第30話「みんなで食べるボールの時間」
「ここは、アクアリス達が暮らしている。アクアリス水族館、今日も今日とて平和です。」
「第三アクアリス水族館 通路 アクアリスしょっぷ★」
「ボールくださーい」
「くださーい!」
通路の途中にある小さな売店。
貝殻やヒトデを模した飾り付けがされ、壁には「アクアリスしょっぷ★」と大きく書かれている。
店の前では白黒模様の少女と灰色の少女がぴょこぴょこと跳ねていた。
「あら、イロワケイルカちゃんにコガシラネズミイルカちゃん」
「アクアリスしょっぷ★「アクアリスのごはん「通称:餌ボール」少しアクアリスには呼びにくいのでアクアリス達はボールと呼んでいる。成分によって名前が変わる。」」
店員は慣れた手つきでケースを開き、丸いボールを取り出した。
「はい、どうぞ、」
「わーい!魚類ボール!」
「ボール〜!」
二人は受け取ると同時に目を輝かせた。
魚類ボールは薄青色で、ほんのり魚の香りがする。
栄養がぎゅっと詰まったアクアリス用の食事だ。
「ありがと〜」
そのまま通路のベンチへ向かい、二人並んで腰を下ろした。
「いただきまーす!」
ぱくっ。
「ん〜!」
「おいし〜!」
コガシラネズミイルカは嬉しそうに足をばたばたさせる。
イロワケイルカも頬をゆるめながら、ゆっくり味わっていた。
すると。
「あ~!ふたりで食べてる〜!」
元気いっぱいの声が響いた。
「ずるい....私も食べたい」
「私も!私も〜!」
三人の少女が通路の向こうから駆け寄ってくる。
「あ!マイルカちゃん!シャチちゃん!シロイルカちゃん!定期検診は終わったの?」
「うん!」
「マイルカ:「鯨偶蹄目 ハクジラ亜目 マイルカ科 マイルカ属 マイルカ」世界中の熱帯から温帯の海に生息し背ビレが尖っていて側面前部に黄色と灰色の斑紋があり背中は黒く腹側は白い、イカや魚の群れを襲い食べる。通常は50頭ほどの群れを作るが1000頭以上の群れになることもある。非常に好奇心旺盛で野生でも船の引き波に乗って平速したり海面をジャンプしたりする。アクアリスとなったマイルカは原種と同じく好奇心が強く飼育員にもよく遊んでとせがむことがあります。」」
「うん、終わった、よ。」
「シャチ:「鯨偶蹄目 ハクジラ亜目 マイルカ科 シャチ亜科 シャチ属 シャチ」シャチ属唯一の現生種で北極から南極に加えて熱帯海域までと、世界中の海洋環境に生息する。頂点捕食者で天敵が人間以外に存在しない。海洋系で食物連鎖の頂点であるが弱った個体はサメなどに攻撃される。マイルカ科最大である。アクアリスとなったシャチは物静かで誰とでも仲良くなりたいと思っているがうまく行動に出せない、」」
「うん!終わったよ〜」
「シロイルカ:「鯨偶蹄目 イッカク科 シロイルカ属 シロイルカ」別名「ベルーガ」で北極海周辺に生息、よく、スナメリと同一視される。アクアリスとなったシロイルカはマイルカのアクアリス同様遊ぶことが好きでマイルカといっしょに遊んでほしいと飼育員に頼むことがある」」
「おつかれさま〜」
「検診嫌だった〜……」
マイルカがぐでーっとベンチに倒れ込む。
「なんかね〜!いっぱい見られた!」
「検診だからね〜」
「口開けて〜って言われて、開けたら長かった!」
「ふふっ」
イロワケイルカが笑う。
その隣でシャチは静かに魚類ボールを見つめていた。
「……おいしそう」
「食べる?」
「……いいの?」
「もちろん!」
イロワケイルカは自分のボールを半分に割って差し出した。
シャチは少し驚いた顔をしたあと、小さく受け取る。
「……ありがとう」
ぱくり。
「……おいしい」
「でしょ〜?」
シロイルカも店のカウンターに身を乗り出した。
「ボールまだ〜?」
「はいはい、できてますよ。」
店員は苦笑しながら三人分のボールを並べる。
「わーい!」
マイルカは受け取った瞬間、その場で跳ねた。
「いただきまーす!」
「いただきます〜!」
「……いただきます」
五人で並んでベンチに座る。
通路にはアクアリス達の笑い声が響いていた。
「ねぇねぇ!」
マイルカが急に立ち上がった。
「あとで遊ばない!?」
「遊ぶ〜!」
シロイルカが即答する。
「なにして遊ぶの〜?」
「ん〜……鬼ごっこ!」
「ショープールで?」
「うん!」
コガシラネズミイルカが勢いよく手を上げた。
「やるー!」
「お姉ちゃんもやるよね!?」
「え〜?どうしよっかな〜」
「やろうよ〜!」
「うーん……」
イロワケイルカは少し考えたあと。
「やる〜」
「やったー!」
マイルカは嬉しそうに跳ね回る。
その勢いで。
ごつん。
「あいたっ!」
壁に頭をぶつけた。
「……またぶつかった」
シャチがぼそっと呟く。
「だ、大丈夫〜?」
「へーき!」
額を押さえながらマイルカは笑った。
「もう慣れてる!」
「慣れちゃだめだよ〜!?」
コガシラネズミイルカが慌てる。
シロイルカはけらけら笑っていた。
「マイルカちゃんらしいね〜」
「えへへ〜」
その時。
通路の向こうから飼育員がやって来た。
「あれ?みんな集まってる」
「ボール食べてる〜!」
「ちゃんと味わって食べるんだよ〜」
「はーい!」
元気な返事が重なる。
飼育員は微笑みながらその光景を見つめた。
開園前の水族館。
まだ人間のお客さんはいない。
けれどそこにはもう、賑やかな日常が生まれていた。
笑い声。
水の匂い。
誰かと食べるご飯。
その全部が、この場所を少しずつ「家」に変えていく。
「ねぇねぇ!早く食べて遊び行こう!」
「待ってよ〜!」
「最後まで食べないとだめ、だよ」
「はーい!」
今日もアクアリス達は元気だった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




