第31話 みんなでひとやすみ
「ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。」
「第三アクアリス水族館 通路 アクアリスしょっぷ★」
コガシラネズミイルカがぱたぱたと足を揺らしながら入口のほうを見る。
「そういえば、スナメリちゃんは?」
マイルカが魚類ボールをもぐもぐしながら顔を上げた。
「もうすぐくると思うよ〜……あ!ほら!」
静かな通路に、ぺた、ぺた、と柔らかな足音が響く。
銀白色の髪の少女がゆっくりと姿を現した。
「あぁ〜、もう食べてる〜」
イロワケイルカが嬉しそうに手を振る。
「スナメリちゃん!」
シャチが自分の横をぽんぽん叩いた。
「スナメリちゃんの……ぶんも……あるよ?」
シロイルカも笑顔で頷く。
「ここ、座りなよ、空いてるし」
スナメリは少し目を細め、ふわりと笑った。
「うん」
「スナメリ:「鯨偶蹄目 クジラ目 ハクジラ亜目 マイルカ上科 ネズミイルカ科 スナメリ属 スナメリ」
スナメリは日本を含むアジア沿岸部の温厚な海域で生息し野生個体は警戒心が強くあまりたくさんの群れを作りません。
魚類や甲殻類、頭足類などを食べ、名前の由来は海底の砂のなかに隠れた獲物を探す姿が砂をなめるように見えることから「砂なめり」→スナメリと言う説がある。
シロイルカと同一視されるがスナメリは小型のイルカでシロイルカのほうがデカい」
コガシラネズミイルカが両手でボールを差し出した。
「はい!」
「ありがと〜、あ、おいしい、」
スナメリは小さく頬を緩めながら魚類ボールを食べ始めた。
その様子を見て、イロワケイルカがごろんっと寝転がる。
「みんな検診どうだった?」
シロイルカがぶんぶん手を振る。
「私はね〜!体重増えてた!」
「おぉ〜!」
マイルカがぱちぱち拍手する。
シャチは静かに口を開いた。
「健康……そのもの……らしい……」
「シャチちゃん強そうだもんね〜」
コガシラネズミイルカが感心したように言うと、シャチは少し困ったように目を逸らした。
「でも……注射は……苦手……」
「あっ、わかる!」
イロワケイルカが勢いよく起き上がる。
「わかる〜!あの消毒のにおい苦手!」
スナメリもこくこく頷く。
「ちょっと緊張するよね〜」
マイルカが笑いながら言った。
「コガシラネズミイルカちゃんなんて逃げようとしてたし」
「だ、だって怖かったんだもん!」
「飼育員さん三人に囲まれてたよね〜」
シロイルカがくすくす笑う。
「うぅ〜……」
コガシラネズミイルカが顔を赤くしながらうつむく。
その姿を見て、みんなの間に笑い声が広がった。
ショップ店員が棚を整理しながら微笑む。
「みんな元気ですねぇ」
イロワケイルカが元気よく手を上げた。
「はい!」
その時、マイルカがふと顔を上げた。
「あ、そうだ!今度のショー、新しい動き入れるんでしょ?」
シロイルカが目を輝かせる。
「聞いた聞いた〜!」
シャチがこくりと頷いた。
「ジャンプの……タイミング……合わせる……やつ……」
コガシラネズミイルカが目をきらきらさせる。
「やりたい!」
スナメリは少し不安そうに言った。
「わ、私、ちゃんと合わせられるかなぁ」
イロワケイルカがにぱっと笑う。
「大丈夫だよ!みんなでやるんだから!」
「うんうん!」
マイルカも元気いっぱいに頷いた。
「失敗しても平気平気!」
「そうそう〜!」
シロイルカがスナメリの肩を軽く叩く。
「みんな最初は失敗するし!」
シャチも静かに口を開いた。
「焦らなくて……いい……」
スナメリは少し驚いたようにみんなを見回し、それからふわりと笑った。
「……うん」
魚類ボールを食べ終えたイロワケイルカが勢いよく立ち上がる。
「よーし!元気出てきた!」
コガシラネズミイルカもぴょこんと立ち上がった。
「遊ぶ!?」
「その前に片付け!」
ショップ店員に言われ、六人は「あっ」と声を揃える。
「はーい!」
食べ終わった容器を片付け、みんなで通路を歩いていく。
きらきら光る水槽の明かりが、六人の背中を照らしていた。
「ショープール」
大きな水槽の水面がゆらゆらと揺れている。
マイルカが勢いよく飛び込んだ。
「戻った〜!」
シロイルカも続いて飛び込む。
「お〜」
大きな水しぶきが上がり、コガシラネズミイルカが楽しそうに回転する。
シャチは水辺に座り込んだ。
「検診で……疲れ……たか..ら...寝たい....です..」
「わかる〜」
コガシラネズミイルカがぷかぷか浮かびながら頷く。
イロワケイルカが水面で背泳ぎしながら空を見上げた。
「だね、休憩したら、ショーの練習しよっか」
六人が顔を見合わせる。
「お〜」
その返事と同時に、水槽の中へ小さな笑い声が広がっていく。
水面はきらきらと光り、今日もアクアリス水族館には穏やかな時間が流れていた。
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次回もお楽しみに




