


「無理じゃないよ〜」


イロワケイルカは水面でくるりと一回転した。


「みんなと泳ぐの、好きだから」


その言葉に、みんなが少し静かになる。


コガシラネズミイルカがぽつりと言った。


「じゃあ、ゆっくりやろ」


シロイルカも頷く。


「うん!のんびり〜!」


スナメリが微笑む。


「それなら安心」


シャチも小さく頷いた。


「賛成……」


ドルフィントレーナーはその様子を見て、少しだけ笑った。


「では最後に、ゆっくり一周だけにしましょうか」


「お〜!」


六人は再び水の中へ潜っていく。


今度は競うような速さではない。


みんながイロワケイルカの速度に合わせ、ゆっくりと泳いでいた。


青い水の中を、六つの影が並んで進んでいく。


その姿はまるで、一つの群れのようだった。


今日もアクアリス水族館には、穏やかで優しい時間が流れている。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ