表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ、アクアリス水族館へ!  ―深淵を祓う秘密の楽園―  作者: れんP


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

第2話「初めてのバトル」


 二人のアクアリスが、剥き出しになった通路を進む。

 まだ整備途中の館内は、ところどころ床材がむき出しで、配線が壁を這うように伸びていた。


 静かだった空間に、足音だけが響いていく。


「ねぇ!アビスってなんなの?」


 ミズクラゲの少女が、不安と好奇心の混じった声で問いかける。


「アビスは海の塵から生まれる存在で、全ての生き物の敵、ここはそういうのを倒すための施設、....ぁ、こっちのが早い、」


 ハダカカメガイは歩みを止めず、短く答えた。


 曲がり角を抜けた先に、それはあった。


 浅い水の張られたプールのような空間。

 しかしそれは展示用ではない。どこか機械的で、中央に向かって微かに光が流れ込んでいる。


「え!?ここ使うの?、でも、浅いよ」


 ミズクラゲは首をかしげる。


 ハダカカメガイは何も言わず、壁の一部を指さした。


 そこには透明な管が、建物の奥へと続いていた。


「あそこから移動できる。行くよ!」


「え、あ、うん!」


 二人は迷いなくその水へ飛び込む。


 瞬間、世界の感覚が変わった。

 水の中にいるのに、呼吸が止まらない。むしろ、呼吸そのものが自然に続いていく。


「すごい、息ができる水中なのに、」


 ミズクラゲが驚いたように呟く。


「あなた、ほんとにアクアリス?アクアリスは水生生物が人型になったもの、水中で息ができる生物ならできて当然よ、」


「あ、そうか、」


 納得したように頷くミズクラゲ。


 水流に身を任せながら、二人は管の中を進んでいく。

 光が流れるように、視界が次々と切り替わっていく。


「他に聞きたいことはない?あなた、一応新人でしょう」


「え~っと、アクアリスってどうやって生まれるの?」


 ミズクラゲの問いに、ハダカカメガイは少しだけ間を置いて答えた。


「月光、月の光を浴びた水生生物はアクアリスになる。原理はわかんないけど、月にはまりょく?があってそれでアクアリスになるって、飼育員さんが言ってた」


「そうなんだ、ねぇ、水族館の外って、見たことない、私ここで生まれたから、知ってる?」


「そうね、この星は地球って言って、外にはたくさんの人間が暮らす街?っていうのがあるって聞いた、」


「そうなんだ、行ってみたいな〜」


「そうね、」


 その言葉の途中で、ハダカカメガイの表情が変わった。


「っ!....近い」


「!」


 空気が一瞬、重くなる。


 やがて二人は、大きな空間へと出た。


 そこは巨大な水槽だった。

 しかしその中は、本来の“水族館”の光景とはまるで違っていた。


 黒い煙のような、汚れのようなものが漂っている。

 それは水ではなく、まるで空間そのものを侵食しているかのようだった。


「........」


 それは、静かだった。

 だが確かに“そこにいる”と分かる存在。


「あれは、」


「アビス!殺るよ!」


「え!?どうやって!」


 ミズクラゲは一歩後ずさる。


 ハダカカメガイは落ち着いたまま言った。


「......新人だったね、教えるよ、私達は生物特性を月光を媒体として、増幅させ攻撃や防御、回復、拘束などに使うことができる、私の場合、拘束型、あなたも、できるはずよ、」


「月光.......あのきれいな光、.....」


 その瞬間、アビスが動いた。


「ッッッ!!!!!!」


「来る!」


「え!?」


「バッカルコーン!」


 何もない空間に、六つの陣が浮かび上がる。

 そこから無数の触手が伸び、アビスへと絡みついた。


 拘束。


 ハダカカメガイの能力が形となって現れる。


「あなたも!」


「どどど、どうすれば....」


「感じるの、月の光をそして感じたら手に集中させるように念じて、あなたもアクアリス、そこまで難しくないよ」


「.......うん」


 ミズクラゲは目を閉じる。


 静かに、深く。


(……月の光……)


 それは遠い空の記憶のように、確かにそこにあった。


(あたたかい……手に集中……!)


 その瞬間。


「!!...............ッ!!ニードル・オーレリア!!!」


 光が形を変える。


 四つ葉のクローバーのような陣が浮かび、そこから無数の毒針が放たれた。


 アビスに突き刺さる。


「ッッ!?!?!?.......ァァァ!!?」


 黒い存在が揺らぐ。

 まるで形を保てなくなっていくように。


「さすが、どうやら毒状態になってるみたい、.....ッ、.....とどめ!お願い!」


「うん!ニードル・オーレリア!!!」


 再び放たれる光。


 その瞬間、アビスは月光に触れたかのように揺らぎ、崩れ、そして消えた。


 そこにはもう、何も残っていなかった。


「はぁ......はぁ、....」


 ミズクラゲはその場に立ち尽くす。


「あなた、けっこうやる、いい攻撃ね」


「うん、ありがとう」


 そのときだった。


 水中全体に、柔らかい声が響く。


「二人とも、よくやったわね、ほかのアクアリスが向かってたけど、到着前に終わらせるなんて」


「この声は、」


「館長よ、」


「館長?」


「この水族館の主、偉い人」


「へぇ〜」


 館長の声は、穏やかだった。


「君が、ミズクラゲだね、生まれたばかりの新人らしいけど、よろしくね」


「はい!」


 声はそれだけを残し、静かに消えた。


「館長はいい人、きっと仲良くなれる」


「うん!」


 その頃、館長室。


「....ふぅ、」


「館長、どうされました、」


「いえ、あの子達の戦った個体が弱かったから良かったわ、それだけ、」


「そうですね、」


「本当は、アクアリス達には幸せ生きてほしいけど、アビスがいるからね、私達人間がどうにかできたらいいけど、」


「そうですね、」


 静かな会話の中、館内のどこかで再び装置が微かに脈動した。


 まだ、この水族館は始まったばかりだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ